三つの棺 ギデオン・フェル博士シリーズ |
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作家 | ジョン・ディクスン・カー |
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出版日 | 1955年02月 |
平均点 | 7.53点 |
書評数 | 43人 |
No.43 | 8点 | ALFA | |
(2025/09/04 07:36登録) 私見だが優れたミステリーには天才型と秀才型があると思う。 瑕があっても突出したワンアンドオンリーを具現化したものが天才型、精緻でバランスよく欠点の少ないのが秀才型。 この「三つの棺」は・・・(以下ネタバレします) 「○○○が犯人」というトンデモ設定を着地させた点で天才型。クリスティの「XXXが犯人」という某有名作と同じ。 天才型にありがちな歪みはある。大がかりな密室+アリバイトリックは突っ込みどころ満載だが、ここはカーのサービス精神。 密室トリックで語られることの多い作品だが、ワンアンドオンリーのこの趣向こそが真髄。 |
No.42 | 9点 | みりん | |
(2025/08/21 08:05登録) このオッサン、密室の巨匠みたいに評されるけど『夜歩く』とせいぜい『火刑法廷』くらいしか読んだことなかったんだよな。子分達の方がよっぽどぶっ飛んだ密室(ウナギとか)書いてんぞと突っ込みたかったんだが…本作は認めるしかないな(何様) ランポール君が久々に復活し、相変わらず影が薄い。そして新訳なのにやはりカーは読みづらい。 まず、密室からの仮面男の消失事件はその不可解性が群を抜いている。次にやや魅力は落ちるが、衆人環視の雪密室で、至近距離で起こった銃殺でなぜ犯人を目撃した者がいないのか?という謎。過去の脱獄事件、兄弟間の因縁、動機の不在により、事件は更に複雑怪奇の様相を呈する。 【以下 完全なるネタバレ】 当初の犯人の計画でも十分に魅力的で"ありえそうな"不可能犯罪足り得たが、サービス精神旺盛なカーおじさんはこれだけでは足りないと思ったのだろう。必然性・蓋然性を捧げてまで、互いに憎み合う被害者と犯人、<二つの棺>の共同作業がこの一世一代とも呼べるイリュージョンを創出した。結果、魔術や幽霊の存在を疑うほどの神秘に到達した。『死時計』もこのくらい分かりやすくすれば傑作になったのでは? ところで、実はかの有名な密室講義は読めていない。作品の一部を読まずに評価するのも失礼と思ったが、作品名が出た時点でネタバレを危惧して、読み飛ばしてしまった。いつか必ずこの講義も読みたいのだが、古典の密室を網羅したと確信できるのはいつになるのだろう?その時に追記するかも。 密室講義の前の、「"実現可能性"や"リアリティ"を探偵小説に求めるべきではない(意訳)」「魔法のような密室に本当の魔法を期待してガッカリする」 というのには同意。数多の密室は解かれずに密室のままでいいのかもしれない。過去に魔法のような密室トリックを経験したのは本作を含めてまだ片手で数えられるほどだ。この巨匠にこれより凄い不可能犯罪は描けるのだろうか?巨匠にとっても一世一代にはならないのだろうか?10点を付けないのは他作品への期待。楽しみに読んでいきたい。 |
No.41 | 6点 | 雨兎耳須 | |
(2025/06/13 12:26登録) 密室が生まれた状況は二つとも同じだったのが少し残念なのとご都合主義的な感じがしてあまり納得できませんでした。読み込みが浅いのかもしれませんが、鍵がかかっていた理由が分かりませんでした。謎自体は十分魅力的なものだったのでこの点数で。 |
No.40 | 10点 | 愚か者 | |
(2024/09/19 13:54登録) 私の中では密室といえばカー、カーといえば密室なのである。 その中でもベストはこれ。濃厚な不可能興味が全編に横溢している。 トリックは非常に複雑で読み応え十分。 伏線もこんなところまで張っていたのかと判るし、解決も意外性に富んでいる。 10点満点で採点し直しました。5点→10点 |
