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ミステリの祭典

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メソポタミヤの殺人
エルキュール・ポアロ/別題『殺人は癖になる』『メソポタミア殺人事件』

作家 アガサ・クリスティー
出版日1957年01月
平均点5.74点
書評数19人

No.19 5点 いいちこ
(2023/08/24 14:02登録)
犯行プロセスの合理性・フィージビリティの低さ、意外性を追求するあまり、フィージビリティを無視した真犯人の設定、実証性に欠ける捜査プロセス等、ミステリとして評価できる要素に乏しい。
また、タイトルとは裏腹に、舞台を中近東とし、主要登場人物が遺跡調査に携わっているとする必然性が感じられない。
世評ほどの傑作と評価することはできない

No.18 7点 レッドキング
(2021/02/17 23:37登録)
舞台はイラク(首都名バグダッドの方が雰囲気出る)だが、建物の見取り図と容疑者達の行動時刻表がしっかりした「本格館もの」。犯人のアリバイトリックを構成する殺人トリックが単純明晰に決まり、「アクロイド殺し」等より、これとか「ポアロのクリスマス」「シタフォードの秘密」等の方が素晴らしいと思っている。
プライドとマゾヒズム、支配欲と異性愛、憎悪と挺身・・男女間の情念錯綜の物語が、ミステリの型式を粉砕してしまうことなく、むしろ構成しているところも見事。

No.17 5点 虫暮部
(2020/08/14 10:23登録)
 考古学者の美しい妻が殺されて……アガサさん、夫婦関係について何か言いたいことでもあったのだろうか。直接言えずに著書を経由してコミュニケーションを図った……?

No.16 7点 makomako
(2016/10/11 20:18登録)
 ずいぶん前に読んだことがあったのですが、内容はすっかり忘れてまた面白く読めました。
 最初読んだときはメソポタミア文明に興味があったのでそこが舞台の小説と期待したのでしたが、案外メソポタミアの雰囲気は少ない(クリスティーの話は場所が変わっても旅情ミステリーのように旅が主題ではない)。
 ポアロは本来尋問を繰り返すことにより犯人を見つけるといった志向が強い探偵ですが、ことにこの作品ではほとんど実際の調査は重要ではなく、かなりアームチェアーデテクチブ風です。
 密室殺人のトリックはちょっと強引で成功率が低そうな感じです。

以下ちょっとネタバレ
 犯人はめちゃくちゃに以外で、これが成り立つ可能性は低そうだなあ。女性は男と違って体の特徴をあまり覚えていないの?。夫婦でなければわからない癖が絶対あるからそれを忘れることなんて信じられないけど。

 でも全体としては面白く読めましたよ。

No.15 5点 青い車
(2016/09/25 18:44登録)
 クリスティー作品の中では希少な、一種の密室を扱うことによってハウダニットの興味が強くなっている作品です。ただ、そのためメイン・トリックがその魅力の中心になったことで、どこか大味な印象を受ける部分もあります。そういう点では、あまり細かい誤導を得意とするクリスティーっぽくないと思います。一方で意外な犯人の設定はいかにもクリスティーらしく、最後ポアロの推理で明らかになるその正体には驚かされました。あと、今日見たドラマ版では遺跡発掘の様子が丹念に描かれており、雰囲気のいい良作に仕上がっていました。

No.14 6点 nukkam
(2016/08/13 06:20登録)
(ネタバレなしです) クリスティーは考古学者の夫の仕事の関係で中東旅行するようになり、「ナイルに死す」(1937年)や「死との約束」(1938年)など中東を舞台にした作品を書いていますがそれらが観光ミステリー風だったのに対して1936年発表のポアロシリーズ第12作の本書は遺跡発掘現場を描いているせいか「東洋の神秘」的な雰囲気が濃厚です。ややもすれば暗くて重苦しい作品になるところをレザラン看護婦を語り手役にすることによってそうならないようにしているのはいい工夫だと思います。謎解きもかなり凝っていてクリスティーには珍しい不可能犯罪に挑戦したり、(ネタバレ防止のため詳しく書けませんが)あまりにも大胆な犯人の秘密(普通すぐばれるのではと突っ込みたい)などなかなかの力作です。

