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ミステリの祭典

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皇帝と拳銃と
乙姫警部シリーズ

作家 倉知淳
出版日2017年11月
平均点5.43点
書評数7人

No.7 5点 名探偵ジャパン
(2020/03/09 16:12登録)
本作にキャッチコピーを付けるなら、「ザ・可もなく不可もなく」というものに私はしたいと思います。
もう、本当に普通の倒叙ものです。ラスト一話だけが少し凝っていますが、それ以外はもう本当の本当に普通。
主人公が死神みたいな容姿をしていて、相棒がスーパーイケメンだそうで、そこが他の類似作品との差別化になってはいます。
ですが、本作は基本、犯人も含めて聴取を受ける人物の視点で書かれているのですが、新しい登場人物が出てくるたび、「刑事が死神みたいで、相棒はイケメンだ」ということに驚く描写が入り、しかもそれが結構な行数に渡って続けられて、それが正直しつこいです。この場面を集めただけで、全文章量の一割くらいは消費しているのではないでしょうか。繰り返されるこの描写がラストへの伏線になっているのか? とも思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。
倉知淳はこんなものではないはずだぞ。

本筋とは全然関係ないのですが、倒叙もので主人公が慇懃な口調の刑事、という共通点から、主人公の台詞をかなりのシンクロ具合で「古畑任三郎」の喋り方で脳内再生することができます。途中で飽きたら、こんな楽しみ方も一興です。

No.6 5点 いいちこ
(2020/01/25 18:15登録)
2人の探偵の人物造形は奇をてらっているものの、魅力に乏しく、奏功しているとは言い難い。
各短編のロジック・トリックは堅実である反面、全体にインパクトが小さく、サプライズを演出できていない。
最終話の真相は、作品中盤で察することができるレベルであり、完全に想定の範囲内。
全体として悪い作品ではないものの、一読の価値がある水準には達しておらず、5点の下位

No.5 5点 まさむね
(2019/01/02 12:48登録)
 作者初の倒叙形式の短編集(だと思う)。
 個人的に倒叙モノはあまり好みではないということもあるのだけれども、印象としては、よく言えば手堅い、一般的に言えば普通の短編集といったところかな。死神を彷彿させる風貌の警部とイケメン刑事というコンビの設定が効果的であったかも微妙。同時期の作者の短編集であれば「ドッペルゲンガーの銃」の方が好き。
 好みの作者さんだけにちょっと厳し目の書きぶりになってしまいましたが、水準以上には楽しめましたよ。

No.4 7点 青い車
(2018/11/29 21:39登録)
 まさか倉知淳氏による倒叙ものが読めるとは。いちばん好みなのは最初の『運命の銀輪』で、犯人にとって落とし穴になる証拠は完全に盲点でした。犯人の設定「相棒の実力で地位を得ているが、その相棒が独立をしたがり、自分の作家としての無能さの露見を恐れて殺害する。性格は傲慢で虚栄心が強い」を書き出すとまんまコロンボの『構想の死角』で、そこも含めて面白いです。逆に『恋人たちの汀』は細かい科学捜査で解明されるトリックなのが完成度は別として嗜好に合いませんでした。

No.3 6点 虫暮部
(2018/02/13 09:45登録)
 最後の話には見事に騙された。
 しかし、ネタバレしつつ書くが、他に関しては本当に言い逃れ出来ないのだろうか。考えてみた。
 「皇帝と拳銃と」――実は私は最近、射撃を始めたのですよ。それでつい、この執務室が防音なのをいいことに、こっそり運んで来たあの本を的にして発砲してしまったのです。スリルを求めて、他愛ない悪戯のつもりでした。どうぞ私を銃刀法違反で逮捕して下さい。但し、発砲したからといってそれが威嚇射撃だったとは限らないし、威嚇射撃をしたからといってそれが転落死の原因になったとも限りませんよね。
 「恋人たちの汀」――実は、真の第一発見者は俺なんです。あの日、呼び出されてこの部屋に来ると死体がありました。そこで俺はこれ幸いと、自分の借金の借用証を盗んだんです。通報したら窃盗はともかく殺人の疑いまでかけられると思って、黙って逃げました。机の上のチラシはその時に念の為処分したんです。偽のアリバイ工作についてもその時に念の為指示したんです。偽証罪と窃盗罪、でも確か親族間の窃盗は親告罪ですよね。
 「運命の銀輪」――5桁の数字なら、10万分の1の確率で偶然に一致しますよね。

No.2 5点 人並由真
(2018/02/09 12:56登録)
 連作倒叙中編集としてはまあ手堅い作りかと。とはいえ第1話の犯人なんか(フィクションの中での)実際の現場でそういう見落としをするかなあ、という気もしたが。
 ちなみに連作ものとしてはムニャムニャ・・・。倉知先生、次回は読者の誰もが警戒してきますよ。きっと。

No.1 5点 はっすー
(2017/12/05 16:26登録)
計画は練りに練った。ミスなどあるはずがなかった。それなのに……いったいどこに落ち度があったというのだ!? 犯罪に手を染めた大学教授、推理作家、劇団演出家らの前に立ち塞がる、死神めいた風貌の警部の鋭利な推理。〈刑事コロンボ〉の衣鉢を継ぐ倉知淳初の倒叙シリーズ、4編を収録。

倉知淳初の倒叙シリーズということで楽しみにしていました
読んでみた感想としては微妙・・・
確かに一つ一つのロジックは納得はいくもので面白いものもあり倒叙ミステリのレベルとしては決して低く無いのですが全体的にインパクトや驚きが少なく勿体ない印象を受けました
倉知淳だからと期待せずに読んだ方がいいかと思います

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