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ミステリの祭典

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煙の殺意

作家 泡坂妻夫
出版日1980年11月
平均点7.39点
書評数23人

No.23 7点 みりん
(2024/09/08 12:26登録)
うーんこの人今のところハズレがない。すごい。
いつもの泡坂流逆説が楽しく、なかでも『椛山訪雪図』は芸術的な域の"騙し"に仕上がっています。『歯と胴』は短編集の中では一風変わった倒叙もの。某技術は1980年頃には既にあったのか…現代ほど浸透していたら、逆に特定には繋がらないだろうなと。『開橋式次第』の鮮やかな伏線と論理は『亜愛一郎の狼狽』を彷彿とさせ、読後清々しい気持ちになります。特に上記の3つが気に入り、泡坂短編集の最高傑作との評価にも頷けます。まだ短編4作しか読んでないけど。

No.22 7点 メルカトル
(2024/06/13 22:16登録)
捜査そっちのけの警部と美女の死体に張り切る鑑識官コンビの殺人現場リポート「煙の殺意」を表題に、知る人ぞ知る愛すべき傑作「紳士の園」や、往復書簡で綴る地中海のシンデレラストーリー「閏の花嫁」など、問答無用に面白い八編を収める。
Amazon内容紹介より。

全編本格かと問われると、ちょっと考えてしまいます。逆に言えばそれだけバラエティに富んだ作品集だという事。つまり、作者の抽斗の多さに思わず納得してしまう次第です。訳あって最初の『赤の追憶』を読んでからかなり時間が経っており、今再読しているところです。ラストが印象的で粋なオチが付いていたのは記憶にありますし、凄く面白かったのは憶えています。ただ内容がうろ覚えで、己の記憶力の無さに嫌気が差しています。読み終えたら追記します。
(追記)初読の際の新鮮さは流石にありませんでした。段々思い出して来ますし、オチも分かってますからね。それでも本作が『煙の殺意』の次に出来が良かったと思います。男女の絡みと心理描写と呆気に取られる恋の動機。先の読めない展開に喝采。

その他ではやはり表題作が一番ですね。無駄にスケールの大きい、意外過ぎる動機が私好みでいかにも泡坂らしい一作だと思います。バラバラ死体ものや風情のある『椛山訪雪図』(これは名作との呼び声が高いですが、個人的にはそれ程でもなかった)など様々な作風に挑戦している姿勢自体、泡坂ワールドと言って良いでしょうね。何となく人を喰った作品が多い様にも感じました。

No.21 7点 じきる
(2021/12/20 12:00登録)
泡坂さんの持ち味である奇妙な逆説を活かした作品集。
個人的には表題作が一番面白かったです。

No.20 6点 パメル
(2021/04/01 09:15登録)
バラエティに富んだ8編からなる短編集。
「赤の追憶」夏の終わりに久しぶりに顔を合わせた桐男と加那子。桐男は加那子が最近大きく変身した理由を推理する。少々古臭く感じる点はあるが、オチは結構好き。
「椛山訪雪図」古美術の蒐集家であった別腸が持っていた墨画の話。掛け軸の絵が一瞬のうちに違う表情を見せ鮮やか。殺人事件との絡みも見事。
「紳士の園」刑務所仲間だった島津と近衛が夜の公園でスワン鍋をすることに。そこで死体を見つけてしまい...。「赤の記憶」とどこか似たような趣向だが、何とも皮肉な雰囲気。
「閏の花嫁」毬子が失踪して一ケ月。加奈江の元に地中海に浮かぶシルヴィ島のマリオと結婚し王妃になったという手紙が届く...。ジャンルとしてはホラー。童話の中にありそうな話で、オチはすぐ分かる。
「煙の殺意」ホステスが自宅マンションの浴室で刺殺される。犯人は真下の部屋に住む男。丁度その時、デパートで史上最悪の火災が発生したところで、望月警部はその火災の様子が映し出されたテレビに釘づけだった...。全く関連性が感じられない二つの出来事が一つになる。お見事。
「狐の面」酒が入った和尚が始めた先代の住職の話。修練者たちの法術の種を見事に明かす。味わい深い語り口で謎もユニーク。
「歯と胴」教授の妻・安子と通じてしまった「僕」。教授の昔の恋人が現れて、探偵社が安子を尾行。安子は「僕」に教授を殺せというのだが...。犯人が語り手になっているが、しっかり驚かせてくれる。
「開橋式次第」親子四世代、五組の家族が同居する吹田家は子沢山で毎日朝から大騒ぎ。そんな一家が開橋式に呼ばれて出掛けていくのだが...。ドタバタしているうちに解決。謎は大したことはない。
ベストは表題作の「煙の殺意」次点で「椛山訪雪図」「紳士の園」。

