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ミステリの祭典

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火蛾

作家 古泉迦十
出版日2000年09月
平均点6.23点
書評数13人

No.13 5点 ぴぃち
(2024/10/21 19:57登録)
イスラム神秘主義という珍しい題材を、ミステリの謎解きに丁寧に組み込んでみせたユニークな作品。
生きて姿を見せる登場人物は、最小限に絞り込まれていて、これで犯人捜しの謎解きが成立するのかと心配になるが、しっかりと成立する離れ業を堪能させてくれる。

No.12 6点 八二一
(2024/04/18 21:36登録)
第十七回メフィスト賞受賞作。イスラム神秘主義の教義が謎解きの骨子と有機的に結びついた神学ミステリで、歴代の同賞受賞作の中でも異彩を放っている。

No.11 7点 zuso
(2022/08/29 22:42登録)
第十七回メフィスト賞を受賞した異色作。蠟燭の炎が揺れるテントで物語られる話は、果たして現実なのか幻想なのか。
殺害方法、動機、そして真犯人など、本格ミステリにおけるロジックが、イスラム教などの宗教観念に支配された世界に従属して展開される。そのさまは実にスリリング。

No.10 8点 じきる
(2021/09/26 04:03登録)
イスラームの世界観ならではの論理を、上手くミステリにまとめ上げた良作です。幻想的な筆致も良かった。

No.9 5点 ぷちレコード
(2020/11/14 20:22登録)
宗教小説ないし、ファンタジーとも見えた物語が論理的に収斂してゆく姿は、本格ミステリならではのカタルシスを堪能させてくれ、二人の語り手を配した二重構造も過不足なく機能している。
ただ、ミステリとしての仕掛けが必ずしもテーマに即しているとは思えなかった。

No.8 5点 蟷螂の斧
(2019/09/22 15:48登録)
幻想小説として6点、ミステリー小説としては4点といった感じです。宗教のことは全く分かりません。この小説の肝となる教義が本当に存在するのかが気になりました。まあ、フィクションとは思いつつ・・・。

No.7 6点 群衆の人
(2017/03/19 18:00登録)
※ややネタバレ

ノベルス版で読了。講談社ノベルスとは思えない美麗な装丁が、無装飾な舞台設定(とにかく何もない。家も物も人々の生活も…)を安っぽく見せないことに貢献している。作品と作者の希少価値を高めてもいる。本棚のどこに入れても異彩を放つ独特の一冊。内容的にも宗教・哲学の入門書を読むようで、あるいはヒルトンやブースビーの秘境物を読むようで、非常に引き込まれる。ミステリとしての展開も刺激に満ちており、世の密室ミステリをあざけるような箇所では期待がマックスに高まった。ただそのあとが普通と言うか想定の範囲内と言うか。登場人物が少ないので仕方がないのだが、主人公一人の気付きや告白に終わっている感じでどうにも物足りない。あと、ネタバレになるので詳しくは書けないのだけれど、あれだけ対話をくり返し、べらべらしゃべりまくり仄めかしまくって気付かせたのでは○○に反するのではないか。とはいえ特殊な雰囲気を貫いた筆力は買う。大好き、と言う人がいるのもわかる。ぜひ一読はしてほしい作品。kindle版あり。

No.6 8点 tider-tiger
(2017/03/14 23:57登録)
ヒジュラ歴六世紀(西暦千二百年頃)ムスリム聖者の伝記録を編纂すべく取材旅行に明け暮れていたファリードは謎多きとある教派の関係者への取材を取り付ける。
その男はアリーという名で、アリーという男について語りはじめる。

イスラム世界でミステリをやりましたと、そういう話です。
登場人物はファリード以外はすべてムスリムの修行僧。
こういうわけのわからないものが飛び出してくるのがメフィスト賞の面白いところ。
容疑者が少なくて犯行もさほど複雑ではなさそうなのに、蝋燭の灯りだけで鍾乳洞を歩かされているような気分を味わえる。
ミステリでいうところの尋問シーンが宗教問答になっていたりして、登場人物たちにとって殺人事件は些細な出来事であるようなのです。ところが、だんだんと殺人事件は極めて重要な意味をもつことがわかってくる。些細だけど重要、いや、これが矛盾ではないのです。
突飛な話のようでいて、宗教問答から事件の全容が明らかになってくる構成は実は非常に論理的。
宗教とミステリの美しい融合、いや、もしかすると作者の狙いは宗教をミステリの枠で語ることだったのかもしれない。だが、ミステリとしても、特にホワイダニットに関しては傑作認定したい。
タイトル「火蛾」のイメージも美しい、おまけで装丁もいい。
宗教に興味のない方にはお薦めしません。

No.5 6点 メルカトル
(2014/04/12 22:11登録)
再読です。
難解な言語、イスラム世界の宗教観、貧しい修行者の連続殺人、これは激しく読者を選ぶ作品である。また、これほど書評が難しいものも珍しいのではないだろうか。とても気軽に読めるミステリではない、本作を読もうとする者はかなりの覚悟が必要になってくるだろう。
とは言うものの、文体はむしろ明快であり、なんら引っ掛かるような表現はないと思う。ただ、見たことも聞いたこともない単語が散見されるのみである。これがちょっとだけ厄介だが。
まあいずれにしても、これまで誰も読んだことのない類の超異色作ということが言えるのではないだろうか。謎も不可思議だが、謎解きがまた圧巻である。最終章も余韻を残しながら、良い雰囲気で締めくくられている。

No.4 2点 mohicant
(2013/08/05 23:07登録)
 評価の高く名作と言われている作品だから、ネットで注文してまで手に入れ読んだけど、宗教に興味がない自分には理解できないことが多すぎて全然楽しめなかった。内容がマニアックすぎて万人受けはしないと思います。

No.3 8点 テレキャス
(2009/07/26 18:01登録)
参った。他に類を見ない結末にただ呆然とするばかり。
最初はイスラム教やゾロアスター教の難解な語句達が混沌に誘い私を辟易とさせたがその妖しげな空気が肺を満たし始めた頃には抜け出せなくなっていた。
そして難解な宗教観が伏線と言う刃になり突如襲い掛かってくる。
メフィスト賞を取ってはいるが埋もれてしまった秀作だと言っていいだろう。
たった一作を残し音沙汰を無くした古泉迦十の帰還を願わずにいられない。

No.2 7点 abc1
(2008/09/24 13:23登録)
ミステリとしての驚きはあまりなかったのですが、独特な雰囲気にやられました。この人の別の作品も読んでみたいです。

No.1 8点 深夜
(2008/04/22 23:31登録)
イスラムを舞台にしたミステリー。どんなに辺鄙な設定の小説もこの設定には適うまい。斬新だ。宗教的背景がホワイに当たるので、ミステリとしては評価不能だが、この設定なら当然のもののような気がする。イスラムに興味があったので楽しめた。

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