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ミステリの祭典

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遠きに目ありて

作家 天藤真
出版日1981年07月
平均点6.47点
書評数15人

No.15 9点 青い車
(2018/11/23 18:43登録)
 『大誘拐』に次ぐ、天藤真のもう一つの代表作。単純に完成度のみで見るならば第一話がナンバーワンですが、それ以上に最終話の幕引きの美しさが特筆ものでは?どんでん返し的な大オチではなく、こういう良い余韻を残す短編集が最近少ない気がします。

No.14 6点 虫暮部
(2018/07/24 12:12登録)
 非常に魅力的なキャラクターを擁する連作なので、心情的にはもっと高く評価したいのだが、ミステリとしては第一話(手掛かりが面白く、またそういう状況が生じてしまった流れに説得力がある)が頂点で、以降は少々ギクシャクしてしまったのが残念。各犯人がそういうトリックを弄した犯行方法を選ぶ理由が乏しい気がする。もっと外連味のあるストーリーならトリックも生きるが、それだとキャラクターに合わない。難しいものだ。

No.13 5点 VOLKS
(2018/07/03 19:59登録)
短編集の割には軽く読めない、というか、関係者が多かったり、こみいっている設定だったりで、それなりに頭を使いました(笑)
事件はどれも地味なのでインパクトには欠ける読み物ですが、丁寧に書かれているので好感はありました。

No.12 6点 斎藤警部
(2015/12/02 06:50登録)
脳性麻痺の少年が探偵役を務める、設定自体にちょっと社会派の風が吹く連作短篇集。。と来れば期待も高まったわけですが(何も「或る『小倉日記』伝」の重厚さを求めちゃいませんが)、最初の二話「多すぎる証人」「宙を飛ぶ死」の穏やかで誠実なムードに不似合いな、予想の斜め上から真下に沈む感じの、バカっぽい大味トリックばかりアンバランスに目立つのは何とも味気ない。。まさかの肩透かし。。。 と思いきや‘信ちゃん’が車椅子で現場訪問するようになる第三話から急に良くなった! 「出口のない街」の、熱い心理トリックに異様な裏切りの真犯人像! 「見えない白い手」ではフレンチ流儀のトリッキーな心理攻勢劇!心理面での意外性が黒光りする暗黒反転には掴まれた。。。 最後の第五話「完全な不在」、不可能興味ならぬ不可思議興味が横溢、そこへ来ておなじみの「××の××(と××)」トリックにまんまとやられるとは。。。!! ちょっと意味の通りにくい文が散見されるのは気になったが、許せます。

No.11 5点 いいちこ
(2015/09/25 20:36登録)
ほのぼのとした独特の読後感には好感。
一定水準に達しているものの、安楽椅子探偵モノでもあり、豪快・トリッキーな真相・トリックとならざるを得ず、ミステリとしては大味さ・弱さを感じる

No.10 8点 ボナンザ
(2014/04/08 01:11登録)
これこそ作者の最高傑作ではあるまいか。
何作かはタイトルでオチが読める気もするが・・・。

No.9 6点
(2014/02/24 11:40登録)
最初の「多すぎる証人」を読んで思い浮かんだのは、モルグ街の殺人もそうですが、どちらかといえばCの名作です。この種のヴァリエーション作品はいまなら豊富にあります。証人絡みということなら先日読んだバルカン超特急も似ています。本作はタイトルだけでなんとなく想像できるのが難点。でも、最初のこの作品を読んで、いい感じの連作なんだろうなとの予感がしました。結果的にこの作品がいちばんよかった。

以下、「宙を飛ぶ死」「出口のない街」はアリバイ物。「出口のない街」は特殊な密室の謎が付いています。
「見えない白い手」「完全な不在」はなぜだか中編。はたして「完全な不在」を中編にする必要があったのだろうか、ポイントはただ1つなのに。浮浪者が登場した時点で一件落着という感じがしました。

一見すると安楽椅子系パズラー、平たく云えばたんなる推理ゲーム。でも、最後に推理を開示する探偵役の信一少年にくらべて、警部や警察の出番がはるかに多く、警察が中心の捜査小説といった面もあって、複数の要素を楽しむことができます。
物足りなさがあるも、噛みしめるように読んで、ほのぼのとした優しさが感じられる良品集と云えるのもたしかです。

No.8 6点 itokin
(2013/07/06 15:35登録)
短編集なのでさらっと読みたいんだが、謎が込み入っていてわかりずらかった。天童流のユーモアもいまいちで物足りない。