No.39 | 7点 | okutetsu | |
(2023/08/26 18:31登録) 有名な密室講義でのいきなりの爆弾発言に笑ってしまうが、この時代にメタ要素を入れてるのは素直に感心する。 全体的なトリックは強引やありえないだろって部分はあるけど結構好き。 特に時刻の誤認のさせ方は賛否ありそうだが個人的にはああいうさりげない描写を伏線にするのは大好物である。 ただ密室に関してはあんまりかな。 単純に密室ものがそこまで好きでないこともあるけど、やっぱりネタがわかるとがっかりしちゃうもんだよね。 ただそこらへんも見越して密室講義で言及してるのはさすがと言える。 |
No.38 | 5点 | 虫暮部 | |
(2023/06/09 12:45登録) この作品、〈密室講義〉で徒に知名度が高くなって、そのせいで(まず読まれないと評価が下されないと言う意味で)過大評価されてない? 持ち上げた江戸川乱歩に抗議したい。 作者の目的は、分類の一番目に “さまざまな偶然が重なる例” を挙げることで本作中のトリックの御都合主義をフォローすることだと思う。 とは言え、トリックの構造は面白い。まず拳銃で一発 → 加害者被害者双方が現場から離れようとしてドアを開けたらまた鉢合わせ。これは笑うところだ。血塗れの笑劇である。 時計の件。この錯誤は(作者が)大胆だな~と感嘆した。私は肯定的。 あと、フーダニットが良かった。“意外な犯人” など既に出尽くし読み尽くした心算でいたが、近年はこの程度の軽い捻りで大いに驚いている自分に気付く。一周回って素直になれたか。 一方で、判りづらい記述があちこちに見られ、内容を読み取るのに余計なストレスがかかった。“何を書くか” ではなく “どのように書くか” の重要さが逆説的に表現されている。作者にもっと文才があればな~。 |
No.37 | 10点 | ひとこと | |
(2023/06/05 19:23登録) あらゆるミステリー作品で言及されるこのタイトル 満点以外考えられません |
No.36 | 9点 | ◇・・ | |
(2022/09/10 06:15登録) 本書の魅力は、密室トリックの解明にあるというより、読者を錯覚させるカーの手腕の巧みさにあるといえる。それはまさに芸術と呼ぶにふさわしい情報提示の巧みさであり、また棺やトランシルヴァニアというガジェットの使い方の巧みさである。 |
No.35 | 9点 | 弾十六 | |
(2021/08/09 21:34登録) 1935年出版。フェル博士第6作。私の妄想では1933年出版予定だったジェフ・マール第6作&バンコラン最後の事件(第5作)。早川文庫の新訳で読了。翻訳について、ハドリーのフェルに対するセリフは、もっとタメ口で良いのでは?という感じ以外は文句なし。 さて、冒頭を読んで確信しました。我が妄想を裏付けるような記述が堂々と。 これってJDCの『黄色い部屋』本歌取りだ!完全密室プラス通路での消失トリック、というのは、間違いなく『黄色い部屋』の大ネタを意識している。じゃあ『黄色い部屋』のラストの大ネタ、犯人像は?と考えると、JDCの初期構想では『黄色い部屋』を超えるものを用意していたはず。まさにバンコラン最後の事件が相応しい。 あんまり詳しく書くと多方面でのネタバレになるのでやめておくが、私の妄想の中ではグリモー=バンコラン、ミルズ=ジェフ・マール(これなら証言が確実であることを文章内で保証する必要は無い)で決まり。バンコランの謎の過去が暴かれ、素晴らしい血みどろのフィナーレ… まあこれ以上は私の正気が疑われるので書きません。 実際の本作に関しては、小説中にも出て来るが、非常によく出来たマジックの種明かしを読んでる感じで、やっぱりこれが探偵小説の醍醐味だろう。ある部分、がっかり感もあるが、でも素晴らしい力技だよね(空間をねじ曲げる重力場じみたパワー)。そしてがっかりが当たり前なんだよ、嫌な奴は探偵小説なんか読むな!という後年の自作に対する評価への先回りの言い訳と思われるようなフェル博士のセリフが微笑ましい。