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ミステリの祭典

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妖刀地獄

作家 夢野久作
出版日2025年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 みりん
(2025/07/15 16:28登録)
『名娼満月』以外にはいずれも刀が物語に深く関わってくるということで、『少女地獄』や『瓶詰地獄』にあやかってこのようなタイトルをつけたと思われる。中身は夢野久作が生涯で書いたたった5つの時代小説を全て収録。他のアンソロには一切載ってない激レア5品。

『斬られたさに』
3回読んだがモヤモヤ。
特に若侍の最期のセリフ「女役者」はどういうこと?本当は仇討の免状を盗んだ掏摸女であるが、友川家の長女であるかのように演じていたとそのまま受け取って良いのだろうか。平馬の悟った真実の武士道とは一体何だったんだろう。決して復讐の連鎖を悔やんだわけではなさそうだが。
『名君忠之』
藩主・黒田忠之は家臣である与九郎が薩摩藩から恩寵を受け取ったことに憤慨し、処刑を命じるところから始まる。
この話は与一の動機が謎に包まれています。死んだ両親に呪いをかけられていたのか、それとも自分が助かる道はこれしかないと悟ったのか。どちらにせよ遊女を手にかける必要はなかったのでは。結果、祖父の死に感極まって泣き出し、元凶である忠之も情に絆される始末。
『名娼満月』
最上級の美貌を持つ花魁・満月を3人の男が奪い合い、その戦いに破れた商人と武士がタッグを組んで満月を貰うための金を集めるという話。1クールの感動オリジナルアニメのようなフツーすぎるオチで逆に異色作まである。
『狂歌師 赤猪国兵衛』
記憶が正しければ、夢野久作の中で唯一の探偵小説だと思われる。探偵小説アンチの夢Qなので、その造形はやはり一筋縄ではいかず、掃溜から手掛かりを習得する非人(乞食)探偵を採用。内容は王道で、蔵元の娘が胴体を真っ二つに斬られた事件を解決するというもの。この乞食探偵はロジックが強引で、どちらかというと掃き溜めで集めた情報を開示していく物知りおじさんというイメージだ。解説によると都筑道夫の砂絵センセーに近いらしい。読んでみるか。
解説によると、非人というワードが引っかかり掲載を拒否されたらしい。この探偵によるシリーズものになる噂も…

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