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ミステリの祭典

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三幕の殺人
エルキュール・ポアロ/別題『三幕の悲劇』

作家 アガサ・クリスティー
出版日1951年01月
平均点6.30点
書評数23人

No.23 7点 文生
(2024/04/03 04:24登録)
善良な牧師はなぜ殺されたのか?というホワイダニットに対する解答は、現代の読者には大きな驚きを与えることはできないでしょう。しかし、当時としては読者の意表を突くものであり、また、いろいろな角度から動機を検討していくくだりもなかなかにスリリングです。三幕仕立てのプロットもよく出来ており、古き良き時代の探偵小説として読み応えがあります。

No.22 7点 メルカトル
(2023/10/12 22:25登録)
引退した俳優が主催するパーティで、老牧師が不可解な死を遂げた。数カ月後、あるパーティの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男らが事件に挑み、名探偵ポアロが彼らを真相へと導く。ポアロが心憎いまでの「助演ぶり」をみせる、三幕仕立ての推理劇場。新訳で登場。
『BOOK』データベースより。

はい、これですね。「動機の問題」にて、私の愚問に回答いただいた、他ならぬ空さんの一推しとあっては読まない訳にいかないですよね。あ、大丈夫ですよ、みなさんに紹介していただいた作品も既読を除いて、いずれ読むつもり(入手困難などで例外あり)ですので安心して下さい。

流石クリスティーと言いますか、ポアロをさし置いて探偵気取りの三人が容疑者を尋問して、犯人を絞り込むというちょっと地味な展開ではありますが、すんなり読む事が出来ます。全く退屈さを感じさせません。
はっきり言って犯人については比較的簡単に予測が付くかも知れません。しかし、特に第一の殺人に関しての動機は、これは見当が付かないと思いますね。言わば「動機なき殺人」に対する動機ですからね、況してや事件かどうかも分からない状況ですし、これは難問でしょう。この年代の作品と考えると、なかなかこう云った発想は出来ないんじゃないですかね。だからクリスティーの考えるアイディアは先駆者的なものが多いんだと思います。
それにしてもポアロは美味しい所を掻っ攫いますね。それまで鳴りを潜めていたのに、最後の最後に出てきたと思ったら、惚れ惚れする推理、これはズルいですよ。

No.21 5点 虫暮部
(2020/06/26 12:01登録)
 ハヤカワ版です。
 動機の有無について、心の奥の奥まで他者が証明することはどだい無理なのである。“犯人にはパーティ出席者の大多数に対する秘かな殺意があって、誰でもいいから殺したかった”という推測を否定することは出来ない。それ故に、最初の殺人の動機は是が非でも本人の口から語って欲しかった。
 ところで第一幕の3。ポアロ曰く“ウィスキーはめったに飲みませんので。砂糖水を少々いただければ”――これはジョーク? 砂糖水を飲む習慣が本当にある?

No.20 5点 レッドキング
(2019/10/21 17:25登録)
アガサ・クリスティーには映画よりも「舞台」が似合う。別にクリスティー原作の芝居を見たいってんではなく、二十世紀前半、芝居が中上流階級の娯楽社交場だった時代の登場人物達がよく似合う。「~公爵」「~卿」「~夫人」「~令嬢」「~大尉」「~医学博士」・・といった面々が、気どり取り澄ましふんぞり返った容疑者として、ずらりがん首揃えるエヅラがよい。「エッジウエア卿の死」同様に犯人が演じる「無実芝居」と「アリバイトリック」。

※ところで、若い清純な女と三十歳も年長の恋多き男の「純愛」なんて、どうしたって眉に唾付けたくなるわな、われらおじさん世代としても。んな男、インチキおやじに決まってるじゃん。あのバランスの悪いひねくれた若者の方が遥かにましだぞ、同伴者にするならと、おじさん心から思う。そこんところはアガサ・クリスティーしっかりと押さえてくれていて拍手拍手。

