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ミステリの祭典

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ノックス・マシン

作家 法月綸太郎
出版日2013年03月
平均点5.42点
書評数12人

No.12 7点 mediocrity
(2021/01/10 06:48登録)
薄い本ですが、書き上げるのに相当の時間を要したと推測します。
名前くらいしか知らない作家が多かったですけど、別に問題なく楽しめました。まああまり理解できてないでしょうけど。

No.11 7点 斎藤警部
(2020/12/11 06:57登録)
ノックス・マシン  
羊頭狗肉にも程があるだろう、って(笑)。何をそんなに大袈裟な。。。。何しろ、このエンディングですぜ!? ノックス十戒のあの条項に着目したのは面白いし、そこから波動関数のソリトン波のと大風呂敷に発展する奇想飛ばしぶりは痛快だ。虚数的存在が特異点で使命を果たしに時を飛ぶとか。。いかんせん、萎みまくりの収束が。。

引き立て役倶楽部の陰謀
とりあえず大笑い。小ネタ仕込みのタペストリーで大ネタを構築。

バベルの牢獄
凄まじくエグいSF奇想。意識のステルス化ですって(こりゃ効いた!)。。。。電子書籍泣かせの一篇(って言ってられるのもあとどれだけか)。

論理蒸発―――ノックス・マシン2
「No Chinamanは複素数次元に拡張されたノックス場において、虚数iの身体を与えられている。しかしBAPアバターでは、どれだけ脳/意識データのシンクロ精度を上げても、実数の範囲にしか手が届かない。」そうなのか。。
真面目な顔してだんだんバカになっていく面白さw 何というか、戦隊ヒーローものの無茶苦茶な設定の暴走みたいな(キュウレンジャー思い出す)。だが最後はちょっと泣けた。

虫暮部さんのゲロッパには大いに賛同です。

No.10 5点 名探偵ジャパン
(2016/07/30 15:27登録)
「どうした? 法月」

 法月綸太郎といえば、「悩めるミステリ作家」というキャッチコピーでおなじみの(?)本格の権化のような人、というイメージだったのですが、悩みすぎておかしくなってしまったのでしょうか?
などと失礼な物言いはさておき、作者が楽しんで書かれた作品であるということは読んでいて分かります。好きでもなければ、こんなわけの分からないものを書くものですか、いや、失礼。

お遊びはお遊びでも、法月綸太郎クラスの賢才の稚気は、やはりひと味違うというか、「バベルの牢獄」なんか、「こんなことのために……」と読後腰が砕けました。
monyaさんが書かれた通り、本格ミステリとSF(しかも、SFがきちんと「サイエンス・フィクション」していた古典のガチSF)双方に余程の理解がないと、雰囲気で面白がることは出来ても、作者と同じ土俵で真に楽しむことは出来ないでしょう。
本格ミステリはともかく、SFは学生時代片足だけ突っ込んですぐに引き抜いた私には、とても理解の及ばない領域でした。
「引き立て役倶楽部の陰謀」は抜群に楽しめましたが、他の作品(のSF要素)が足を引っ張り、この点数となりました。

いや、しかし、「ノックス・マシン」も、「論理蒸発」も、もっと分かりやすく書くことは出来たはずですよ。「ノックスの十戒に第五項がある理由」「クイーンの『シャム双子』にのみ『挑戦』がない理由」作者の筆力であれば、ミステリを知らない読者にも、噛んで含めるようにおもしろおかしく解説しながら、ユーモア作品に仕上げることは出来たはず。
「だが、断る」ですよ。

分かってもらえなければそれでいい。「遊び」とは、他人でなく自分を納得させるためのものですから。
E-BANKERさんの書かれたように、これを出版させる版元はエライですよ。

法月もこれで気が済んだでしょう。すっきりとしたところで、また傑作本格ミステリを生み出してくれることに期待します。

No.9 5点 E-BANKER
(2016/06/04 20:07登録)
2013年度の「このミス」第一位にも輝いた短篇集。
本格ミステリーをこよなく愛する(?)作者が書いたSF寄りの四篇(ということでいいのか?)

