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ミステリの祭典

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ぴぃちさんの登録情報
平均点:6.50点 書評数:8件

プロフィール| 書評

No.8 6点 家裁調査官 庵原かのん
乃南アサ
(2024/04/30 19:59登録)
自転車を盗んだ少年の心理の危険水域、売春やその斡旋に手を染めていた少女の家庭問題など、かのんが担当する案件の背後には、罪を犯した少年少女が抱えた様々な事情が隠れている。
匂いに敏感という彼女の体質が、事件の手掛かりに辿り着く手助けになる場合もあるし、北九州が舞台ならではのローカル色が盛り込まれていたり、コロナ禍の世相が背景となるなど、読みどころが多い連作集。


No.7 5点 ペッパーズゴースト
伊坂幸太郎
(2024/04/14 20:18登録)
飛沫感染することで他人の未来を観ることが出来る国語教師が、教え子から自作の小説を渡される。
メタ的な仕掛けも絡むトリッキーな作品だが、テンポの良い掛け合いと適度なユーモアで心地よく読める。


No.6 5点 特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来
南原詠
(2024/03/20 20:43登録)
第20回「このミステリーがすごい」大賞・大賞受賞作。
物語はヒロインの未来が液晶テレビの特許技術をめぐる抗争の仲裁に入るところから始まるが、これはプロローグで本編はその次の仕事。人気VTuber天ノ川トリィが使用している撮影システムが使用している専用実施権を侵害しているという警告書が、ある会社から届いたのだ。未来は直ちにその会社と特許権者について調べ始める。
特許権者と専用実施者の狙いは何か。そしてトリィにシステムを売った業者の正体とは。
弁護士の仕事内容から特許とは何か、VTuberとは何かという基本まで、かみ砕いて教えてくれるので安心して読み進めることが出来る。


No.5 8点 さむけ
ロス・マクドナルド
(2024/02/03 21:32登録)
探偵のリュウ・アーチャーが、新婚旅行の初日に失踪した女性を探して様々な人を訪問してまわる。
まず、人物造形がいい。探偵も魅力的だし、出てくる女性もいい。主役から脇役まで、それぞれ個性的な人格を持っていて幅が広い。トリックは予想外のところを突いてくる。ここに穴があると見せかけて、実はその横にもっと大きな穴があるという感じ。結末のどんでん返しも見事で実に衝撃的。


No.4 8点 ベーシックインカム
井上真偽
(2024/01/22 20:02登録)
現在進行形の先端技術が日常生活にまで浸透した近未来を描くSFミステリ短編集。
保育園で実習中のエレナ先生が、園児の気になる言動を得意の言語学に基づいて解き明かす「言の葉の子ら」、VR怪談を見た後に失踪した妻の行方を探るため繰り返しVRに没入する夫「もう一度、君と」など、全5編からなる。
各編に凝らされた趣向はもちろん、巻末に置かれた表題作による全体の締めくくりも見事。


No.3 6点 死者と言葉を交わすなかれ
森川智喜
(2024/01/18 19:39登録)
興信所を経営する彗山小竹と不狼煙さくらは、調査の対象者が急死するという事態に遭遇する。彼女たちが仕掛けていた盗聴器には、対象者が三十年前に死んだ妹らしい人物と会話を交わす模様が録音されていたのである。あり得ない事態に驚いた二人は、真相を探り始める。
怪談風の装いをまとった虚構の世界を描く小説ならではの技巧に驚かされる。結末を予測するのは難しいだろう。


No.2 7点 隠れ家の女
ダン・フェスパーマン
(2024/01/16 14:01登録)
一九七九年、冷戦下のベルリンにおけるCIA女性職員を主人公にした物語と二〇一四年のアメリカで起きた殺人事件をめぐる物語が交互に語られていくという構成である。
ベルリンやパリにおける、さまざまな工作、接触、逃走といった場面の迫力も十分だし、細部もよく描かれており、現代アメリカの探偵行の章にしても、謎が謎を呼ぶうえに意外なひねりがあるなど、一気に読ませる面白さがある。


No.1 7点 ゴリラ裁判の日
須藤古都離
(2024/01/16 13:48登録)
原告ゴリラで被告が人というとんでもないシチュエーション。
モチーフとなったハランベ事件というものが実際にあったことにも驚いた。でも内容はリアリティにとんだ、一気読み必至の人権問題リーガルミステリ。
読後感も最高で、ゴリラのローズに勇気と元気を与えてもらえること間違いなし。

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