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ミステリの祭典

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ひらいたトランプ
ポアロ、バトル警視、レイス大佐

作家 アガサ・クリスティー
出版日1976年04月
平均点6.13点
書評数15人

No.15 6点 文生
(2023/12/03 21:02登録)
ポアロの推理にどの程度の妥当性があるのかは正直分かりませんが、ブリッジの手や得点表から容疑者たちの心行動を読み取っていく趣向はスリリングでした。物語自体は地味ながらもぐいぐいと引き込まれていきました。ぶっちゃけ、それ以前に読んだ『カナリア殺人事件』のポーカー勝負に伴う推理が単純すぎて不満だったことが本作の印象を押し上げている面もあります。ただ、冷静に考えると本格ミステリとしてそこまで高い評価は出来ないので、点数はこのくらいで。

No.14 6点 蟷螂の斧
(2023/12/02 08:15登録)
ブリッジのルールを知っていれば、もっと楽しめたかな。なにしろ、ブリッジの点数表から心理を読み取るんだから。もう一つの要素は、容疑者の過去の犯罪と、今回の殺人の共通点を探すというもの。物語の構成は面白かった。ただ、ラストの寸劇はいただけない。発見された証拠を突きつけてからの告白の方がスマートであったと思う。

No.13 4点 レッドキング
(2020/11/23 21:02登録)
ブリッジゲームの傍らで刺殺された奇人。容疑者はゲームを行っていた男女4人。大胆な男、慎重な男、冷静かつ果断な女、臆病な女。殺害状況から「~のタイプの人間の犯行」と判断するポアロ。うーん、その判断ちょっとなあ・・・。せっかく部屋の見取り図あんだから、隣室の人物の動きとも絡めたの期待したが、隣室の4人は容疑者になりえない設定の人物だし。
登場する3人の女が良い。「火車」「白夜行」ヒロインの原型の様な若い美女、ブリッジ狂いの端整な老婦人、そして、どう見ても作者の自己パロディとしか思えない女流作家。あのミステリ作家・・オリヴァて言ったか・・が実に面白い。あれ主役にしたら、ヘンリー・メリヴェール卿並みに面白いキャラだと思うが。

No.12 7点 虫暮部
(2020/09/30 11:30登録)
 大胆な犯行だな~と思ったが、4人中1人だけ動き回れる状況がブリッジのルール上必然的に生ずるわけね。そこは予習してから読みたかった。
 終盤の展開――Lが自白、MがLを訪問(この時どのようなやりとりがあったのか全く藪の中)、翌日新たな死が二つ。非常にタイミング良く連続しており、しかしそれらは連鎖反応と言うわけではなく概ね偶然。それでいいのか? なんとも妙な気分だ。
 “人を殺して巧みに逃げおおせた者達を集める”という設定は魅力的。3年後に『そして誰もいなくなった』で大々的に再利用しているのは、作者もそう思ったからだろうか。

No.11 6点 斎藤警部
(2019/02/20 23:12登録)
おお序文! 笑  乱歩さんの「心理試験」と非なるが似てるとこもある心理の探偵。動機の二重天蓋って構造か。。。。 筆に何の工夫も無ければ、第二の殺人の犯人、「君、そこで××したでしょ?」って秒速で勘付かれるところ、流石のアガサらしい有機的目くらましでなし崩しのクライマックスへ。 でも、単純幾何学模様の如く(ブリッジという舞台装置の力も借り)かっちりはまった物語構造がややかっちりし過ぎてパズル性プチ過多か。それでいて特に終盤あらわにされる人情/非人情模様とのくすぐったいアンバランスが惜しまれる。アガサの得意な企画勝負が小さくまとまり過ぎて圧倒まで至らなかったかな。いちばん意外だったのは、いつしかヒロインが換わってしまったこと、かも? ローダ役は水原希子で決まり!

