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ミステリの祭典

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死者のあやまち
エルキュール・ポアロ

作家 アガサ・クリスティー
出版日1958年01月
平均点6.00点
書評数12人

No.12 6点 レッドキング
(2021/05/02 23:40登録)
地方の古豪邸で催された「殺人事件ゲーム」の最中、被害者役の少女が絞殺死体で発見され、館主の妻の幼女の如き女が失踪する。何故に誰に少女は殺されたのか。真相の多重入れ替りネタ、なかなかに良い。トリックのリュック使用方法がカー「妖魔の森の家」方向だったらなお良く。※女作家オリヴァの「アガサ自虐ネタ」風味、相変わらずGood。

No.11 6点 蟷螂の斧
(2018/04/22 13:20登録)
真相、意外な犯人等、著者らしく中々のものと思うのですが、やや消化不良気味の感。何故なのか?。第一の殺人が起こった後、家主の妻が行方不明となり、彼女の帽子が川で発見される。生死はあやふやのままである。ポアロは死んでいると考えるがその根拠を語ることがない。この辺がもやもやして、スッキリしなかったですね。第一の殺人を主体に推理しているので、これでは読者は犯人像や真相のヒントをつかむことができないのでは?・・・。結局、ミスディレクションの妙、伏線回収の妙が弱かったのではないかと思う次第です。

No.10 7点 斎藤警部
(2018/01/30 02:52登録)
意外な被害者、そして、失踪。。 外国人。。。。 警察犬。。。? 
失踪人の生死がいつまで経っても明らかにされない、妙にゆったりした進行の内に新たな死人は出るは(これが意外な人物!)、そうこうしていつの間にか終盤数ページに迫っちゃってるわ。。この心地よいズルズル感はいったい、何の企みに担保されているのかしら。。 
そして最後は、深く長く静かな余韻。。。。(アガサ後期作ならではの味わいってやつでしょうか)

【以降ネタバレ含み】
クリスティらしい企画性(祭の殺人ゲームで被害者役が本当に殺される)が真相隠れ蓑のごく取っ掛かりでしかなかったり、物語のスターターであるオリヴァ婦人(ミステリ作家)が最後のほうはさして重要人物じゃなくなってたり、そのへんちょっとアンバランスだが。。結末の強さと素晴らしい余韻に絆されてそんなんどうでもよくなってしまいました。
靄のかかった薄ぼんやりした真犯人像(これがまた独特)よりも、真相の裏側を知っていた非犯人の方がやけにくっきりした人物造形、という人物配列の妙は面白いし、本作の場合は感動につながりますね。「入れ替わり」はありがちな方便だけど、それを取り巻く状況と心理の重なり合いが何とも切ない滋味を醸し出しており、好きな一篇であります。

No.9 6点 E-BANKER
(2017/08/27 19:38登録)
1956年発表の長編。
ポワロものとしてはかなり後期の作品に当たる。
「ひらいたトランプ」で初登場した女流ミステリ作家・オリヴァ夫人が事件の冒頭を飾ることに・・・

~田舎屋敷での催し物として犯人探しゲームが行われることになった。ポワロの良き友で作家のオリヴァ夫人がその筋書きを考えたのだが、まもなくゲームの死体役のはずの少女が本当に絞殺されてしまう事件が・・・。さらに主催者の夫人が忽然と姿を消し、事態は混迷してしまう・・・。名探偵ポワロが卑劣な殺人遊戯を止めるために立ち上がる~

「(前期・中期の作品に比べて)随分作風が変わったような・・・」って、読み進めながらずっと感じていた。
良く言えば、明るくポップになったんだけど、悪く言えば、“軽く”なった・・・と言えばいいんだろうか。
作者も年をとるわけだし、時代は変わっていくのだし、当然作風もそれに合わせて変化していくものなのだろう。
でも、何となく初期作品の重厚さに惹かれてしまうという方が多いのではないだろうか。
(かくいう私もそうなんだけど・・・)

