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ミステリの祭典

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死んだ山田と教室
「死んだ」シリーズ

作家 金子玲介
出版日2024年05月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 メルカトル
(2025/07/06 22:05登録)
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
Amazon内容紹介より。

二年E組の山田が死んで、スピーカーに憑依したという最初の段階を知った上で読みました。別にそれはネタバレでも何でもなく、自然その現象が日常になっていくまでの過程は面白かったです。それと猫を助けようとしたらしい山田が巻き込まれた事故を、新聞部の二人が調査する章はちょっとミステリっぽくて良かったですね。

しかしその後、同じような展開が続いて私のダラダラした読書に拍車がかかりました。その間、何故この小説が本屋大賞の候補に選ばれたのだろうと考えながら、どうにも理解出来ないなあとぼんやりと思ったりしていました。それが最終章で背筋がシャキーンと伸び、そうなのか、これは実は青春ミステリだったんだと納得しました。時々ダラダラの中に鋭いところを見せてはいましたが、そう来たかと思いましたよ。ただ、最初に登場人物が一気に紹介されるので、誰が誰だか区別が付きにくいのは難点かも知れません。それと、男ばかりで暑苦しいです、それはそれで又良いんですけど。

No.1 8点 sophia
(2025/06/12 18:23登録)
ネタバレあり

切ないですねえ。男子校出身の私には共感できる描写も多く笑えましたし、2年生修了時をフィナーレにして爽やかな青春物語に仕上げることができた作品ですが、こうしましたか。3年生進級後どんどん暗くなっていきますもんね。元2年E組のみんなの気持ちが山田から離れていく様子が何ともリアルですし、中でも花浦先生のドライっぷりは本当に怖い(笑)それでもそこに存在し続けなければならないのは「火の鳥」の未来編を思い起こしますし、大オチは「百万回生きたねこ」のようでもあります。○○死も影のテーマにあるようですし、思いのほか深い作品でした。それにしても和久津君は本当にいいやつだなあ。

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