No.10 7点 人並由真
(2017/08/03 09:21登録)
(ネタバレなし)
当時絶版で品切れだったポケミス版を足繁く探し回った古書店で入手したのが大昔の青春時代。
それでこの作品を愉しむなら、いつかきちんとブリッジのルールやコツを修得してからと思って手をつけずにいたものの、いつしか長い時が経ち、オヤジになったかつての少年ミステリファンは、結局ブリッジも知らぬまま本書をどっかのブックオフで買ったクリスティー文庫版で初めて読むことになりました。ダメじゃん(笑)。ちなみに当時のポケミス版は家のどっかに眠ってるはず。読まなくてゴメンね。

あだしごとはさておき、いやこれは予想以上に面白かったですな。
もともとオールスターものが好きなので、新登場のオリヴァ夫人を加えたクリスティーレギュラー陣4人と、容疑者4人の対峙という絶妙な設定。冒頭のヘイスティングスのコメントも、事件に関われなかった彼のひめた悔しさを語るようでまたニヤリです。
内容的にはクリスティーの優しさと底意地の悪さを実感するような展開も最後まで秀逸。いくつかの面で作者としての異色作? ともいえる部分もありましょうが、クリスティーの器量の広さ深さを改めて思い知らされた一冊。

No.9 5点 nukkam
(2016/08/16 14:58登録)
(ネタバレなしです) 空さんのご講評でも紹介されているように、1936年発表のポアロシリーズ第13作の本書は「ABC殺人事件」(1935年)の中でポアロが「手掛けてみたい事件」と言った通りの事件を扱っているだけあってなかなかの意欲作となりました。4人の容疑者対4人の探偵という珍しい設定に過去の事件と現在の事件の謎解きを組み合わせた複雑な本格派推理小説です。もっともポアロ以外の探偵役はバトル警視、アリアドニ・オリヴァ、レイス大佐といかにもな脇役キャラクターばかり揃えたので探偵競争というよりは連携捜査の色合いが濃いです。犯人は1人ですから主役探偵もポアロ1人に絞った方がよいと判断したのでしょう。問題は4人の容疑者が関係した過去の4つの事件が相互関連が全くないため、同時に4つの推理小説を読んでいるような感じがして結構読みにくかったことです。

No.8 7点 青い車
(2016/03/03 16:14登録)
評論家の霜月蒼氏は「ここには殻しかない」と書いてあまり評価していませんが、僕は隠れた佳作だと思っています。
カードが推理の鍵を握っている点ではヴァン・ダインの某作を思い出させます(あっちはポーカーで本作はブリッジ)が、こちらの方がより事件とゲームが密接な関係にあります。プレイ中にすぐ近くの椅子に座った被害者を刺殺するという劇的な演出が抜群で、ダインなら華美なペダントリーで文章を飾り付けるところですが、アガサはハッタリを用いず盛り上げています。この辺からも特色の違いがわかり面白いところです。
容疑者はわずか四人だが全員が以前人を殺した疑惑がある。この設定も実にいいです。犯人が誰かが見どころではないところは『五匹の子豚』と通じるところがありますが、本作の面白みは次々と容疑者たちに疑いを向けては再考を繰り返すプロットで、人物の感情を紐解く『五匹の子豚』より乾いたところにあります。
最後のポアロの推理も、作者の女性ならではの細やかさが感じられ見事です。別にブリッジのルールを知らなくても読めるので、少なくともアガサのファンなら読むべきです。

No.7 5点 ボナンザ
(2015/11/14 21:20登録)
後半の展開はクリスティらしい。が、納得できるほどの内容かというと。
面白い小説であることは確か。

No.6 7点 クリスティ再読
(2015/09/22 00:13登録)
バトル警視その3。
まあポアロものなんだけどね、バトル警視だと他のレギュラー探偵との共演でもオッケーだから、本作は実はバトル警視モノ=クセモノ作品じゃないかと思うのだ。
というのは、本作、意外にヘンなミステリなのだ。

一見、ポアロが心理主義的にブリッジの勝負から犯人を割り出して..のカナリア風の話に見えるんだけど、実はそうじゃない(まあそういう風にも読めなくないが)。枠組みは過剰なまでにフーダニットしていて、序文で犯人は4人のうちにしかいないと宣言までしちゃうわけだけど、これ自体を一種のミスディレクションと捉えるのがいいのでは?と思うわけだ。

で実際、本作は一見スタティックなパズラーとして中盤まで地味に展開するわけだが、後半怒涛の展開を見せる。4人の容疑者はそれぞれ別の殺人の犯人かも、というわけで、それぞれいろいろな思惑でポアロと対峙し、それぞれが自滅していく....あれ、これ心理主義フーダニットだったっけ??いやいや、ゲームにかこつけた心理戦小説でしょ。だからスリラー風にめまぐるしい展開を追っかければお腹一杯。
というわけで、ウラをかいた意外な趣向に加点。ロリマー夫人の造形がナイス。

No.5 6点 あびびび
(2014/06/30 00:47登録)
自分が読んだのは早川書房で、1976年発行、1998年58刷とあった。こんな地味な作品でもそれだけ読まれていることに、さすがクリスティーと、唸ってしました。

