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ミステリの祭典

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千年のフーダニット

作家 麻根重次
出版日2025年01月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 7点 みりん
(2025/07/16 21:22登録)
物語の2/3ほどは秘境冒険小説+プチミステリみたいな感じでワクワクしながら楽しく読んでいたが、研究所が千年間コールドスリープさせる理由が脆弱(なぜ千年?)だったり、千年後の世界が想像を超えるものでなかったりと節々に安っぽさはあった。ホワイに関してもたっぷりページを割いて、背景を掘り下げ、犯人の執念と狂気に説得力を持たせていたら…と惜しく思う。しかしながら、真相自体は紛れもなく一級品で、非常に優れた密室ミステリ。もし某1990年代の作品を読んでいなかったら凄まじい衝撃を受けて、さらに高い点数をつけていたと思う。この設定でクローンを使わなかったことも素晴らしい。
疫病神ながら予想しておくと、今年の本格ミステリベスト10とかにランクインするんじゃないですかね(^^)

あと、装丁もうちょっとがんばれよ

No.2 4点 虫暮部
(2025/06/28 21:14登録)
 SFとして掘り下げ不足。
 千年のコールドスリープに関するアレコレが色々と雑に感じた。SFサイドから(も)読む私のような読者にしてみれば、解像度はせいぜい星新一なみと言ったところ。
 寓話的ショート・ショートならそれで良いけれど、フーのみならず様々なホワイを内包するミステリの背景がそれでは、人物像までぼやけちゃって切実さが伝わって来ない。そこまでして再度スリープする必要があったのだろうか? 作中の説明では不満だな~。
 最初は良い話っぽかった “断章” がどんどん闇堕ちする様には目を瞠った。

No.1 7点 メルカトル
(2025/03/31 22:51登録)
若くして妻を喪い失意に沈むクランは、人類初の冷凍睡眠(コールドスリープ)実験に参加する。さまざまな事情を抱えた男女7名は「テグミネ」という殻状の装置で永きにわたる眠りについた。

――そして、1000年後。目覚めたクランたちはテグミネのなかでミイラと化した仲間の他殺体を発見する。犯人は誰なのか。施設内を調査する彼らが発見したのは、さらなる“顔のない死体”で――
Amazon内容紹介より。

外枠はSF、格となる部分は本格ミステリと言った感じです。特殊設定ミステリの亜種とも言えるでしょう。難クセを付ける訳ではありませんが、そんな描写要りますか?と思えるシーンも散見されます。その割には冒頭の強烈な謎に対するアプローチがあまり描かれていないのが残念です。

最後に提示される真相に関しては文句なしです。ここだけ切り取れば完全な本格ミステリでなるほどと納得が行きます。かなり強引なところもありますが。
文体は硬質であまり面白味がなく、言ってしまえば冗長ではあります。ただアイディアは非常に優れたものがあり、デビュー作も読みたいと思わせるだけのものは持っていますね。もう少し垢抜ければ人気作家になれる素材でしょう。

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