No.19 6点 ボナンザ
(2019/07/19 14:18登録)
代表作群にはやや劣るが、意外性と奇抜なストーリーが映える佳作。

No.18 7点 nukkam
(2016/09/18 07:23登録)
(ネタバレなしです) 1935年発表のポアロシリーズ第9作の本格派推理小説で「謎のクイン氏」(1930年)のワトソン役サタスウエイトが登場するのが珍しいです。充実期の傑作の一つで横溝正史の某作品に影響を与えたようなトリックが使われています。ポアロの活動を控え目にしてアマチュア探偵団の活躍を描いたプロットも読み応えあります。動機もよく考え抜かれています。ところが驚いたことにクリスティ再読さんやHORNETさんのご講評で説明されているように創元推理文庫版とハヤカワ文庫版ではこの動機が微妙に異なっていました。個人的には創元推理文庫版の方が推理による解明がしっかりしているように思えます。あとタイトルですがそれほど芝居風でないとはいえ「三幕」なのですから米国版の「殺人」よりは英国版の「悲劇」の方がふさわしいように思います。

No.17 6点 青い車
(2016/02/07 21:21登録)
毒殺の方法はあまりにあっけなく、トリックとは呼べないほど単純なものです。また、動機の設定も新鮮といえば新鮮ではありますが、おそらく許せない人もいるでしょう。しかし、別のあるアガサ・クリスティーの名作は本作をベースにしたことが明らかであり、そちらと読み比べてみるのも一興だと思います。

No.16 5点 斎藤警部
(2015/12/07 13:48登録)
ジュブナイル版以外で初めて読んだ「大人の推理小説」は、クリスティファンの母親から譲り受けた古~い創元推理文庫(白帯)の本作でした。何しろ小学生が無理して読んだものでなかなかに理解しきれず、高校か大学の頃再読して内容はひとまず理解、しかし、詰まらなくは無くも、特筆したくなる面白味は感じませんでしたなあ。とは言えクリスティらしい企画性豊かな長篇ですよね、なかなかにあざといけど(HORNETさん仰る通り「ABC」と通ずる着想が匂ってます)。俯瞰を気取るのもいいけど俯瞰方向を間違えると何も見えませんよ、的なね。やっぱり明るい雰囲気が良いですね。点数は辛目だけど、自分にとって節目というか思い出の一冊です。

ネタバレを言えば、この犯人って無差別テロリストみたいなもんじゃないですか。部分的にではあるけれど。ひどいなあ。

No.15 7点 HORNET
(2015/11/25 22:03登録)
<ネタバレ要素有>
読んでから知ったのだが、この作品では創元版とハヤカワ版でなんと犯人の動機が全く違うそうな。私が読んだのはハヤカワ版で、ポアロが最後まで悩んでいたのはその動機の部分(悩んでいたのは第一の殺人だったようなので…確か。そこは両者同じらしいが)なので、結構評価に影響するのでは、と勝手に憶測した。提案だが、今後本作品の書評は創元版か、ハヤカワ版か明記してはどうか?
 真相は予想外で、読んだ甲斐があると思える面白さだった。読者の情をさんざん引き寄せておいて、あっさり(?)切り捨てるどんでん返しに感じる人もいるかもしれない。だからこその「やられた」感はある。さすがで、上手いと素直に思う。

 サタースウェイト氏は本作品の中心的人物だが、非常に良い意味で余分な温度がなくてよい。冷たい人間という意味では決してなく、客観的に事件を俯瞰する役割として非常に機能している。多くの読者が共感的感情を抱いて読む感じがする。ある意味読者視点の代替機能を担っていると思う。
 発想・着想としては「ABC」に類似したものを感じないこともないが、全て読後の概観である。高いリーダビリティに牽引され、一気読みしてしまったことは間違いない。

No.14 8点 ロマン
(2015/10/20 16:23登録)
あまりにも大胆。ポアロの一言も、実に当を得た発言。故にアガサ・クリスティーが構成した三幕の演劇としてこの小説を読めば、あまりにも犯人は明白である。それでいて、ポアロの立場に立った時にはミステリの難易度が跳ね上がる。怪しい人物が乱立し、完全なる証明が難しい。けれども正しい論理でなければ頂点まで組み上がらない。そのバランスは流石クリスティ。

No.13 8点 あびびび
(2015/08/23 13:52登録)
すべては第一の殺人からの謎になる。これは賛否両論だろうが、デビットスーシェのポアロシリーズを見ると、犯人役の俳優が好演したこともあり、必然的になった。

