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ミステリの祭典

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少女キネマ
或は暴想王と屋根裏姫の物語

作家 一肇
出版日2014年02月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 まさむね
(2018/07/01 19:05登録)
 どのように分類すればよいのだろう。全編にわたり完全に青春小説であって、一部ミステリー要素も含むってところか。
 作者の情熱を感じさせつつ語り口は軽妙で、癖のある登場人物たちも含めて、楽しませてはもらいました。青春小説として様々な要素を混ぜ込んだ姿勢も嫌いではない。
 しかし、読中に何とも言えない暑苦しさと青臭さを感じたことも事実。例えば、「自分探しをするのは結構だけど、迷惑かけちゃだめだよね」とか、とある真相に対して「え?それだけのこと?」などと感じてしまったりね。嗚呼、私にとって青春はどんどん遠いものになっているのだなぁ、何とも面倒な中年になったものだなぁ…と、少し悲しくなったりして。

No.1 8点 メルカトル
(2017/10/05 22:13登録)
どん兵衛消失事件に端を発する、奇妙でロマンチックなボーイミーツガールの物語。大学生の主人公十倉と女子高生さちの淡く、静かで激しいストーリーが始まります。二人きりで食べるお弁当、十倉が自力で再生させたベスパで二人乗りの大冒険など読みどころがぎっしり詰まっております。
しかし、主題はそちらではなく、あくまでタイトルにあるように自主製作映画『少女キネマ』にまつわる男たちの丁々発止のやり取りや奮闘を描くものです。そこにヒロインさちがどのように絡んでくるのかと興味は尽きないところです。最初はもっと十倉とさちのふれ合いが中心に描かれるものと思っていましたが、要所にさちが登場するだけなので読んでいる身としてはやきもきさせられます。が、これも作者の計算通りということなのでしょう。
では肝心のミステリはどうなっているのかというと、これが最後の最後意外な手法で種明かしされる趣向となっています。果たしてこれがミステリなのか、いや、一つのミステリと言えるのではないか、筆者は悩み煩悶します。しかし、これだけの傑作を読みながら、そんな些細なことはどうでもいいんじゃないかとすら思わせる底力を有している作品に違いはないのです。
最後に一言言わせてもらえるなら、およそ作家には何でもないようなことを実に面白おかしく書ける人とそうでない人がいると思いますが、この作者は明らかに前者だということです。一作しか読んでいませんが、ほかの作品でもそうであってほしいと願っています。

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