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ミステリの祭典

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栞と噓の季節
図書委員シリーズ

作家 米澤穂信
出版日2022年11月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 パメル
(2024/01/14 06:54登録)
高校で図書委員を務める堀川次郎と松倉詩門を主人公にした図書委員シリーズ第二作。
返却本に挟まっていた押し花をラミネート加工した栞。その花は猛毒のトリカブトだった。堀川と松倉は、持ち主を探し始める。校舎裏でトリカブトが植えられていた痕跡を発見し、その場に瀬野という女生徒がいた。翌日、栞は自分のものだと告げた瀬野は、二人から栞を奪い燃やしてしまう。
人は常に他者の視線にさらされている。他者と一体化することで、自分の「個」としての特性を覆い隠し、その場の色に染まった自分に安心する。人の目が気になりだす思春期以降に顕著な行動様式だ。本作は、その成長過程にいる若者たちを鮮やかに描き出している。
堀川と松倉と瀬野の三人は、それぞれの理由で事件の真相と謎を追っていくが、瀬野は大小の嘘をとり混ぜたりするため、事の究明は一筋縄ではいかない。堀川と松倉の二人もまた、自分が拠って立つ規範や信条から、嘘を交え事実の隠蔽を図らなければならない。
嘘をつくというのは本質的には悪とみなされる行為だ。しかし、なぜ嘘をつかなければならなかったのかということを探ると、そこには嘘をついた当人しか理解し得ぬ心の動きがある。嘘を通して生まれる新たな人間関係が素敵な青春ミステリ。

No.3 7点 sophia
(2023/05/16 23:58登録)
ネタバレあり

まず、前作と同じく連作短編集だと思って読み始めたら長編で不意を突かれました(笑)タイトルに偽りなく主要人物がみんな嘘を抱えており、その嘘が暴かれる度に真相に近付いていくという趣向がよかったです。ラストに明かされる配り手捜しの真の動機にも唸らされました。事件のスケールが大きくなった割に結局は身近な人間ばかりで固まっているところがご都合主義と言えばそうなのですけど。

No.2 5点 虫暮部
(2023/04/01 14:19登録)
 最低限の現実感を保持しようとして小さくまとまってしまった。それこそが狙いだと言われたらまぁ頷くしかない。リミッターを一つ二つ解除すれば小市民シリーズくらいにはなるだろうに。
 小ネタは効いている。on the road は “ドサ回り” じゃ。 

No.1 5点 文生
(2022/11/25 05:39登録)
図書委員シリーズ第2弾
ほろ苦い味の青春ミステリーとしてよくできているとは思うものの、古典部シリーズや小市民シリーズに比べると、キャラクター小説として突き抜けておらず、かといって『儚い羊たちの祝宴』などと肩を並べるほどのダークさもなくて中途半端な印象を受けました。
また、伏線回収などはさすがの上手さですが、ミステリー的にこれといった仕掛けもなく、青春ドラマとして琴線に触れるものもありませんでした。
良作の風格を感じさせる一方で、個人的には響かなかった作品です。

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