No.19 7点 あびびび
(2019/12/12 14:51登録)
一つの短編を書くのに、その分野においてどれほどの蘊蓄が必要なのだろうか…と唸る一方、表題の「煙の殺意」は、しでかしたことに対して、そんな誤魔化しで精神状態が維持できるのだろうか?と、疑念を抱いたりする。

しかし、あらゆる分野に精通する作家であることを、再確認する自分がいる。

No.18 8点 sophia
(2019/11/24 00:18登録)
ジェノサイドあり、カニバリズムあり、死体の解体描写ありで、なかなかにブラックな短編集でした。亜愛一郎シリーズのようなファニーな雰囲気を想像していたので衝撃を受けました。「狐の面」と「歯と胴」だけがややいまいちで、後は全部面白かったです。「閏の花嫁」はトラウマになりそうです。

No.17 8点 青い車
(2018/11/19 21:19登録)
 久々の投稿です。
 いろんな味が楽しめる贅沢な短編集。作者お得意の奇妙な動機や逆説が見事に嵌った『紳士の園』『煙の殺意』『開橋式次第』を推します。特に、表題作はアイデアとしては類例があるそうですが、その扱い方の大胆さで頭ひとつ抜けてる印象。

No.16 7点 まさむね
(2018/02/23 21:07登録)
 亜愛一郎シリーズとも異なる、捩じれた味わいを堪能できるノン・シリーズ短編集。バラエティに富んでいて、楽しめます。
①赤の追想:ラストの一言が心憎い。
②花山訪雪図:美しいのだけれども、解説の評は盛り上げすぎの感も。
③紳士の園:どこに着地するのか予測できず。「スワン鍋」にやられた。
④閏の花嫁:結末は予測できたものの、面白い。
⑤煙の殺意:ぶっ飛んだ動機が印象的。
⑥狐の面:エセ魔術も含めて楽しめた。
⑦歯と胴:捻りのある倒叙もの。
⑧開橋式次第:アノ勘違いは、結構多くの人がやりそうだと思うのだが…。

No.15 9点 虫暮部
(2016/11/08 10:08登録)
 敢て文句をつけるなら「椛山訪雪図」。その絵のイメージが私の心の中に、浮かび上がっては来なかった。あーそういう設定なんですね、としか思えず、犯人が見間違えたと言われても“架空の薬物の特殊な作用を利用したトリック”を読んだような気分。まぁ私の読み方が下手ってことで。 
 「歯と胴」の最後の行にはクラッと来た。収録順だが、コミカル度の高い「開橋式次第」は最後ではないほうが良い。読み返すときはシャッフルしよう。

No.14 7点
(2016/10/12 23:15登録)
全8編中基本的には謎解きミステリが多いですけれども、ノン・シリーズだけに様々な趣向を凝らしています。
最初の『赤の追想』は長編『湖底のまつり』をも思わせるような雰囲気があります。次の『椛山訪雪図』は紋章上絵師であり美術に造詣の深い作者ならではの作品で、殺人事件の真相自体よりも手がかりとなる絵の秘密の方に驚かされます。本作の冒頭で言及されるダリも個人的に好きな画家だけに、集中で最も気に入っている作品です。『閏の花嫁』は島の位置が「北緯三十七度、東経十七度」なんて細かい大ぼらが作者らしいところでしょうか。『歯と胴』は犯罪小説ですが、殺人計画の途中で一ひねりあります。『狐の面』に出てくる稲荷魔術については、阿部徳蔵の『奇術随筆』(1936)に詳しく解説されています。『開橋式次第』は『DL2号機事件』的なロジックですが、その勘違いをする人は他にもいそうなところが決め手としては弱いですね。