(p289の「密室講義」冒頭の堂々たる(異常な)宣言は、40年ほど前に初めて読んだ時、物凄い衝撃を受けたものです…) さて『毒のたわむれ』にちょっと書いたフリードリヒ・ハルム『マルチパンのリーゼ婆さん』(Die Marzipanliese 1856)の紹介(水野光二1990明治大学)だが、そこに書かれてるあらすじ(梗概)を読んだらさらにびっくり!これ絶対JDCが本書のネタにしてる。というわけで是非Webにある論文を読んでいただきたい。登場人物の名前ホルヴァート(Horvath)だけでない類似が見つかるはず。(HalmのほうはHorváth) トリビアは銃に関するものだけをあげておこう。 「銃身の長い三八口径のコルトのリボルバーで、30年前の型(a long - barrelled .38 Colt revolver, of a pattern thirty years out of date)」が出てくる。本作の年代は「2月9日土曜」とあることから1935年。約30年前の38口径コルト製リボルバーならNew Army and Navyと呼ばれた原型が1892年製のものだろう(マイナーモデルチェンジがあって他に1894, 1896, 1901,及び 1903の各モデルがある)。これらは38 Long Colt弾を使用するモデルだが1908年以降はお馴染み38 Special弾対応のThe Colt Army Special(海軍用はNavy Specialと呼ばれたようだが同じもの)が製造されている。本書の銃は後者の38 Special用だと思う。(原文のout of dateを「時代遅れになった」と捉えると前者New ArmyモデルがArmy Specialに切り替わったこととまさに合致するから、New Army説が良いのかなあ。私はp389の説明から38 Special説としたのだが…)(追記: 『ピストル弾薬事典』で確認したら38 Long Colt弾でもp389の話と矛盾しないことがわかったので、Colt New Armyで間違いなし!) (追記2021-8-13) 上記を書いた後で、他の方の書評を読んで、特におっさんさまご指摘の新訳の誤訳が気になりました。おっさんさまが具体的に指摘している箇所とは別に、私も一件、ちょっと大事な部分の誤訳をお知らせしたいと思います。(他にはどんな誤訳があるのだろう…) プロローグ、グリモーVSフレイのシーン。何やってんの?と思った場面です。 p18 [フレイは]手袋をした両手でグリモーのコートの襟を引き下げ(his gloved hands twitching down the collar of his coat)♠️最初のhisと次のhisは同一人物です。フレイは自分の顔をグリモーだけに見せる目的で近寄って、コートの襟元をちょっと下げた、という場面。「(自分の)コート」が正しい翻訳。(Webサイト「黄金の羊毛亭」さんちで教えていただきました) だいたい飲食店でくつろいでるグリモーがコートを着てるわけがないよね。 クリスティ再読さまは「改め」という用語で、本作品の本質をズバリ!流石です。 |
No.34 | 9点 | クリスティ再読 | |
(2018/12/08 22:01登録) 評者も調子に乗って「密室講義」してみようか? 「密室には2通りある。真相に密接に関わりあって、そのストーリーでしか実現できない密室と、どんなストーリーにでも付加できる密室である」なんちゃってね。もちろん本作、「このストーリーでしか実現できない密室」の典型例で大掛かりなものである。大きな真相の逆転が、副次的に不可能現象を作り出した、ということなんだ。これをね、偶然頼りとかいうのは違うと思うよ。マトモな犯人だったら、密室なんて意図して作るもんか。 なので本作、カーも「これしかないストーリーにこれしかない密室」に自信を持ってたのか、本当に余計なことをしていない。事件の記述と、奇術でいえば「改め」(密室講義も「改め」のウチ)だけだ。このストイックさを評者は好感する。おっさんさんが「長い短編」と指摘されているのはまさにその通り。だから本作、できれば一気に読むことをオススメする。 評者は「密室嫌い」を自認するんだけど、それやっぱり、全体と結びつかないような「思いつきの密室」に食傷したせいでもあってね、だからこういう「ストーリー一体型密室」は例外。リアリティがなんだっていうの。「小説自体が仕掛けモノ」の感覚で読んで傑作じゃない? |
