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ミステリの祭典

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列車消失
列車シリーズ

作家 阿井渉介
出版日1990年09月
平均点5.44点
書評数9人

No.9 4点 虫暮部
(2023/02/17 13:35登録)
 阿呆かッ! 読了後まずそんな言葉が私の口を突いて出たのだった。
 無駄に外連味の強い演出と、泥臭い捜査行や民営化問題との食い合わせの悪さよ。トリックには笑うべきか呆れるべきか(特に “歩く胴体”)。共犯者多過ぎ。誘拐に比べて殺人事件が軽視されている印象もある。
 これ、ラノベ系の愉快犯として書けば良かったのでは。

 第二章の7。列車が十三分遅れで富山に到着。
 犯人:福井までに時刻表通りの運行を回復せよ。
 刑事:福井までに、しかけてくる気だ。
 これはおかしい。この指示では、福井までのどの時点で回復するか判らない。ギリギリで追い付いても指示に反したことにはならない。
 犯人の作戦に時刻表通りの運行が必須なら、“福井で回復した後、しかけてくる” と予測すべき。と言うかこの場合は犯人の指示がおかしくて、たとえば “金沢までに” とすべきだった。

No.8 6点 測量ボ-イ
(2017/03/31 19:56登録)
謎の設定は魅力的なんですけどね・・解決がやや残念。
トリックそのものにも否定的な方が多い中、僕にとっては許容
範囲でした。採点は
 7点(基礎点)
-1点(人の書き分けが良くない。これでは登場人物表がないと正直判らない)

No.7 3点 いいちこ
(2016/03/10 15:50登録)
物理トリック系のバカミスは嗜好にフィットしているのだが、本作は中途半端なプロット、拙劣な叙述、無理筋極まるトリック等、あらゆる面で強く不満を残す仕上がり。
冒頭に提示される謎の不可解性は申し分ないのだが、一旦フーダニットに展開したところ、作品中盤でお粗末にも声で真犯人が特定されてしまう。
その後、犯行の概要を特定するため、当該真犯人を追及するのではなく、さまざまな周辺の人物に捜査の手が及ぶ。
ところが、叙述が全くこなれておらず、登場人物の書き分けが不徹底であるため、読者を混乱に陥れている。
肝心のハウダニットについては、検視官や鑑識が信じ難いほど無能で、かつ被害者全員が昏睡でもしていなければ、まず露見は避けられないというデタラメなトリックを乱発。
敵前逃亡することなく、1個の作品として完結させている点を最低限評価

No.6 5点 ボナンザ
(2014/04/09 15:45登録)
だれか気付よと突っ込んではいけない。
愛すべき馬鹿ミス。

No.5 5点 nukkam
(2011/02/26 01:57登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表列車シリーズ第5作の本格派推理小説で、島田荘司の「奇想、天を動かす」(1989年)に触発されて書かれただけあって謎の凄みでは勝るとも劣らない作品です。走行中の列車から車両1台が抜き取られた?列車に飛び込んだばらばら死体の胴体だけがはるか離れた場所に出現して列車を再停止させた?列車の中に運び込まれた胴体が今度は大勢の目撃者の前を歩きだす?(手足がないので「歩く」という表現には微妙な違和感もありますが)、等々。とはいえ犯人当てとして楽しめるプロットではない上にトリックについても不満点が多く、竜頭蛇尾の感が強く残ってしまいましたが。人物描写も個性がなく、せっかくの複雑な動機が読者の心に訴える力が弱いのも惜しいです。

No.4 6点 monya
(2011/01/30 00:46登録)
序盤の謎の提出は申し分が無いです。
「列車が消えてしまった!」という不可能趣味。
第一章はひたすら、それについて語られるわけですが、仮説はどれも「無理だろう」と消えていってしまう。そうしているうちに第二章……首と手足の無い胴体のみが列車内を歩き回る……
もう、これだけでたまらない
どうしようもないくらい魅力的な謎ですし、魅力的な演出です

しかし、評価が6点なのは解決が……という感じだからで。
うーん、とちょっと困っちゃうような解決なんですよねえ
この手の不可能犯罪とかは、謎の魅力と、解決の落差が激しいものなんですが、これはちょっと激しすぎる感じ。
島荘の筆力があれば、もっと評価高かったかも

No.3 6点 まさむね
(2010/05/08 22:05登録)
「列車消失モノ」結構好きなんですよね~。
終着駅に着いてみたら,車両が乗客もろとも1両消えていた!
犯人は,身代金の受け渡しに寝台特急を指定!
その寝台特急の中で…
いやぁ,弱いんですよね~。この設定ってば!
(以上,中盤までの感想。以下,読後の感想。)
トリックの評価は,なんといいますか「微妙…」。
「本格」好きの方からは厳しい意見もありそう。
社会派テーマも,好き嫌いありそう。(嵌らないひとはとことん嵌らないと思う。)
舞台設定に関する個人的な「弱いんですよね~」があったからこその,この点数ということでご理解ください。

No.2 7点 E-BANKER
(2010/01/31 22:00登録)
牛深警部の列車シリーズ。
「不可能状況設定」がウリのシリーズで、本作は、7両編成の列車の6号車だけの消失&胴体だけの死体が列車内を動く・・・などなど趣向満載です。
トリックの1つは、島田荘司のある名作の転用ですが(阿井氏自身がそう書いています)、列車の一部だけを消失させる”仕掛け”は着想がなかなか面白いです。
(ホームズ物の有名なトリックも捨てトリックで出てきますが・・・)
氏は刑事ドラマの脚本を多く手掛けた経歴のためか、犯人像や動機、事件の背景といった部分にも深みを持たせ、独特の「重い作風」に仕上げています。
本作も、まさに氏の特徴を色濃く出した作品でしょう。

No.1 7点 touko
(2009/03/28 14:25登録)
特捜最前線などの刑事ドラマの脚本家が、島田荘司の「奇想、天を動かす」等の著書に啓発されて書いた鉄道ミステリだそうです。
鉄道ミステリ苦手な私は敬遠したいところだったのですが、表紙裏のなんともワクワクさせる宣伝文句につられて、つい読んでみました。
宣伝通り、奇想と大掛かりなトリックが面白かったです♪
重箱の隅をつつくような時刻表ものではないので、マニアックな部分も思いがけず楽しんで読めました。
鉄道の詳しいところはさっぱりな私にも、視覚的に立ち上がってくるような文章は、あっさりしていてテンポが速く、やはりなんかテレビドラマの台本ぽい感じも。

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