No.13 5点 HORNET
(2016/06/26 17:38登録)
 考古学の発掘隊という特殊な、大仰な舞台設定だった割にはそのこともさして生かされておらず、クリスティ作品にしては平凡というのが正直な感想。その舞台設定の雰囲気で楽しめればよいのだが、それも中途半端だった感は否めない。
 登場人物も多い割に、語り手である看護師が限られた時間で接した断片的な人物像しかなく、結局被害者ルイーズとの人間関係も推理の楽しみにつながるほど濃く描かれていない。特に調査員メンバーなどは、誰が誰なのかを理解するのに必死で終わってしまった。
 犯人の意外性は確かにあった。そこはよかった。また、生涯を添い遂げる素敵な相手と再婚したという、クリスティ自身の人生において重要な意味のある作品だったということで、そういう点でもまぁ読んでよかった。

No.12 7点 りゅうぐうのつかい
(2016/03/01 17:44登録)
発掘調査の宿泊施設で起こる殺人事件。
「悲劇的な魔力」を持つ被害者、被害者に嫉妬する女性関係者、被害者の魔力にひかれる男性関係者。ポアロが関係者全員に被害者の人となりを聴き取り調査し、被害者の人物像を浮き彫りにしていく過程は面白いし、脅迫状の差出人、窓から覗いていた人物の正体、音が届く範囲の違いの謎など、様々な謎が盛り込まれている点も高く評価ができる。
人物の造形、謎の盛り込み方、探偵の調査内容など、本格ミステリーとしての作り込みに関しては、ハイレベルな作品であると感じた。真相はかなりの無理筋だが、それでも楽しめる作品であった。


(ネタバレ)
①チェスタトンが考えそうなトリックだが、被害者が窓から首を出す保証がなく、確実性に欠ける。
②犯行の様子を南側の建物にいた人物に目撃される危険性がある。
③犯人は、列車事故で顔が損傷した考古学者に成りすましているが、職場で考古学者の顔は知られているはずであり、成りすますことには無理がある。
④年月が経っているとはいえ、元夫を別人と見間違えて再婚するという設定には無理がある。

No.11 3点 斎藤警部
(2016/02/15 15:07登録)
どうしてなんだろうなあ、ホントウにおもしろくなかった。作者が色々面白いこと繰り出して来るのは感じ取れるんだけど、ビニールシートの向こう側で空回りってとこでね。エキゾティックな舞台設定の妙だとかも、おかしなほど心に入り込んで来ない。
どうしてこう、クリスティさんとは作品によって相性良し悪しの格差がすさまじく不安定に大きいのか、本当に謎だ。他人様にはどうでもいい事でございますが。(とは言え平均点下げちゃってごめんなさい)

No.10 5点 クリスティ再読
(2015/08/02 01:03登録)
中期のクリスティって、強い個性で周囲の人間を操り倒すカリスマ風なキャラを巡る話が多いと思うんだが、これも実はその一つ。
準密室あたりの純ミステリ的興味で語られやすい作品だけど、評者が一番気になったのはそこらへんで、まあこの作品のあとによりエグくこのテーマを扱った(しかも中近東モノもカブる)「死との約束」があったりするので、やはりこれは何となくクリスティも不完全燃焼な作品だったのではなかろうか。

一番興味深いのは最後のエピローグで、手記筆者(看護婦だからクリスティ本人が自分を重ねているよね)が、被害者の印象を自分の叔母に重ねて語る部分があるけども、その叔母のイメージが実はミス・マープルも連想させるところがある...結構トラウマだったんだろうね。

とはいえ、被害者のキャラを理解させるのに読んでいた本を手がかりにするのは悪いアイデア。評者でもさすがに「メセトラに還れ」くらいしか知らないよ(読んでない...)。

Howの部分では実質1ネタでシンプルな構成。ネタがわかれば真相はもうこれしかないような、どっちか言えば短編っぽい内容を被害者キャラ分析で伸ばしたような作品である。犯人に関して説得力がないのは、これはおそらく被害者の恐怖症の描写が中途半端になったせいではなかろうか(ネタバレを恐れたのか?)。恐怖症の内容をうまく設定すれば今風サイコスリラー調の話になったかもね。
いろいろ考えてはいるんだが全体的に「不発」な作品だと思う。中期のいろいろな試行錯誤の作品というあたりの評価でよいのでは?