No.33 | 10点 | レッドキング | |
(2018/05/21 22:37登録) あえて過大評価しよう。これぞ、トリックたるべきものがあってほしい姿。 追記:あらまほしきトリック。不可能現象「A」と不可能現象「B」が提示され、この二つを誤連動させることで不可能現象「C」を錯視させるようなトリック。 |
No.32 | 6点 | いいちこ | |
(2017/11/06 20:56登録) ご都合主義的なプロットと、登場人物の不可解な行動をもってしてもなお、フィージビリティに疑問が残り、犯行プロセスが複雑すぎるが故に、真相解明時のカタルシスに乏しい。 冒頭に示される不可解な謎に、果敢に挑んだ意欲は買うが、よく考えられたミステリパズルという印象 |
No.31 | 8点 | ねここねこ男爵 | |
(2017/10/19 12:37登録) とてつもなく魅力的な謎の設定と、それに曲がりなりにも解決を与えたので。密室講義なんて飾りです。 |
No.30 | 7点 | yoko07 | |
(2017/05/14 21:37登録) カー作品を最近ちょこちょこ読み始めてます この作品は評判通りトリックに感心させられました カー作品はほんとに犯人が最後まで分からない。 確かに死の間際の断片的な言葉や 部屋に残されたトリックに使われた最も大事な道具が最後まで隠されてるなど、 いくつかミスリードしてるような箇所があるし 現実的じゃない、ありえないトリックという評価もわかります。 私も犯人がここまでの頭脳と体力があるのなら こんな面倒な割にバレたり失敗するリスクの大きい方法普通とらないのでは・・と だれかに殺させてから、うまく口封じするとか、完璧に事故に見せかけて殺害する方が 簡単だし安全と思いましたが でもそこは現実ではなくお話なので、作者は単純なものではなく誰もが想像しない あっと驚くトリックを披露したいのだろうし それが無理がなく可能ならば私は素直に評価したいと思う。 作者も話の中でしつこくそのことは言ってましたね・・・ 全体的に新訳は読みやすかったです。 それにしてもカーの話は、殺された側に同情できないのはいいんですが 復讐する側の人生が可哀想で・・・ それも報われて終わるんではなく、ちょっと悲しい終わり方が多い気がする(まだカー作品は数冊しか読んでないですが) 私はあっと驚くトリックや大どんでん返しと同じくらい 後味がすっきりする話が好きなので、ハッピーエンド?であればもっと評価高かったかな。 |
No.29 | 10点 | nukkam | |
(2016/08/27 08:49登録) (ネタバレなしです) 1935年発表のフェル博士シリーズ第6作で、最高傑作とも評価されることもある本格派推理小説です。これでもかといわんばかりの謎の提示と圧倒的なまでにスケールの大きな謎解きの前にはため息が出るばかりです。確かに問題点も多いです。アンフェアっぽいところもある、ご都合主義もある、証拠として弱い手掛かりもあるなど気になる点がぞろぞろです。これが合わないという読者がいるのも納得です。しかしながらよくぞここまで考えたものだと私は感心しました。完成度の高いミステリーはもちろん大好きですが、本書のように完成度を超越した魅力をたたえた作品も私は大好きです。 |
No.28 | 7点 | sophia | |
