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ミステリの祭典

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千年のフーダニット

作家 麻根重次
出版日2025年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 4点 虫暮部
(2025/06/28 21:14登録)
 SFとして掘り下げ不足。
 千年のコールドスリープに関するアレコレが色々と雑に感じた。SFサイドから(も)読む私のような読者にしてみれば、解像度はせいぜい星新一なみと言ったところ。
 寓話的ショート・ショートならそれで良いけれど、フーのみならず様々なホワイを内包するミステリの背景がそれでは、人物像までぼやけちゃって切実さが伝わって来ない。そこまでして再度スリープする必要があったのだろうか? 作中の説明では不満だな~。
 最初は良い話っぽかった “断章” がどんどん闇堕ちする様には目を瞠った。

No.1 7点 メルカトル
(2025/03/31 22:51登録)
若くして妻を喪い失意に沈むクランは、人類初の冷凍睡眠(コールドスリープ)実験に参加する。さまざまな事情を抱えた男女7名は「テグミネ」という殻状の装置で永きにわたる眠りについた。

――そして、1000年後。目覚めたクランたちはテグミネのなかでミイラと化した仲間の他殺体を発見する。犯人は誰なのか。施設内を調査する彼らが発見したのは、さらなる“顔のない死体”で――
Amazon内容紹介より。

外枠はSF、格となる部分は本格ミステリと言った感じです。特殊設定ミステリの亜種とも言えるでしょう。難クセを付ける訳ではありませんが、そんな描写要りますか?と思えるシーンも散見されます。その割には冒頭の強烈な謎に対するアプローチがあまり描かれていないのが残念です。

最後に提示される真相に関しては文句なしです。ここだけ切り取れば完全な本格ミステリでなるほどと納得が行きます。かなり強引なところもありますが。
文体は硬質であまり面白味がなく、言ってしまえば冗長ではあります。ただアイディアは非常に優れたものがあり、デビュー作も読みたいと思わせるだけのものは持っていますね。もう少し垢抜ければ人気作家になれる素材でしょう。

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