No.9 8点 蟷螂の斧
(2015/03/19 09:12登録)
(ネタバレあります。)本サイトでの評価はそれほどでもないのですが、他ではマイベスト○○に入れている方が何人かいらっしゃいました。著者のファンで、私生活(離婚、中近東旅行、考古学者との出会い結婚)とだぶらせての評価かもしれません。それは別としても、心理描写については、うまいというしかありません。殺害トリックについては、初物です。後発は今のところ1作品しか出会っていませんが、前例(短編?)があれば読んでみたいですね。完全密室ではなく、準密室扱いにしたところをかなり評価したいと思います。無理があるとの意見も多いようですが、50cmの距離でOKであると思います。さて、もう一つのトリックですが、著者の他の作品(高評価9)でも取り上げられていますが、本作の方が強烈な印象です。そこまでやるか?!(笑)。心理描写の強い作品なので、次のような会話を勝手に考えてみました。看護婦(士)「奥様、今のご主人のどこに魅かれたのです?」夫人「そうね~。亡くなった前の主人の面影があったからかしら?。あっ、このことは今の主人には内緒にしてね(笑)」・・・この看護婦(士)の視点でのポアロものは新鮮な感じを受けました。

No.8 6点 E-BANKER
(2014/07/11 23:26登録)
1936年発表。エルキュール・ポワロ物で十二番目の長編ということになる。
「ナイルに死す」や「死との約束」など中近東を舞台とした作品のひとつ。

~考古学者と再婚したルイーズの元に、死んだはずの先夫から脅迫状が舞い込んだ。さらにルイーズは寝室で奇怪な人物を目撃したとの証言をする。しかし、それらは不可思議な殺人事件への序曲に過ぎなかった・・・。過去から襲い来る悪夢の正体をポワロは暴くことができるのか? 中近東を舞台にしたクリスティ作品の最高傑作!~

全体的な感想で言うと、「さすがクリスティ!」という感じにはなる。
なにしろそつがないミステリーだ。
砂漠の中の遺跡発掘現場というクローズドサークル。しかも現場となる「館」も密室というわけで、これはもう「二重の密室」ということになる。(しかも「館」の平面図付きというのがミステリーファンの心をくすぐる・・・)
序盤から中盤へと、作者の巧みなストーリーに乗せられていると、いつの間にか終盤へ突入することに!
そして、例のごとく神のような「ミスリード」にまんまと騙されることになるのだ。
今回は容疑者も結構な人数になるので、純粋なフーダニットとしても楽しめる。

で、問題はそのトリックなのだが・・・
他の方が指摘しているとおり、この○れ○○りトリックは相当強引だろうなぁー。
古いミステリーではこの辺りが割と無視されているケースが多いが、現実的にはそれに「ピン」とこない奴はいないのではないか?
そこはどうしても割り引かざるを得ない。
そしてもうひとつが殺害方法に関するトリック。
一種の○○殺人ということになるのだが、これはポワロならすぐに気付くのではないか?
その程度のトリックには思えた。
(まぁこういうトリックを不自然ではなく登場させる手口こそ褒められるべきかもしれない)

個人的にはそう悪い出来には思えなかったが、作者の他の良作に比べれるとどうしても“それなり”の評価に落ち着く。
なにしろ作者については評価のバーが高くなるので、こういう評点になるよなぁ・・・
(看護婦の手記という形式は結局・・・?)

No.7 5点 ボナンザ
(2014/04/08 17:44登録)
佳作。特に不満はないが、それほど感銘は受けなかった。

No.6 5点 TON2
(2013/02/12 18:15登録)
ハヤカワミステリ文庫
 砂漠の中の考古学者の研究基地とでもいうべき所で事件が起こります。トリックは少々無理があるかなという感じです。

No.5 3点 mini
(2012/09/11 09:55登録)
本日11日夜にWCアジア最終予選、日本Vsイラクの試合が行なわれる
イラク監督は元日本代表監督のジーコなので、新旧日本代表監督決戦となるわけだ
イラクが舞台のミステリーと言うとクリスティの2冊、「メソポタミヤの殺人」と「バグダッドの秘密」となるわけだが、「バグダッドの秘密」は未読なので今回は「メソポタミヤの殺人」だ

