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ミステリの祭典

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励み場

作家 青山文平
出版日2016年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 ALFA
(2025/09/15 12:31登録)
江戸のお仕事小説仕立てで夫婦の心の機微を描いている。
終盤、それぞれに関わる真相が明らかになるくだりはまさにミステリー。
主題にふさわしい文体や構成はさすが。

味わい深い作品だが、他の作品にも時折見られる過度のストイシズムが若干の違和感として残る。

No.1 7点 小原庄助
(2018/03/26 09:35登録)
北の国にある山花陣屋で元締め手代をしていた笹森信郎に求められ、妻になった智恵。武士になることを目指し、勘定所の普請役になった夫に従い、江戸暮らしを始めた。だが、あることにより、彼女の心は大きく揺れる。一方、つまらぬ仕事で、成沢郡の上本条村に赴いた信郎は、名主の久松加平と対面。やがて理想的に見えた村の秘密を知ることになる。
本書は智恵と信郎のパートを、交互に描きながら進行していく。ふたつのパートは、別々の物語なのだが、どちらも終盤で驚くべき真実が明らかになり、ミステリの面白さを堪能することができるだろう。
でも作者の狙いは、その先にある。悲しい決断をしようとしていた智恵は、血のつながらない姉から意外な事実を聞かされ、自分の真の心に気付いた。信郎は村の秘密と自身の出目を重ね合わせ、新たな道を選ぶ。そんな夫婦の変化を通じて作者は、人が生きていく上で、本当に必要とする場所とは何かを、鮮やかに表現してのけたのである。

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