この限りある世界で |
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作家 | 小林由香 |
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出版日 | 2023年06月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | HORNET | |
(2024/09/27 21:59登録) 15歳の少女が同級生を刺殺。加害少女は、「小説の新人賞の最終選考で落ちて、悲しいから人を殺す」と作品と共にネットに上げていた。世間では、この加害少女の作品のほうが受賞作より優れていた、受賞作のせいで殺人が起きた、などと受賞者への誹謗中傷が起こり、追い詰められた受賞者は自死してしまう。加害少女は少年院に収容されるが、社会復帰を手助けする篤志面接委員に「私の本当の犯行動機を見つけてください」と意味深な言葉告げる。志願して篤志面接委員になった結実子は、緊張と不安を抱えながらも加害少女と向き合っていく― <ネタバレ> 純粋な教育への志をもった新人篤志面接委員が、闇を抱える少女の言動に翻弄されながらも真摯に向き合い、心を開かせていく―そんなストーリーに思えた読書の感覚が、終盤見事に覆される。「同級生を刺した少女の真の犯行動機は何なのか?」という中心となる謎を抱えつつ、自死した新人賞受賞作家の編集者の苦悩、無責任にSNSで放言する一般市民、加害少女の背景にある家族環境など、さまざまな要素を巧妙に絡ませながら物語は進行する。 中心となる「少女の真の犯行動機は?」に対する解答はそれほど目を見張るものではなかったが、別に仕掛けられた作者の企みにはまずますの手応えを感じた。作者の作風として最終的にはダークにはならず、読後感もよい一作である。 このような、罪ある子どもに対峙する大人、という構図が好き(得意)な作者でもあり、それだけにさすがのリーダビリティと面白さがあった。 |