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ミステリの祭典

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パリから来た紳士
カー短編全集3/旧題『カー短編集3』

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1974年05月
平均点5.57点
書評数7人

No.7 6点 レッドキング
(2022/04/02 21:43登録)
ジョン・ディクスン・カー第三短編集。
  「パリから来た紳士」 十八番の歴史(ラファイエット甥!)物にして、密室より消失した遺言書捜し。6点。
  「見えぬ手の殺人」 死体まで6mの砂密室。やっぱすげえなカートリック、笑かしてくれる(^O^)。6点。
  「ことわざ殺人事件」 ミステリで初めて知ったよ旋(腔)条痕。5点。
  「とりちがえた問題」 「耳-目-喉」って、「目」トリックは解明されたが「耳」未解明で、「喉」・出て来た? 5点。
  「外交官的な、あまりに外交官的な」ミステリアス浪漫をHowに組込んだ密室消失トリックのWhy。見事!7点。
  「ウィリアム・ウィルソンの職業」 「唇の捩れた男」ダミーのWツイスト。密室トリック肩透かしだが・・6点。
  「空部屋」 深夜のマンション空部屋から聴こえるラジオ、部屋には変死体が・・4点。
  「奇蹟を解く男」 幻聴怪異と密室殺人未遂トリックと迷路アクションと・・6点。
※その他「黒いキャビネット」は採点外。

No.6 6点 ボナンザ
(2020/05/18 21:56登録)
表題作について、「妖魔の森の家」に匹敵するは言い過ぎだと思うが、全体的に話もトリックも楽しめる佳作集。

No.5 5点 弾十六
(2019/08/02 22:16登録)
JDC/CDファン評価★★★☆☆
私が読んだのは1975年10月の4版。『カー短編集3』は短篇集The Third Bullet(1954)から3作、The Men Who Explained Miracles(1963)から6作という構成。
まだ全部読み終わっていないのですが中間報告。
以下、初出は『カー短編全集5』の著作リストをFictionMags Index(FMI)で補足。

⑴The Gentleman from Paris (EQMM 1950-4) : 評価5点
独特の迫力がある歴史もの。舞台は1849年4月のニューヨーク。でも謎の解明が何だかすっきりしない…と一度書評に書いたのですが、よく考えると晴雨計って将来の天気を予報するもの。それなら、近いうちに『雨と寒気』が来るよ、という意味は明白。残念ながら翻訳はニュアンスを伝えきれていない感じです。
ついでに本作の映画化The Man with a Cloak(1951)を見ました。当時の雰囲気が視覚化されていて満足。でも英語版なのでほとんどセリフが聞き取れず。登場人物の設定など結構変更されてましたが、目配せと晴雨計(かなりデカイ)はきちんと登場してました。
(2019-8-7記載; 2019-8-8追記)

⑶The Proverbial Murder (初出不明 1941以前) : 評価5点
フェル博士もの。初出が1941年以前と推定されているのは、戦時色が強い内容(プロパガンダっぽいセリフあり)だから、ということと、見つかってる一番早い掲載のEQMM 1943-7でhere published for the first time in the United Statesとなってるためらしい。内容は、ことわざの必然性が感じられない話。でもグロスってそんなにポピュラーだったのか。(ドイツ系科学者の家には必ず一部あるはず!)
p103 軍用ライフル銃…256口径: .256インチ(=6.5mm)と表示していた当時のライフル弾は見あたらず。弾丸径.257インチの.25 Remingtonや弾丸径.258インチのWCF(Winchester Center Fire, .25-35 Winchester)のことか?6.5ミリ表示ならイタリア軍用の6.5×52mm Carcano、オーストリア軍用の6.5×54mm Mannlicher–Schönauerなどがあります。(いずれも弾丸径.26インチほど)
p106 三◯三口径の軍隊用ライフル銃: .303 British(=7.7×56mmR)は大英帝国の軍用ライフル弾(1889-1950s)。
p110 旧型の16内径の散弾銃: 16 boreですね。米国のgaugeと同じ。口径16.83mm(=0.66インチ) 日本では「16番」という表記です。
p113 人種が違う: チュートン系の男がルドヴィッヒ マイエル(Ludwig Meyer)博士に対して言うセリフ。87分署のマイヤー マイヤー(Meyer Meyer)ってユダヤ系でしたよね…
(2019-8-2記載)

⑷The Wrong Problem (The Evening Standard 1936-8-14) : 評価7点
フェル博士もの。1901年以降の話。チェスタトン風の冒頭。ストーリーの雰囲気もGKC流。ある状況が語られるのですが、ポイントとなる情報が隠されてるので良くわからない話になっています。p160の地名がヒント。翻訳も微妙なところが伝わってこない表現になっています。私の想像が合ってるなら、よく出来た話。(当時はそーゆーのを考慮して判決が下ったのか) せっかくハドリー登場なのにコンビネタが乏しいのは残念。ちゃんとニュアンスが伝わるように翻訳し直すべきだと思いました。
p141 次男が父親と同じ名前でジュニアと呼ばれていました。: 今まで意識したことがなかったのですが、普通、長男にジュニアと名付けるものだと思ってました。実際はどうなのでしょうか。
p145 ジェロームの小説『ボートの三人男』: ここに登場することに何か意味はあるのかな?
(2019-8-2記載)