それはさておき、本筋はというと、
見事なプロットと言えばそうだし、「そうきたか!よくある手だね」と言えばそう。
昔のミステリーにはありがちな○れ○わりトリックが本作でも登場。
これについては今まで何回も書いてきたけど、人間の目ってそこまで節穴じゃないだろ! って言いたくなる。
まぁ最終的にはそれが露見しそうになり、それを回避するために犯人側がかなり複雑な目眩しを仕掛けるわけだ。
(他の方はこの辺りの無理矢理感がお気に召さないのだろうな)

そこはさすがにクリスティで、ポワロの推理が開陳されるやいなや、それまでもつれていた糸が一気にほどけるという快感・刹那を味わうことはできる。
(怪しいと思った奴がまっとうで、まっとうと思った人物が実は・・・っていう奴。まさに「どんでん返し」!)
ただ、「葬儀を終えて」なんかもプロットとしては同じベクトルの作品だと思うけど、こっちは若干経年劣化を感じてしまうね。
あくまで高いレベルでの話ではあるんだけど・・・

No.8 7点 青い車
(2017/03/09 12:56登録)
 ミステリーでよく使われるふたつのトリックの合わせ技や、周到な伏線の配置とその回収によって読み手の意表を突く、アガサ・クリスティーの面目躍如の秀作です。かなり後期に書かれた作品で、新鮮味はあまりありません。しかし「彼女らしさ」は衰えを知らず、ミステリーの女王の風格を示しています。
(以下、ネタバレあり)

 この小説に対する唯一にして最大の不満は犯行動機です。クリスティーではよく出てきますが、「口封じの殺人」は怨恨、報復、狂気といった動機に比べ話が盛り上がりにくく、事件の性質上仕方ないとはいえ物足りなく感じます。

No.7 5点 makomako
(2016/11/23 17:33登録)
 お金持ちの屋敷で余興に殺人ゲームを企画したら、殺される役の女の子が本当に死んでいたという、サービス精神にあふれた作品といえましょう。
 登場人物の推理作家アリアドニオリヴァーはクリスティーの分身のようなところがありなかなか興味深いのですが、このお話はクリスティーとしてはあまり出来が良いとは言えないと思います。
 例によって最後にポアロにより真相が明らかにされますがあまりにも作りすぎで、これほど複雑なことをしなくてもいくらでもやりようがあろうかと思うのです。

No.6 6点 りゅうぐうのつかい
(2016/07/05 06:07登録)
田舎屋敷の園遊会で、おなじみの女性作家オリヴァが企画した犯人探しゲームで実際に起きる殺人事件。冒頭の事件のエピソードから興味深く、いかにも怪しげな人物配置、捜査の課程で判明していく様々な謎や人物間の心理的な関係など、とても引き込まれる内容の作品。
ポアロが事件を防止することができず、真相もなかなか見通せずに、ジグソーパズルに興じながら、焦燥に駆られる場面が印象的だ。
複雑でひねりのある真相。オリヴァの企画した犯人探しゲームの中に真相が暗示されているのが何とも面白い。数々の「なぜ?」に答える真相だが、素直には納得しがたい。真相説明で過去のある出来事が明らかになるのだが、そんなことが実際に起こりうるのかと疑問に感じてしまう。また、ハティの失踪に関する真相だが、読者のための演出にすぎず、こんな面倒くさいことをわざわざする必要があるとは到底思えない。
物語としては8点、真相は4点というところか。

No.5 5点 クリスティ再読
(2016/01/12 23:32登録)
名作「葬儀を終えて」の後、ポアロ物はちょっとした暗黒期に入るわけだけど(「第三の女」あたりでポアロが自身の老いを自覚して立ち直る)、本作実は「それほど悪い要素はない」のだけども「何かよくない」作品なんである。まあクリスティ自身「ポアロ物は嫌々書いていた」って話があるくらいで、戦後のこの時期になると「ポアロ物として書きたいことってもうないや...」っていうようなテンションの低さを評者は感じるわけだ。
客観的に考えれば「面白くなる要素」だらけなんである。「イベントの犯人探しゲームの最中に、被害者役が殺された!」なんてハッタリの利かせ方、一見アタマの中が空っぽに見えるにも関わらず、人によっては逆の印象を受ける不思議なキャラとか、陰翳感の強いキャラの立ったフォリアット夫人...と役者と舞台装置には事欠いていないし、真相だってクリスティお得意の人間関係の逆転あり、意外な動機あり...ロジックは少し弱く人間関係で不自然な箇所がなくもないけど、そう悪い解決でもない。
それでも本作、何かキモチよくないのだ。かなり皮肉な言い方をすると「十分に悪くないからよくない」困った作品である。ふう。