①「ノックス・マシン」=ノックスとは言うまでもなく、「ノックスの十戒」で有名なロナルド・A・ノックスなのだが、十戒の五番目『探偵小説には、中国人を登場させてはならない』とタイムトラベルを組み合わせた(?)サイケデリックなプロット。まっ、作者ほどのミステリー狂にしかできないお遊び・・・というところ。
②「引き立て役倶楽部の陰謀」=ワトスン、ヘイスティングス、アーチー、ヴァン・ダインなど、お馴染みの引き立て役が一堂に会し、クリスティの「そして誰もいなくなった」に異議を唱える・・・という遊び心満載の一編。これも実にマニア向けというか、何ていうか・・・。読者を選ぶよなぁ・・・
③「バベルの牢獄」=これは完全にSFなのだが・・・で、いったい何が言いたいのか?っていう感想にしかならない。でもこういう感想がそもそもおかしいのだろうな。
④「論理蒸発-ノックス・マシン2」=①の続編。今度はE.クイーン国名シリーズ一の問題作「シャム双生児の謎」に『読者への挑戦』が挿入されていなかったこととタイムトラベルを組み合わせた(?)サイケデリックなプロット。これもまた作者のクイーン愛が爆発!とでも言いたくなる。

以上4編。
で、結局何が言いたいの?
以上書評終了!

(でもいいのだけど)何がなんだか分からないうちに読了したわけなのだが・・・
これを「このミス」一位に押した方は本当にこれを理解したのだろうか?
「遊び心満載」なのはよく分かるんだけど・・・

作者のノン・シリーズ作品集って割とこういう実験的なヤツが目につくよね・・・
こういう作品を出版させる版元もまずまずエライのかもしれない。
コレはこれでよしとしよう!

No.8 5点 青い車
(2016/04/09 21:52登録)
 正統な本格ミステリーを書くことに神経が使われている印象だった『生首』や『キング』と対照的に、この短篇集はマニアの遊び心の極みとでもいえるような書きっぷりです。ミステリーとSF、両方好きな人にのみ100パーセント楽しめるという内容はちょっと難があります。クイーンやクリスティー好きにはたまらない部分もあるものの、正直やはり作者に求めたいのはストレートな謎解き小説なので、個人的には手放しには歓迎できない感じですね。
以下、各話の感想です。

①『ノックス・マシン』 有名なノックスの十戒をモチーフに、タイムマシンを絡めたSF小説を仕立てた奇想作品。気の利いたオチも決まっています。
②『引き立て役俱楽部の陰謀』 有名な名探偵の助手たちが勢ぞろいした非常に楽しい一篇です(僕はワトスン、ヘイスティングズ、ヴァン・ダインぐらいしか知りませんでしたが)。アガサの失踪事件を『アクロイド殺し』のフェア、アンフェア問題とリンクさせたアイディアもいいです。
③『バベルの牢獄』 これはかなりSF寄りに傾いた作品。難解なワードがあまりに続出するため、こればかりは正しい評価はできません。ただ、トリックは初めて体験したパターンでした。
④『論理蒸発 ノックス・マシン2』 クイーンの国名シリーズ『シャム双子の謎』の、「消えた読者への挑戦」をモチーフにした作品。本格好きにはしびれる題材ですが、③同様かなり難解なのでちゃんと楽しめた自信はありません。

No.7 4点 文生
(2015/10/15 13:45登録)
やはり、ミステリーファンが楽しめるのは「引き立て役倶楽部の陰謀」だけのようですね。私もそれなりにSF小説を読んでいるつもりだったのですが、「バベルの牢獄」は無理でした。