しかし、アガサ・クリスティはいろいろなアイデアを使う。大胆かつ繊細で、本当に楽しめる作家と再認識した。

No.12 8点 クリスティ再読
(2015/07/12 19:38登録)
この作品は創元は西脇順三郎訳でずっと評者は親しんできたけど、今回はハヤカワの旧訳:田村隆一訳で読むことにした。大詩人対決である。「三幕の悲劇」(創元:米版)と「三幕の殺人」(ハヤカワ:英版)で若干動機が違う...というお楽しみ付きである。
田村訳は実は初翻訳だったようで、はっきり下手である。西脇訳はミステリ翻訳の少ない人だが、英語で書いた詩をイギリスでいきなり出版して褒められた..という凄い経歴もあるわけで、田村訳と比較してホント上手。テニスンの引用の訳とかちょっと貫禄が違う。

で、ミステリとしての内容だが、例の双子的作品と比較すると、勢いで書いたようなあっちよりも、評者はきめ細かいこっちの方がずっと好きだ。何がイイって、煎じ詰めるとこっちが「全部毒殺」なことである。毒殺ってわざわざ物理的に殺しにいくよりもずっとリスクが低いわけだし、こういうネタは毒殺ならではのものじゃないかな。「三幕」の場合は特に1幕の謎が毒殺という手段と密接に結びついているのがいい。2幕は弱点と取られるかもしれない部分を、洒落で逃げれているあたり豪腕かもしれないが上手なもんだ。で、3幕は本当に毒殺ならでのはの設定で感服する(それでも手紙はないほうがいいな)。どっちか言うとハヤカワの方が動機にムリがないけど、こっちはいくつか伏線を潰しているから、やはり動機のマズさには目をつぶって創元の方がオススメである。

というわけで評者は何で双子作品が代表作扱いされて、こっちがアンフェアとかいわれるのかわかんないや。こっちの方がずっと洗練されて洒落ている。まあ、理由はというとみんなわかりやすいベタが好き、ということに尽きるんだがね。

サタスウェイト氏再登場について。ラストでポアロがサタスウェイト氏が「演劇効果に目を奪われすぎだ...」というような批評をするけど、実は評者はポアロとサタスウェイト氏って同種のキャラのように感じる。特に晩年ポアロの方がどんどんサタスウェイト氏っぽくなっていくし、クリスティの大きな弱点として「メタ推理が通用しすぎる」ことがあるわけだが、これって要するにまさにその「演劇効果重視」の結果だよ。自己宣伝についての言い訳をしているのはそこらのアヤかもよ。まあ今回はこれで「引っ込みを選ぶことに」します。名セリフだと思うけど英版にしかないのが残念。

No.11 5点 蟷螂の斧
(2014/06/25 19:02登録)
最初の殺人の動機は特に問題なし。全体的にはプロットもよし、恋愛の駆け引きもあり面白い作品であると思います。大幅減点対象は、第2の殺人での執事の絡み方でした。

No.10 7点 ミステリ初心者
(2012/07/27 09:04登録)
 ずっと前に読みました。
 自分は、推理小説においての犯人の殺人動機はどうでもいい派(?)なのですが、この作品の第一の殺人の動機はわりと好きです。頭の体操のような面白さがありました。
犯人の特徴が出ていると思います。

 犯人は、ちょっと分かりやすい? 予想がつきやすいです。

 最後のポアロの皮肉が面白いです。

No.9 5点 好兵衛
(2011/04/23 16:41登録)
賛否両論わかれる作品だと思います
(アクロイドほどではないが)

三幕の殺人の1番の見所&問題どころが
いいという人と、こりゃ駄目だ。
という人に分かれると思います。

自分はミステリを読むにつけて、
「その部分」をあまり気にしないので面白いと思いました。

だが、とっても時間をかけて考えてしまったので
じっくりミステリを考える人には肩透かしをくらった感も
いなめないかな。とも思います。
「その部分」は気にしないけれど、
ミステリならではの「論理」というものは自分は気にします。
そこのさじ加減がクリスティーは上手いのだけれども。

それについてのポアロの感想がまた笑ってしまった。

No.8 7点 E-BANKER
(2011/04/15 23:09登録)
ポワロ物としては9番目の作品。
かなり以前、確か新潮文庫版で読んで以来の再読。
~引退した俳優が主催するパーティーで、老牧師が不可解な死を遂げた。数か月後、あるパーティーの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男などが事件に挑み、名探偵ポワロが彼らを真相へと導く~

