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ミステリの祭典

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満鉄探偵 欧亜急行の殺人

作家 山本巧次
出版日2022年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 ALFA
(2025/08/22 16:53登録)
鉄道とミステリーは相性がいい。運行ダイヤを元に緻密なトリックを仕掛ける「時刻表ミステリー」もそうだが、列車そのものを舞台にする「列車ミステリー」も魅力的。こちらは、区切られた時間と空間に旅情も加わってまとまりのいい物語になる。

今回は、満鉄(南満州鉄道)が舞台。かつて、広大な中国東北部を満州国として日本が統治したなんてファンタジーのようだがこれは史実。ロマンをかきたてられる舞台ではある。
満鉄はただの鉄道会社ではない。満州国統治の中枢だった。
その満鉄社内でたびたび書類が紛失する。
実在した豪華寝台列車に乗り合わせるのは、調査を命じられた社員、軍特務将校、憲兵、謎の美女、そしてソ連のスパイ。道具だては華やかだが荒唐無稽ではない。最後にはそれぞれの謎にちゃんと落とし前がつけられている。
ただ、本命より脇筋の話の方がでかいという欠点はある。
冒険スパイアクション+本格ミステリー+歴史風味でなかなか美味しい。

映画に向いている。大連駅でそれぞれの人物が乗り込むシーンはまるでオリエント急行。

No.1 6点 ROM大臣
(2023/10/18 15:11登録)
舞台は日中戦争前夜、昭和十一年の満州。南満州鉄道株式会社の資料課に勤める詫間は、総裁・松岡洋右の密命を受けて、社内で相次ぐ機密書類の紛失事件を調査することに。
謎の美女にソ連のスパイ、さらには陸軍特務機関に憲兵隊の思惑が絡み合う中、真相を追う詫間は、大連からハルビンへと向かう欧亜急行に乗り込む。
題名通りに欧亜急行の中で殺人事件が起きる物語だが、殺人の謎解きよりも、国家や組織に関する利害関係が生み出す謀略の渦に重点を置いた作品である。これまでも鉄道を多く描いてきた作者だけに、豪華列車の旅の描写はいたって緻密だ。鉄道に限らず、時代の描写の物語の雰囲気も、予想を裏切ることのない作品である。

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