今となってはこのミス1位だったのが不思議な作品です。

No.6 5点 まさむね
(2015/01/02 22:38登録)
 全体的に小難しいなぁ。正月に酒飲みながら読むべき作品ではなかったなぁ…。怒られちゃうかもしれないけど,すごく単純化して紹介するとすれば,海外古典作品をSF的に表現した「楽屋ネタ」ってことで括れるのではないかなぁ…と。
 正直,「ノックス・マシン」&「論理蒸発」は,私には面倒すぎて厳しい。「バベルの牢獄」も面倒なのだけれども,(短くてストレスも少なかったし)結末にはニヤリとしたのでまぁいいかな。「引き立て役倶楽部の陰謀」はパロディとして楽しめたので,総合的には,まぁこのあたりの採点になるのかなぁ。

No.5 6点 HORNET
(2014/04/27 07:17登録)
 本格黄金期の作家や、作品に出てくる人物が多く登場し、ミステリとしての楽しみよりも、ミステリファンとして面白さを感じられるSF作品。特に海外古典ミステリについての知識があるかどうかで、面白さを感じるかどうかが分かれてくるので、万人受けする作品ではなく、むしろ内輪ネタのような感じ。
 アーサー・ヘイスティングズ大尉ら、往年の名探偵の助手として名を馳せた面々が登場する「引き立て役倶楽部」は面白かった。「バベルの牢獄」は仕掛けのみにこだわった短編で、書かれているSF的論理を理解しようなどとは思わず読み流していかないと苦痛なだけ。それは「ノックス・マシン」「論理蒸発」にも同じことが言えて、とにかくよく分からない架空の科学の話は読み飛ばしていくことが作品を楽しむコツ。

No.4 3点 白い風
(2014/02/26 12:20登録)
ミステリと云うより近未来を題材にしたSFですね。
また1920年代のミステリ作品も出てきます。
だから過去の作品に対する知識とタイムマシンに関する物理的知識も沢山出てきました。
正直、疲れました・・・。
純粋に法月さんの作品が読みたかったですね。

No.3 6点 monya
(2013/08/22 19:11登録)
ミステリファンにはSF的論理がよく分からない。
SFファンにはミステリ的ネタがよく分からない。
真価が分かるのはSFとミステリ両方のファンだけというとてつもなく狭いターゲット層の短編集w
SFファンとミステリファンが不可分だった一昔前ならともかく、今の時代は両方のファンが完全に別々になっちゃった感じがするから、キツイんじゃないかなあ、これw
私も、SFは有名どころしか読んでないのでついていけないところが多々ありました。
no Chinaman、引き立て役クラブ、某倉坂氏風バカミスSF、燃えるシャム双子と、一つ一つの話に濃いミステリネタが含まれているのでその辺りで十分に楽しめましたが。
悩める作家だった法月氏も、とうとう後期クイーンをネタにできるようになったかと感慨深い思いで読了しましたw

No.2 7点 虫暮部
(2013/05/17 10:40登録)
全然ミステリではないがミステリ読みにこそ真価が判るSF作品集、という法月綸太郎らしい遊びである。中でも「バベルの牢獄」は神林長平のパロディみたいで楽しい。ところで表題はどうしても「セックス・マシン」に見えてしまうのだ。ゲロッパ!!

No.1 5点 kanamori
(2013/04/14 11:22登録)
海外古典探偵小説に関する有名なネタを主題にしたSF?短編集。

「ノックス・マシン」とその続編風の「論理蒸発」は、”ノックスの十戒”に中国人ルールがあるのはなぜか?、”シャム双子の謎”に読者への挑戦が挿入されていない理由は?といったネタを、双方向タイムトラベルなどのSFガジェットを駆使して解き明かす奇想譚ですが、ハードSFっぽい論理展開がミステリ読みにはついていくのが少々きつい。
「引き立て役倶楽部の陰謀」は、ホームズ=ワトソン形式の古典探偵小説の伝統を守るために、有名なワトソン役たちが集まって、”危険思想”の持ち主であるアガサ・クリステイを抹殺しようと協議する話で、クラシック・ミステリの薀蓄が満載なメタ&パロディ趣向が楽しい。たしかに彼らにとって「アクロイド殺し」なんかを書かれたらたまらないだろうね。

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