「メソポタミヤの殺人」を読んだのはすげ~前でさ、しかも印象が薄くて内容を殆ど覚えてなかったから軽く読み直しちゃったよ
何でそんなに印象が薄かったのかと言うと、一つには考古学的発掘現場という一種のクローズドサークルな舞台なので、中近東ものらしいエキゾチズム漂う魅力に欠けるという理由もある
でもやはり犯人とトリックがありきたりだからというのが最大原因だからだろう

*! 以下は直接のネタバレではないが、「葬儀を終えて」と「満潮に乗って」のどちらかが未読な人にはネタバレになるので避けてた方がいいです

昨今は”○○トリック”や”○り○○し”トリックや”○れ○○り”トリックというものをやたらと忌み嫌う読者が多い気がするが、私は○○トリックに格別のアレルギーは無いのであまり気にしないタイプである、しかしだ、この「メソポタミヤ」はいただけない
当サイトでのseiryuuさんや空さんの書評で御指摘の通りで、これは無理があるな
「葬儀を終えて」や「満潮に乗って」は強ち不自然だとも言えないと私は思う、関係者とっては”よくは○らぬ○○”だったりするわけだからね、滅多に合わない遠い○○なんて顔も覚えてないなんてざらにあるしね
でも「メソポタミヤ」の場合は全くの○○じゃ無いんだぜ、普通気付くだろ
「葬儀を終えて」には難癖付けておいて、この「メソポタミヤ」に寛大な読者が居るとしたらダブルスタンダードもいいとことろだ
殺害トリックもつまらないし内容をすっかり忘れていたのも当然だなと自分自身で納得した

No.4 6点 ミステリー三昧
(2011/03/06 11:49登録)
<ハヤカワ文庫>ポアロシリーズの12作目(長編)です。
本作は「被害者はいったいどんな人物だったのか?」を探れば彼女は何故殺され、誰が犯人なのか分かるというテーマとなっています。関係者の証言により、被害者を中心とした人間関係図が頭の中で構築されていく過程は読んでて楽しめました。被害者は美人で心優しくてみんなに愛されていた、と思いきや読み進めるごとに、実は被害者は悪女であり、そして動機を持った人間は多く存在するということが分かってきて、だんだん関係者たちが怪しく見えてくる辺りはアガサ・クリスティらしいプロットだと思います。人間ドラマを創り出す巧さは高評価したいです。
ただ私的にはやっぱり6点止まりですね。というのもトリックにどうしても既出感を感じてしまう。大分前に『名探偵コナン』で読んだことがあります。それが初体験だったでしょうか。またドラマ『古畑任三郎』『ケイゾク』でも似たようなトリックが使い回しされていたのを覚えています。大変便利なトリックだと思います。もともと驚愕系ハウダニットで受けやすいし、利用してしまえば同時にアリバイも簡単に作れて意外なフーダニットも演出できる。本作ではさらに「何故、看護師を雇ったのか?」というホワイにも繋がってるし。でも、もうこのトリックには満足はできないですね。ただ既出感を感じただけで評価を落とした訳ではありません。本作のテーマに沿って推理しようと、結局トリックが分からなければ犯人も分からない構成になっていることに納得が出来ていない。逆を言えばトリックを知っていれば犯人が簡単に分かってしまうことにもなるし。驚愕トリックを用いることで、何故か物語の趣旨を壊している点で評価を落としました。

No.3 5点 seiryuu
(2010/12/05 10:25登録)
うん十年経っても普通気づくと思う。
殺人トリックもなあ・・・
中近東を舞台にしたクリスティー作品の最高傑作というのはう~ん。
これで最高傑作なの?

No.2 9点 toyotama
(2010/10/08 08:30登録)
1人2役の設定が都合よすぎる気もするが、殺人の凶器はともかく方法については十分納得できる。
中東を舞台にしているので、浮かぶ情景は映画版『ナイルに死す』になってしまったが、話は『ナイル・・・』くらい好き。

No.1 7点
(2008/12/25 23:10登録)
犯人の設定については、いくらなんでもこれはちょっと無理じゃないかと思ったのですが、意外に気にならない人もいるようです。一方、殺人の手順は明かされてみると単純ですが、いかにもミステリらしい感じで、うまく考えられています。
考古学者のマローワン教授と再婚したクリスティーが、初めてオリエント世界を舞台にとった作品で、それだけにストレートに遺跡発掘隊の中で起こる殺人を扱ったということではないでしょうか。

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