No.13 8点 風桜青紫
(2016/07/12 23:45登録)
泡坂妻夫の最高傑作であり、泡坂的逆説が最大限に研ぎ澄まされた一作。まあ、多くの方々が噛み砕いた感想を述べているから、改まった説明は不要だろう。とりあえず、ラストの衝撃で「紳士の園」。真相の奇妙さで「閏の花嫁」が気に入ったと言っておく。この作品に関して「時の試練を耐え抜いてない〜」などと書いている採点者もいるが、それは単に泡坂妻夫を楽しめるセンスがないというだけの話である。

No.12 7点 斎藤警部
(2015/11/10 17:35登録)
社会派・奇妙な味とでも呼びたい「紳士の園」の、結末で一気に恐怖の深みに嵌る、そして急速に動き出す感覚。 ちょっと連城三紀彦を思わす美しい「椛山訪雪図」の、完成度も堂々たる清冽な騙し絵っぷり。 バリンジャーの「歯と爪」ならぬ「歯と胴」のナニもなかなかのアレですよ。。
スタイルや内容はバラエティに富んでおり、トリッキーな遊びだけで済まない、深く心に残ってしまう短篇集です。
緩すぎる「亜さん」にはどうにも眠くなって萌えない私ですが、このノン・シリーズ集はどこかしらヒリヒリする感触を宿しており、読んでいて頭が冴えますね。

赤の追想/椛山訪雪図/紳士の園/閏の花嫁/煙の殺意/狐の面/歯と胴/開橋式次第
(創元推理文庫)

No.11 6点 名探偵ジャパン
(2014/10/01 11:35登録)
ノンシリーズの短編集。いきなり書店に平積みされていた。

・赤の追想
泡坂氏らしくない、いきなり異色の作品を持ってきて。本短編集の方向性を示した。

・花山訪雪図
確かに面白かったが、解説で大絶賛されていたため、無用にハードルが上がってしまった。(先に解説を読んでしまった)

・紳士の園
一番の異色作。他の方のレビューにもあったが、星新一っぽい。

・閏の花嫁
途中でオチが読めてしまうが、手紙のやりとりという形式が緊迫感を演出している。

・煙の殺意
表題作にもなっている、盛大(?)な事件。百貨店内で煙草を吸いながら歩くというのが、時代を感じさせる。

・狐の面
ヨギ・ガンジーものっぽい。泡坂妻夫の真骨頂といえる作品。ブラックな事件、オチが多い本短編集内では、かえって浮いてしまっているが、一番好き。

・歯と胴
シンプルながら内容を的確に言い表したタイトルが秀逸。犯人はあんなに頑張ったのに。やはり悪いことはできない。

・開橋式次第
ある事柄に異様にこだわるという、作者デビュー作の「DL2号機事件」の発展型ともいえる作品。

三十年以上も前に刊行された作品集だが、今読んでも古くささはほとんど感じない。作者独特のドタバタした文章が読みづらい箇所もあるが、(「開橋式次第」の冒頭など顕著)楽しめた。

No.10 6点 蟷螂の斧
(2014/06/05 14:52登録)
①赤の追想~恋愛の機微とは?②椛山訪雪図~ダリのような騙し絵か?③紳士の園~浮浪者の死体までも片づけられる公園とは?④閏の花嫁~閏年の結婚式の意味は?⑤煙の殺意~火災と殺人の関連は?⑥狐の面~狐の憑き物の退治方法は?⑦歯と胴~完全犯罪成立か?⑧開橋式次第~15年前の事件とそっくりだが?          ⑦が一番の好みですね。阿刀田高氏の最もお気に入りの作品(1978)と同じモチーフでした。氏のファンとしては、本作より1年前の発表でホッとしています(笑)。④はロアルド・ダールの「奇妙な味」的な雰囲気。②はダリの騙し絵が取り上げられていますが、マニアックな作品で同ファンとしては、おもわずニヤリとしてしまいました。短編は余程のインパクトのある作品でないと高評価は付けづらいので、やや辛目です。

No.9 7点 ボナンザ
(2014/05/29 22:13登録)
流石に泡坂の短編集だけあって高密度。
どれもアイディアはもちろん、あっといわされるような展開に満ちていて楽しい。