⑸Strictly Diplomatic (Carter Dickson名義, The Strand 1939-12 挿絵H.A. Seabright) : 評価6点
語り口が見事な小品。FMIでは誤ってマーチ大佐ものとして計上されてました。
p166 過労に女や冒険を勧める医者: 実に素晴らしい。とは言え現実にこんなのがいたら嫌ですね。
p187 千フラン紙幣: これがフランスフランなら金基準(1939)で1フラン=0.0057ポンド。英国消費者物価指数基準(1939/2019)で64.82倍、1000フランの現在価値は49751円。フランスの千フラン札は茶色に青主体でセレスとマーキュリーのデザイン。
ベルギーフランの場合は金基準(1939)で1フラン=0.00766ポンド、1000フランの現在価値は66856円。ベルギーの千フラン(二百ベルガ)札は緑主体でアルバート王とエリザベス女王の肖像。
(2019-8-4記載)

⑹William Wilson’s Racket (Carter Dickson名義, The Strand 1941-2 挿絵Jack M. Faulks) : 評価5点
マーチ大佐第9話。(最終話) このタイトルでアラン ドロンを思い出す人が結構いるのでは?あのオムニバス映画の雰囲気でJDC/CDを映像化してくれたら嬉しいなぁ。(ハマープロ風味の方が適切か。) この作品自体は小ネタ。確かに無駄な行事って多いです。
(2019-8-7記載)

⑺The Empty Flat (Carter Dickson名義, The Strand 1939-5 挿絵H.A. Seabright) : 評価5点
マーチ大佐第6話。なかなか魅力的な導入。JDC/CDを読み慣れた人ならイニシャルでその後の展開がわかりますよね… 解決は手がかりの提示が不十分なので消化不良。
p222 二千ポンド: 上述の換算で、現在価値1746万円。
p223 電気メーターに料金を入れる: 通常は個々のメーターに料金を入れる電気供給システムだったのか?この小説のモダンなアパートではその心配がないようなので、集中管理方式もあったのでしょう。
p242 紙幣で8ポンド、銀貨と銅貨が10シリングと9ペンス: 現在価値74517円。当時の5ポンド以下の流通紙幣は5ポンド、1ポンド、10シリングの三種類。10シリング以下の流通コインは当時なら肖像がジョージ五世(1911-1936)のものとジョージ六世(1937以降)のものが混雑してると思われ、種類が豊富なので省略。
(2019-8-4記載)

⑻The Black Cabinet (Twenty Great Tales of Murder 1951, ed. Helen McCloy & Brett Halliday) : 評価5点
なかなか読ませる歴史もの。ナポレオン三世時代のフランスが舞台。情熱的な美女が主人公。でも幕切れが全く意味不明。(知識のない私だけ?) 銃はデリンジャー拳銃(リムファイア式Remington Double Derringer1866ではない、パーカッション式のやつ。有名なのはHenry Deringer作フィラデルフィア デリンジャー1852)が登場。「大型の銃弾と火薬と詰め綿が元込めにしてあったが」は多分「装填してあった」の誤り。(詰め綿を使うのは先込め銃)「撃発栓に雷管」はnippleとcapですね。
(2019-8-7記載)

No.4 6点 斎藤警部
(2018/01/06 10:41登録)
パリから来た紳士 / 見えぬ手の殺人 / ことわざ殺人事件 / とりちがえた問題 / 外交官的な、あまりにも外交官的な / ウィリアム・ウィルソンの職業 / 空部屋 / 黒いキャビネット / 奇蹟を解く男
(創元推理文庫)

小説的には大ネタ遣いであろう表題作も含み、小味で愉しい短篇集。 傑作撰てガラじゃぁないが、カーを愛おしむ人なら読んで全く損は無がっぺ。

No.3 6点 kanamori
(2010/07/01 22:44登録)
カー短編全集の第3弾。
表題作の歴史ミステリ「パリから来た紳士」は、やや真相が見え易いきらいがありますが、完成度で編中のベスト。
準ベストはフェル博士もので「見えぬ手の殺人」か「ことわざ殺人事件」。

No.2 5点
(2010/02/25 21:42登録)
歴史もの(といっても19世紀中頃の話ですが)の『パリから来た紳士』は『妖魔の森の家』と並ぶカーの短編最高傑作と言われています。最終行のサプライズが高評価の主要因でしょうが、この点についてはもちろん気のきいた終わり方ではあるのですが盲点という感じではなく、また作品内部で完結したフェアプレイがあるわけでもないので、個人的にはそれほどまでとは思えませんでした。
その他の作品の中では、『ことわざ殺人事件』が銃殺トリックも緻密で、まとまりよく仕上がった佳作という感じで気に入っています。一方『見えぬ手の殺人』『とり違えた問題』の殺害方法の特殊性はあまり好きになれません。最後の中編『奇蹟を解く男』はそれなりにおもしろいのですが、小ネタの寄せ集めという印象はぬぐえませんでした。

No.1 5点 Tetchy
(2009/01/04 00:38登録)
表題作は最後の意外な真相も含め、楽しめた。
同趣向として、「黒いキャビネット」も面白く読めた。
ただ総体的には各編が地味なように感じる。
フェル博士やHM卿に加え、マーチ少佐物の短編が収められているものの、小粒な感じがしてしまう。

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