(2016/05/11 01:26登録) 早川書房の新訳版を読みましたが、決して読み易くはなかったです。 この作品の最大の瑕疵はやはり時刻に関する部分ですよねえ。誰も気付かなかったというのは苦しい。ここを可とするか不可とするかが評価の分かれ目になりますかね。足跡を残さずに家に入った方法も読者には推理不可能でしょう。フェル博士が被害者の来歴を推理する箇所も論理が飛躍しすぎです。あとこの作家は錯覚のトリックに○を使うのが好きなんでしょうか。 最後に本筋とは関係ないですが、この作品にテッド・ランポールという人が存在する意味はあったんでしょうか。フェル博士やハドリー警視とずっと行動を共にしているようなのに、何かの伏線なのかと思うほど存在感が全くない。 |
No.27 | 8点 | 青い車 | |
(2016/02/13 18:36登録) カーが不可能犯罪ものの可能性を突き詰めた結果生まれた名作。大がかりな奇術的トリックが圧巻で、恥ずかしながら100パーセント理解できたとは言えませんが、とにかく凄かったと覚えています。 本作の一番の問題は不可能性を深めると同時に、犯人を隠蔽することになったあの錯誤です。これはどう考えてもご都合主義な偶然で支えられたもので、怒り出す読者もいるかもしれません。ただ、そこも何でもアリで大いに結構、というカーのサービス精神の表れでもあるのでしょう。僕個人としてはちょっと納得いかないのも確かなので最高点を付けるのは控えました。 |
No.26 | 8点 | ロマン | |
(2015/10/20 18:09登録) 密室殺人は本格推理の醍醐味。ありえないと分かっていても。ある夜、謎の客人の訪問を受けた教授は胸を打ち抜かれ、鍵のかかった部屋に他の人間はいなかった。辺りを覆う雪にも痕跡はない。続いて、やはり不可能と思われる殺人が起こる。犯人はどうやって犯行を行なったのか。主眼が置かれているのはハウダニットだが、被害者を始め登場人物の背景に漂う幻想的な雰囲気が、パズル的興味だけでなく小説として読んでも面白い。”密室講義”は「こんな昔にこんなことを…!」と、ある意味トリック以上に驚愕の一章(笑)。確かに古典であり名作。 |
No.25 | 9点 | 斎藤警部 | |
(2015/06/12 11:10登録) 誠に大事(おおごと)ですなあ、この物語に登場するトリックの全貌は!! 密室トリックとアリバイトリックが不可分に補完し合っておりますし、 犯人の意志と偶然の成り行きも絶妙に組み合っておる、 おまけに被害者と犯人が。。 更に○○○。。 そこにちょっぴりおばかさんな大物理トリックまで彩りを添え(ここまでやっといてトリックの中心じゃないってのも凄い)、全ての背景には相当に暗くて深い過去のおぞましい因縁が。。。。 こりゃ作中の「密室講義」なる戯れ(意外とあっさりで驚き)であらかじめハードルを思いっきり上げておくのもなるほど納得、むしろそれくらいして読者に心と頭の準備をさせておかないと本作のトリックが想像外にこってりがっしりし過ぎでおいそれと一発理解出来なくなってしまう、という事なのではないか? 真相解明に至るまでの物々しくも皮相な物語はさして夢中にさせるものでは無かったが、このただ事でない「何時(いつ)、誰が、何処で、何を、何故、如何様に為していたのか!」をあらためて反芻してみるに、小説の愉悦にやや乏しいにしては破格のこの様な点数を付ける外は無しとする心境に至った。 |
No.24 | 9点 | とみすけ | |
(2015/06/01 20:00登録) 本作は乱歩の影響なのか密室講義や自身をフィクションの人物であると明言したフェル博士の言葉とともに語られることが多いが、私に言わせればそんなことはどうでもいいことである。したがってminiさんの書評はよくぞ言ってくれたと喝采を送りたい。この作品の本質は密室をメイントリックの目くらましとして使っている点にある。これは現実と非現実の差異はあれど火刑法廷にも通ずるものがあり、後に刺青殺人事件において(上手くいったか否かはともかく)高木彬光が主張するところの密室の利用法である。カーといえば密室というのは間違ってはいないし、実際に密室の謎を(しばしば強引に)解明して終わりという作品も少なくないが、本作はそれを逆手に取ったという点で他の多くの密室ものとは一線を画しており、文句なしにカーの代表作の一つであると考える。 |