個性の強いシャイタナ氏はほとんどの人に嫌われていたが、おもしろいパーティーを開くので人が集まる。ある時ポアロに会った時に、「世の中には殺人を犯しながら何食わぬ顔をして生活している人間がいる。今度のパーティーではそんな人間を集める」というのでポアロも参加したが、別々の部屋でブリッジをしたところ、そのシャイタナ氏がナイフで刺されて殺された。

そのシャイタナ氏はとなりの部屋にいて、当然その部屋でブリッジをしていた4人に嫌疑がかかる。その4人は以前に殺人を犯していて、シャイタナ氏に悟られ、その口封じに殺されたと推理されるが、さて…。

一応、どんでん返し的な結末ではあるが、その場で思いついたような指摘で、満足感は得られなかった。ただ、いつもながらアイデアは抜群で、飽きが来ない。

No.4 5点 りゅう
(2011/11/27 21:12登録)
 本格ミステリではなく、ストーリー性を重視した犯罪小説といった印象で、謎解きを期待すると拍子抜けする作品です。序文で作者からも、犯人は4人の人物のうちの誰かであって意外性がないこと、犯人を推理する手法は心理的方向を取ることがあらかじめ宣言されています。
 最初の殺人は容疑者4人の誰でも可能であり、これといった物証もないので、4人の過去を調べて事件の類似性を探ったり、ポアロは容疑者に対して、事件時に部屋にあったものをどれだけ観察しているかとか、ブリッジゲームの進行状況をどれくらい覚えているかなどを聴くことで容疑者の性格分析を行い、犯人を割り出そうとします。
 ラストに至る展開は二転三転して面白いのですが、真相自体を取り出して見ると特にこれといったトリックが使われているわけではなく、感心するようなところもなく、あまり印象に残らない作品でした。
 私はブリッジのルールを知りませんが、ポアロの推理はブリッジの得点表に基づいて展開しているので、ルールを知っている方がより楽しめる作品だと思います。

No.3 6点 E-BANKER
(2010/12/29 22:57登録)
ポワロ物の長編。
トランプの代表的な遊びである「ブリッジ」が事件を解く鍵になる。
~名探偵ポワロは、偶然から夜ごとゲームに興じ、悪い噂の絶えないシャイタナ氏のパーティーに呼ばれていた。が、ポワロを含めて8名の客が2部屋に分かれブリッジに熱中している間に、客間の片隅でシャイタナ氏が刺殺されていた。しかも、居合わせた客は殺人の前科を持つ者ばかり・・・ブリッジの点数表を通してポワロは真相を追究するが~

一種のクローズドサークル内での事件ですし、最初から容疑者はほぼ4名に絞られています。
ポワロはブリッジの点数表や会話の中から真犯人を特定していく・・・というわけで、容疑者たちの心理が推理の大きな要素になるという展開。
まぁ、確かにラストは作者らしいサプライズが用意されているわけですが、やっぱり全体的に地味な印象はぬぐえず、真相も何となくスッキリしない気がしてなりませんでした。(ポワロの途中の発言も「ミスリード」というよりは、故意に捻じ曲げているといった感じなんですよねぇ・・・)
ブリッジについては別にルールを知らなくてもあまり本筋には関係ありませんのでご安心ください。
以前に二階堂黎人の短編(作品集「ユリ迷宮」中の「劇薬」)を読んでたので、個人的にはルール等理解して読むことができました。

No.2 7点 okutetsu
(2009/08/28 04:52登録)
ブリッジのルールがわからないのでちょっとつまらないところもありましたが推理には関係ないですね
心理的な面から推理するというのはおもしろいです。
ミスディレクションもうまくさすが女王って感じですね

No.1 8点
(2008/12/07 14:06登録)
前年に書かれた『ABC殺人事件』の中で、ポアロがこのような事件を扱ってみたいと言っていたプロットまさにそのままの作品です。
ヘイスティングズも不満をもらしていたとおり地味な事件で、オリヴァー夫人(他の作品にもたまに登場するクリスティーの分身ともいうべき作家)が犯人だったなどというような大技も全くありません。それでもミスディレクションを張り巡らせておいて、終盤にはスリリングな展開まで見せ、鮮やかな解決で納得させてくれるのですから、さすがにミステリの女王、センスの良さは抜群です。
ブリッジのルールは知らないのですが、ほとんど気になりませんでした。

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