No.7 6点 E-BANKER
(2011/04/24 19:50登録)
脳性麻痺を患う信一少年を探偵役とした連作短編集。
成城署の真名部警部が持ち込む事件を信一少年が解き明かすという完全なアームチェア・ディテクティブものです。
①「多すぎる証人」=ポーの歴史的名作「モルグ街の怪事件」を思い起こさせるプロット。多くの証人がいろいろな証言をしているが、一体真犯人はどういう人物なのか? 
②「宙を飛ぶ死」=奇術でいう「人間大砲」の仕掛けをモチーフにした作品。東京にいたはずの被害者が、なぜか諏訪で死体となって発見される? ただ、関係者がゴチャゴチャしていてやや分かりにくい。
③「出口のない街」=1つの街を舞台にして、衆人監視の準密室で殺人が起こる謎。「密室」ものの変格であり、お手本のような作品。アリバイも絡めたプロットはなかなかの出来だと思います。
④「見えない白い手」=中篇というべき分量。肝心の犯行時の描写がやや分かりにくいのが難。メイントリックも現実的に可能なのかやや疑問。
⑤「完全な不在」=タイトルからするとアリバイものっぽいですが、要は「○○○○り」トリック。登場人物が役者という時点で、まぁ気付くよなぁ・・・
以上5編。
出来はなかなかいいと思います。
アームチェア・ディテクティブですから、現実性云々というよりは、ロジック重視の純粋パズラー小説。
主人公にハンディキャップを持つ少年を配して、障がい者にも優しい社会を願う作者の思いも作品の端々から伝わってくる・・・そんな作品。
(③が一番の好み。①もまずまず。他はちょっと落ちる印象)

No.6 7点 toyotama
(2010/11/29 13:36登録)
結構犯人を見逃してますね、警部さん。

No.5 6点 nukkam
(2010/10/22 11:56登録)
(ネタバレなしです) 1976年に雑誌発表された5作の短編をまとめて1981年に発表された短編集です。ユーモアはそれほど豊かではありませんが主人公の信一少年と彼を取り巻く人間関係描写に温かみが感じられ、どこか和やかな雰囲気が全編を覆っています。これがミステリーと相性がいいかは意見が分かれそうで、密室あり、怪現象あり、アリバイありと本格派推理小説としてのネタは充実していて結構大胆なトリックもあったりするのですがこの雰囲気がややもすると読者の謎解き意欲を微妙にそらすかもしれません。緻密な推理の「出口のない街」なんかは犯人の名前指摘は1回しかないので読み落としのないようご用心を!「完全な不在」の大胆な発想も印象的です。

No.4 7点 kanamori
(2010/09/30 17:21登録)
安楽椅子探偵ものの連作短編集。
主人公は脳性麻痺による身障者の少年で、アームチェア・ディテクティヴというより車椅子探偵と呼ぶのが正しいかもしれません。仁木悦子の長編「青じろい季節」の脇役の登場人物を、了解を得て借用しています。
密室トリックやアリバイ崩しなど、5編とも本格ミステリではあるものの、ロジックの巧妙さなどは長けているとは言い難く、作者特有の牧歌的ユーモアも控えめですが、印象に残る作品集です。社会的弱者に対する暖かい眼差しは、仁木作品に通じるところがあるように思いました。

No.3 6点 isurrender
(2009/07/22 01:14登録)
ちょっと期待しすぎたかもしれません
小説としては非常に満足いくものではありますが、ミステリとしては弱さを感じました

No.2 8点 Tetchy
(2008/08/28 20:29登録)
身体障害者が主人公というミステリだが、当時友人の仁木悦子氏に触発して書かれたらしい。
そして80年代当時、社会が身障者に対して決して優しくない(雇用問題やノー・バリヤフリー)ことを声高に語るのではなく、あくまでソフトにミステリに織り込んでいる。
しかしそんなことを差っ引いても十分面白い連作短編集だ。
手元に本がないので、題名が解らないが、山に住んでいる乞食のような男が証言者として出てくる1編が妙に印象に残っている。
何故だか解らないのだけど・・・。

No.1 6点 こう
(2008/08/27 23:29登録)
 安楽椅子探偵物の短編集ですがしみじみした天童作品らしい仕上がりです。
 探偵役は障害児(といっても中学生くらい)で自分では動けず喋るのも非常に難しい、という設定です。
 個人的には第一作目の「多すぎる証人」のなぜたくさんの目撃証人がいるのに証言内容がばらばらなのか、という所が気に入っています。
 ロジック一本やりの作家ではないのでどの作品も甘い所はありますが他作品同様登場人物がいい人ばかりですが鼻につかずしみじみする作品集です。ミステリ的評価と別で気に入っています。

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