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ミステリの祭典

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スイッチ 悪意の実験

作家 潮谷験
出版日2021年04月
平均点5.83点
書評数6人

No.6 7点 E-BANKER
(2025/12/21 12:33登録)
第63回メフィスト賞の受賞作品。
舞台のひとつとなる「狼谷大学」とは、作者の出身校である「龍谷大学」のことでしょう。仏教色の強い大学だけあって、宗教に関する考察も作中にたびたび挿入される。
単行本は2021年の発表。

~夏休み、スイッチをもって1ヵ月暮らすだけの簡単なお仕事。日当は1万円、勤務終了後のボーナスは、なんと100万円! スイッチは押しても押さなくても1ヵ月後には100万円が手に入る。押すメリットはない。「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし……友人たちとアルバイトに参加した大学生の箱川小雪は思い知らされる。想像を超えた純粋な悪の存在を。第63回メフィスト賞の本格ミステリー長編~

手前味噌かもしれんが、これまで数多くのミステリに触れてきたと思ってる自分にとっても、初めての「肌触り」がする作品だった。
特に序盤から中盤にかけて。「真の悪意」を問うための実験。これがいったい、作品全体にどんな意味を持つのか?
誰も押さないはずだったスイッチが押された後、思いがけぬ展開につながっていくプロットの妙。
そう、この辺なんだよな。
次の展開が全く読めない。当然今まで触れたことのない世界観(のようなもの)。

ただし、中盤から終盤にかけて少しダレてくる。期待してたのとは違う方向に向かったので、「なあーんだ・・・」という感じになった。
このままなら尻つぼみだなと思った矢先、第八章(「犯人」)以降、再び物語は思わぬ展開を見せていく。「ああ、やっぱり本作はれっきとしたミステリだったんだあ」と。(当たり前か)
ここから何回か捻ってくる。最終的に判明する真相にはまずまず驚かされた。
なるほど、主客逆転とでも言えばいいのか、さすがに受賞作だけあると感じた。

最後までモヤモヤしたのは「安楽」のこと。あまりにもドライというか、気味悪いほど精神が均衡してるというか、ゾワゾワした感覚にさせるキャラだった。だから、もう少しそこが掘り下げられて、なにかの仕掛けがあるのかなと期待してたんだけど、そこは割とスルーされたまま終了してしまった。
でも、このプロットは面白いと思ったし、本作以降の作者の活躍ぶりをみると、最初から「兆し」はあったんだなと納得した次第。

No.5 6点 sophia
(2025/04/20 21:56登録)
ネタバレあり

映画「運命のボタン」のようなSFチックな作品かと思っていましたが、思いのほか現実的な話でした。スイッチを押した人物を特定する推理は面白かったのですが、綻びとなった「弱い教祖」の論理があまりピンと来ませんでした。ここは本作の内容を鑑みるに重要な箇所だったと思うのですが、私に宗教学的な素養がないことが原因かもしれません。それから、主人公の抱える「自分の意志で選択できない」という秘密があまり主題に関係していないのかなあと思いました。脳内コイントスの原理は面白いのですけどね。

No.4 6点 虫暮部
(2024/12/13 12:32登録)
 冒頭で示される興味深いアルバイト。でも要は心理ゲームとかでよくある思考実験だし、これだけで完結しているでしょ。小説になるの?
 と思っていたら意外な方向に接木を重ねて立派に成立させていた。題材から作品を立ち上げる手際が際立っている。

 ただ、パスワード探しのところで首を捻った。或る程度の目星を付けた上で、あとは総当たりチェック、と言うやり方。その場合、アトランダムではなく順番通りに試す方が絶対に効率的である。作者はフーダニットの手掛かりとして活用する為に(と言うか、判り易くし過ぎない為に?)敢えて不自然な行動を取らせているのか。これは戴けない。

No.3 6点 ぷちレコード
(2024/07/20 22:43登録)
心理コンサルタント・安楽是清が企画した心理実験、それは「純粋な悪意」をめぐる実験だった。参加者のスマホには「スイッチ」がインストールされ、押しても押さなくても報酬は手に入るが、押せば無関係な家族を破滅に追い込むという。押すメリットのないスイッチだが、実験の終盤で思わぬ事態が発生する。
まるでゼロ年代に流行した思考実験的デスゲームを彷彿させる設定だが、解決編では地に足の着いたロジカルな犯人当てが行われる。そのギャップ自体も本書の持ち味だが、推理の後に判明する犯人の動機、そしてこの実験の裏で起きていたことの真相が秀逸。

No.2 5点 メルカトル
(2024/03/03 22:34登録)
夏休み、スイッチをもって1ヵ月暮らすだけの簡単なお仕事。
日当は1万円、勤務終了後のボーナスは、なんと100万円!

スイッチは押しても押さなくても1ヵ月後には100万円が手に入る。押すメリットはない。「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし……友人たちとアルバイトに参加した大学生の箱川小雪は思い知らされる。想像を超えた純粋な悪の存在を。
Amazon内容紹介より。

短いセンテンスと圧倒的なリーダビリティでワクワクが止まりません。途中までは・・・。話がどう転がるか想像出来ないので、序盤は妄想を膨らませる様に楽しみました。しかし、ある時点から道筋が見えてきて、そこからは悪い意味で普通のミステリに様変わりし、うーんとなりましたね。
要するに常識的に考えれば、スイッチを押すというか、スマホをタップする訳がないのに何故?と云う話ですよ。

面白いのは面白いです。話の広げ方も成程とは思いましたが、結局それを描きたいがためにわざわざこんな奇矯な設定を持って来たのかと、ちょっとばかりがっかりしました。そっちじゃないのかい?あっちなのかって感じ。暈かした表現で何の事か分からないかも知れませんが、ネタバレになりそうなのでお許しを。ただ反転は味わえます、余りカタルシスは得られませんけどね。

No.1 5点 フェノーメノ
(2022/01/10 19:10登録)
他人の人生を破壊するスイッチを渡されてうんぬんという設定からもっとファンタジー寄りの作品かと思ったが、至って現実に即した内容で、メフィスト賞らしい尖りを期待した身からすると少々拍子抜けな至極スタンダードな造りのミステリとなっております。
以下ネタバレ全開ですので悪しからず。



それなりにまとまっているとは思いますが、ちょっと文句をいうと、そもそもアリバイトリックの必然性が感じられないのが引っ掛かります。
読んでから間が空いてるので少々記憶が覚束ないのですが、これ、誰のためのトリックなんですかね? 警察じゃないですよね? じゃあ実験の参加者? でもわざわざこんな手間かけて参加者に向けてトリックを弄する必要あります?
そもそもみんなで口裏あわせをして誰か一人が捕まる覚悟なら、余計な小細工をする必要ないのでは? ここの説得力が感じられなかったです。
アリバイトリックと称しながらただ口裏あわせを補強する効果しかないから、犯人サイドのメリットが感じられませんでした。

スイッチを押したから事件が起こったのではなく事件が起こったからスイッチを押した、という連城的?な逆転の構図がそもそもの発想としてあったのでしょうし、その目の付け所自体は面白いと思うのですが、そこにばかり目がいって全体の造りがチグハグになっていると感じました。また犯人当ての部分も、途中までは期待をもたせる流れながら、最終的にはもうひとつキレが鈍かったように思います。

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