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ミステリの祭典

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三百年の謎匣
森江春策シリーズ

作家 芦辺拓
出版日2005年04月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 6点 nukkam
(2020/10/06 23:07登録)
(ネタバレなしです) 作者自身が「長編なのか短編集なのか自分でも考えるたびに違ってくる」という2005年発表のユニークな本格派推理小説です。プロローグに相当する章で袋小路の道で周囲に犯人の足跡が(そして被害者の足跡も)見つからない状態で発見された死体という、ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」(1935年)に出てくるカリオストロ街の殺人を連想させる魅力的な謎で始まりますがこの謎解きは中断され、その後に6つの手記が続きます。この手記は時代が18世紀前半から20世紀前半までとばらばら、舞台もアジア、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカとばらばらの物語です。一応は短編物語として完結しますが解けない謎が残っており、それらは最終章で森江春策によって殺人事件の謎と共に解決されるのです。つまり手記だけでは真の意味での完成品でないため、個人的には本書はシリーズ第11長編と評価したいと思います。歴史と異国情緒を感じさせる手記に力が入っていますが、ページ数の制約のためか描写や説明が駆け足気味で焦点ボケをしばしば感じてしまうのが惜しまれます。トリックにもひどいと思わせるのがありますし。とはいえ大胆な構成に挑戦した作者の意欲は称賛に値すると思います。⇒【後記】その後、「千一夜の館の殺人」(2006年)の「好事家のためのノート」で同書がシリーズ長編としては(シリーズ第10作の)「グラン・ギニョール城」(2001年)以来と紹介されているのを知りました。つまり本書はシリーズ長編第11作でなくシリーズ第3短編集ということになります。いい加減な感想であったことをお詫びします。

No.2 7点 makomako
(2014/01/31 20:46登録)
 一つの物語の中に連作と歴史を取り入れた贅沢な構造を持つ意欲作だと思います。それぞれの話が興味深くしかも最後にみごとに終結した結末となる、そういった点では素晴らしい作品だと思います。最後に森江俊作が謎を解き明かすのですが、それはもう凄い博覧強記で、いくらなんでもここまで頭に入っている人はいないのでは。
 解決まで余分でいやみな話がだらだらと述べられているのもどうかと思いますが、ここまで簡略された解決編を見せられるとどうも問題の回答を盗み読みしているような感覚にとらわれてしまった。もうすこし解決に至るまでの過程が書かれていたほうが良かった。

No.1 6点 江守森江
(2009/05/23 18:32登録)
森江春策シリーズ
最後の解釈以外は個別の短編としても楽しめる二重構造だが・・・
もっと森江君に活躍してほしい。

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