個人的には、非常に高いレベルで、出来のいい作品だと思います。
もちろん、「動機」の問題はいろいろな方々が書評しているとおりで、まぁ「問題あり」ではありますが・・・
「こんな理由で殺人を犯すか?」というのは正常な感覚ならば当然なのですが、そこは推理「小説」なのですから・・・
プロットとしてはよく練られていると思いますし、いかにもクリスティらしさに溢れた作品だと感じますね。
本物の「劇」の如く、ラストで鮮やかにある人物の姿が反転させられる、ましてやその人物とは「○○」なのですから、舞台効果は満点でしょう。
というわけで、作者の格調高い作品の1つとして、十分にお薦めできる作品です。
(相変わらずポワロは最後までもったいぶってくれますが、今回は本当に第1の殺人の「動機」が分からなかったんですね・・・)

No.7 6点 kanamori
(2011/01/10 15:42登録)
これは、動機面から推理しても絶対真相には至らないでしょう。いかにもクリスティらしい意地の悪い仕掛けで、同じ年に似たコンセプトの名作を書いていますから、作者のお気に入りのアイデアだったのかもしれません。
ネタバレになりますが、
ポアロの最後のセリフ、「私が飲んでいたかもしれないんです」は、結構インパクトがあり印象に残ります。

No.6 5点 ミステリー三昧
(2010/12/05 22:19登録)
<ハヤカワ文庫>ポアロシリーズの9作目(長編)です。
単なるネタぼん。斬新なアイデアですけど頭の良い方法とは思えない。次も成功する保証はどこにもないわけだし。そんなわけで私は嫌いです。ホワイダニットの好き嫌いで評価がハッキリ分かれる作品だと思います。別に〇〇のための〇〇が駄目ということではなく、実行するからにはそれなりの理由と説得力が必要ということです。まぁ、某有名作に繋がる作品だったことを最近知ったので、読んで後悔はしていない。ラストの一文を含め、アガサ・クリスティにどっぷりハマった読者は外せない一冊になることでしょう。

No.5 7点 seiryuu
(2010/11/28 16:35登録)
第一の殺人や動機はそりゃないよと思ったけど、テーマと合っているからアンフェアとは思わなかった。
いつものポワロシリーズとちょっと変わった趣向で面白かった。

No.4 3点 mini
(2010/03/02 10:38登録)
発売中の早川ミステリマガジン4月号は特大号で、特集は”秘密のアガサ・クリスティー”
なぜ特大号扱いなのかというと、最近クリスティー短編2編の幻の未発表原稿が発見されたというニュースはファンなら御存知のことだろう
早川書房は名前の通りいち早く翻訳権利を取得し雑誌掲載となったわけである
こういうのが世に出ると真っ先に読みたがる読者も居るのだろうが、その作家の代表的な作品は全部読みましたって読者ならまだしも、私のように一部しか読んでない読者には意味が無い
他社だが近刊情報だとクロフツ唯一の未訳長編も出るらしいが、”幻の”なんて宣伝文句に弱いのはどの世界も同じなのかな
私はそういう売らんかな作戦には便乗したくないぞ

そこで同じ便乗するなら負の便乗で、一般的に定評がありながら、個人的に好きじゃない作品を取り上げよう
「三幕の殺人」はクリスティの有名作の中で特に嫌いな作品の1つなのだが、理由は2つある
1つ目はもちろん有名な”動機”の是非
この作品の動機は昔から賛否両論あることで有名だが、私ははっきり言って否定派だ
こんな理由で人を殺しちゃ駄目でしょ
動機の謎なら「鏡は横にひび割れて」の方がずっと納得できる
2つ目の理由がサタースウェイト氏の人物造形が嫌いな事
サタースウェイト氏は短編集「謎のクィン氏」でも主役級の人物で、「謎のクィン氏」は質の高さは私も分かっているが、この人物が嫌いなのであまり好きな短編集ではないのだ
作者は人生の傍観者という役割の人物をよく登場させるが、どうも私には相性が悪いようで
ただ今回サタースウェイト氏を使って、最後は謎を解くにしても途中経過でポアロを探偵役の中心に据えなかったのは、ポアロに早い段階から探偵をさせては謎の仕掛けから言って都合が悪いという事情もあったのかも知れんな

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