付記:ていうか、本当は真相にちょっと反撥するんだよね。クリスティは演劇的っていうけど、ここまでやっちゃうと「お芝居じゃん」てことになって、意外な真相でもシラけることにしかならないんだよね。要するにやりすぎ。ミステリは意外だったら何でもいい、というものじゃないんだ..

No.4 6点 了然和尚
(2015/05/14 20:19登録)
本作でファリアット夫人(母親)は、息子の3件の犯罪に対して共犯と言えないまでも、事後従犯ということでしょうか? 自分の保護しているものを殺されて1年余も平然と茶番に付き合えるものなんでしょうか? これがイングランドの話なので、母国の読み手がどう感じるか(しかも70年ぐらい前)わからないので、共感とかしにくいですね。 最終的には、ポアロはこの夫人を追い詰めるだけなので、この心情は重要です。まったく同じ話でも、岡山の山村の大地主を舞台に変えてみれば、プラス2点ものの感動作品(もちろん探偵は金田一)なんですが。

No.3 6点 あびびび
(2014/01/13 23:17登録)
真相は驚きだったが、ポアロの苦悩が長すぎて、中だるみ感があった。確かに細やかな伏線は提供されていたものの、すぐに気付くトリックではなく、ほとんど証拠も残されていなかった。

それだけ完璧な犯罪だったわけだが、それでも犯人側から見ればかなり混乱し、綱渡り状態だったわけで、双方を比較するとそのやりとりが面白い。

そういう意味からすれば、ずっと心の中に残る作品かも知れない。

No.2 7点 koo±
(2011/11/02 16:12登録)
これはよかった。久々に「おぉ」と唸りました。こういうのが読みたかったんです。まあ、ツッコミ所も多々ありますが。

全体的に地味な印象です。登場人物も無駄に多い。途中で何度もダルくなりました。ですが、解決編で一気に目が覚めました。愛憎渦巻く人間関係と、ひねりの効いたどんでん返し。クリスティらしい王道パターン、そして僕好みのトリックです。

スタップス夫人の設定に少々無理がある。というか、かなり荒っぽいですけどね。2つの殺人の動機が弱いのも気になりました。

真相と展開のバランスがちょっとちぐはく。読者に推理の条件を提示してくれないところは相変わらずですね。ポアロが解決に至る過程が唐突で、狐に摘まれたような感。女史の作品を読みなれた読者なら、おそらくカンで辿り付くのでしょうが。

ポアロも影が薄いです。年をとったせいでしょうか。全盛期の尊大さや精悍さがないですね。その反面、シリーズ後期の相棒であるオリヴァ夫人が弾けてます。常識人のヘイスティングスとは真逆の存在感。おそらく作者の投影でしょう。いいですね、こういう変人キャラ大好きです。

なんだかんだ言っても、トリックがいいと細かいことは帳消しになります。これが本格ミステリの醍醐味ですね。途中で投げ出さないでよかった。

No.1 5点
(2009/04/12 15:07登録)
事件の裏に潜む秘密については、かなり強引な力技が使われています。それに関して途中はてなと思った証言があったのですが、その意味するところまでは推理できませんでした。その過去の秘密さえ暴かれればすべては単純明快ですが、ポアロが真相に気づき推理を披露するあたりのプロセスにちょっと唐突感があり、少女殺害の動機に明確な具体性が欠けるせいもあって、いまひとつすっきりしませんでした。
それにしてもクリスティーの分身ともいえる登場人物オリヴァー夫人が、最初の方で思いっきり重要な暗示的ヒントを、まさに手がかりとして述べているところは痛快です。オリヴァー夫人には後半ももう少し活躍してもらいたかったな。

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