No.8 7点 E-BANKER
(2011/02/05 17:21登録)
ノン・シリーズの短編集。
「これぞ泡坂の短編!」とでも言うべき、一味違う作品群を味わわせてもらいました。
①「赤の追想」=「うーん。評価しづらい作品」という感じ。泡坂作品に期待する方向性と違っているのは間違いない。
②「花山訪雪図」=名画に仕掛けられた作者の企みが、ある殺人事件を解明するきっかけになる・・・何となく既視感のあるプロットではあります。ただ、よくできている作品なのは間違いない。
③「紳士の園」=「スワン鍋」に笑っているうちに、最後の仕掛けにビックリさせられる。近衛のキャラクターは何とも魅力的!
④「閏の花嫁」=手紙交換によるストーリー展開というのがいい味出してる。オチはちょっとブラックですけど、「毬子を○○る」ということですよねぇ・・・
⑤「煙の殺意」=プロットは斬新。でも、さすがに「ここまでする奴はいないだろう!」と思わずにはいられません。まぁ、でも面白い。
⑥「狐の面」=本筋よりも、山伏が人を騙す手口・テクニックの方が面白かった。さすが、奇術師です。
⑦「歯と胴」=これもブラックですけど、かなり面白い。変形の倒叙形式といえばいいんでしょうか? ラストのオチもうまい!
⑧「開橋式次第」=本筋はちょっと誉められないが、こんな一家いたら面白いだろうなぁ・・・
以上8編。
作者の短編集としては、「亜愛一郎シリーズ」が有名ですが、ノンシリーズの本書も十二分に作者のテクニックやロジックを楽しませてくれます。
捻じ曲がった人間の心が、捻じ曲がった犯罪を生み出すということなのでしょうね。
(個人的に⑦がベスト。③や⑤も水準以上。)

No.7 7点 kanamori
(2010/08/15 18:11登録)
やはり、著者の神髄は短編にあることが実感できたヴァラエティに富むノンシリーズのミステリ作品集。
好みでいえば、「椛山訪雪図」が個人的ベスト。水墨画に隠された仕掛けと殺人事件の絡みが巧妙。
ほかに、「煙の殺意」「紳士の園」「狐の面」「開橋式次第」などが氏のテイストがよく出た佳作だと思います。無茶なロジックが入った作品もありますが、亜シリーズに準じる奇想が楽しめます。

No.6 6点 シーマスター
(2010/06/07 23:41登録)
刊行当時はかなりインパクトが強い短編集だったんだろうな・・・というのは容易に想像できるが、率直な読後感は・・・・

『赤の追想』・・・悲運と恋愛を題材にした、深くて重たい逆説話ではあるがロジカルなミステリではない。
序盤のキャラクター当ては、感情と蓋然を混同しまくりで、シャーロック・ホームズも開口不閉だろう。(ていうか、これはおふざけか?)
『樺山訪雪図』・・・幻想味が冴えるネタではあるが、芸術の超絶技巧をミステリに利用した話は時々あるよね。(本作が先駆かは知らんけど)
『紳士の園』・・・面白いし「逆転の発想」の試みも評価できるがムリっぽさは拭えない。星新一(?)のちょっと長めのショートなどでいくつか類似パターンがあったような気がする。(どれが先か知らんけど)
『閏の花嫁』・・・これも星さん等々で似たような話は少なくないと思うが、女心の描写なんかは割と面白い。
『煙の殺意』・・・当時は衝撃的だったのかもしれないが、今ではそれほど「驚くべき構図」ではないし概ね読めてしまうのでは?
『狐の面』・・・話は楽しいし着眼のキレも感じさせるが、緻密なロジックとは程遠い。
『歯と胴』・・・よくできているが、これも阿刀田高とか土屋隆生とかの短編で時々見かける様式だよね。(どれが先か知らんけど)
『開橋式次第』・・・ドタバタも悪くはないし、大翁の推理に目くじらを立てるつもりもないが思いつきの域を超えるものではなく、「方法の理由」も甚だ現実味に乏しい。その根拠となる人間性の説教も一般論としては甚だよく解かるが甚だ押しつけがましくも感じる。

要するに、面白い短編集だがミステリとして時の試練を耐え抜いているとは思えないなー、というのが個人的な感想。

No.5 10点 テレキャス
(2010/03/19 05:34登録)
個人的にベストの短編集。
よくCDのオススメPOPに「捨て曲なし」なんて書かれてるけど、まさにそれ。
巨匠の巧に戦け!

No.4 8点 E
(2010/03/13 21:12登録)
どれも色々な味わいがあって面白かった短編集。
印象深いのは「椛山訪雪図」。美しい日本匠の技☆
「閏の花嫁」は・・・怖かった・・!!

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