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ミステリの祭典

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陰獣

作家 江戸川乱歩
出版日1973年09月
平均点7.14点
書評数22人

No.22 6点 ALFA
(2024/07/07 09:00登録)
乱歩らしからぬ?本格のプロット。
構成や文体にはさすがに時代を感じてしまう。
動機面は丁寧に整合がとれているが、犯人のキャラや犯行の偶然性は気にはなる。
モヤッとしたエンディングはいい。

No.21 6点 メルカトル
(2024/06/19 22:37登録)
大富豪と結婚し幸せに暮らしている女のもとに、昔捨てた男から執念の脅迫状が届く。差出人の男は謎めいた探偵作家。女の夫が変死体で発見されると、その脅迫状はぴたりとやむが……意外な結末とは!?
Amazon内容紹介より。

角川ホラー文庫版で読みました。『陰獣』も『蟲』も情念の作家乱歩の一面をよく表した作品だと思いました。雰囲気はいかにもなもので、他作家の追随を許さないドロドロした男女の絡み合いや、乱歩らしいトリックが光ります。しかし、時代を感じさせ色褪せた感は否めません。

両作とも中編の割には内容がぎっしり詰まっており、楽勝で読めると思っていたら大間違いでした。高評価の方は乱歩が好きなんでしょうねえ。私も過去に何作か読んできましたが、昔読んだ短編『芋虫』を超える作品は未だ現れていません。私にとって乱歩はやはり『少年探偵団』であり『芋虫』であるのだと思い知りました。しかしまだまだ未読作品は多く、今後に期待したいと思います。

No.20 7点 みりん
(2023/07/07 21:26登録)
三津田信三氏の「忌館 ホラー作家の棲む家」という作品の中でこの「陰獣」が絶賛されていたので気になって読んでみました。昔の作品だからか?120ページ読むのに2時間程かかってしまいました笑

【ネタバレがあります】


連城作品の耽美性を薄めて陰湿さを強化したような感じで、作品の雰囲気が独特で読み味がありますね。
そんな陰獣、派手なトリックはないもののラストの2転3転する多重解決と答えの出ない推理に悩み悶える主人公が印象に残りました。

もう一つの中編「蟲」では異常者の犯罪心理をたっぷり読ませられる。ここまで徹底されてるのは「殺戮に至る病」以来だ。これはまさに陰獣に登場した探偵作家、大江春泥の得意とする内容だろうか。

こりゃ乱歩作品他のも読まないとなあ。

No.19 6点 虫暮部
(2022/05/15 11:53登録)
 割と普通、だと思ったら最後にやられた。
 と言う筋立てはいいんだけど、人物描写はどうなんだろう。Aが実はBだったと言われて、“成程、確かにそんな感じだ” とは思えなかった。理詰めで可能性を示されただけって感じ。あの人の匂やかな言動から私がそこをもっと読み取るべきだったか。
 水死人を突き刺した意外な凶器には驚いた。

No.18 6点 じきる
(2022/03/02 11:27登録)
変態的なストーリー展開とラストのオチが上手く噛み合っています。乱歩自身をもじったネタもいいですね。

No.17 7点 ミステリ初心者
(2021/12/04 01:20登録)
ネタバレをしています。また、私の読んだ本には短編の蟲も入っていたので、そちらのネタバレもしています。

 乱歩のなかでも、かなり高評価作品だったので、期待して読みました。期待通りの素晴らしい作品だと思います。
 異常な平田と大江春泥の手紙の恐怖にはじまり、少しずつ被害者小山田六郎や静子の異常性が明らかになっていき、私こと寒川も異常になっていき、登場人物の多くがどこかしらおかしさがありました。ラストもあえて真相は謎にしておくことでホラー感が増しております。罪悪感系ホラーみもありますね。
 推理小説としては、読者に様々な妄想をさせるようなミスリードや、静子=大江春泥説への伏線があり、丁寧に作られています。登場人物の少なさから、静子=大江春泥説を思いつく読者は多いでしょうが、それでも楽しめると思います。
 総じて、ミステリホラーの教科書のような作品だと思いました。

 次に、同時収録されていた蟲についてです。
 こちらはミステリ味の少ない、どちらかといえばホラーです。私はそれほど乱歩をよく知っているわけではありませんが、蟲のほうが私の中の乱歩が書くイメージでした(笑)。
 主人公・柾木はただ静かに暮らしたい、厭人癖があったけど善良な人物だったのに、恋によって徐々に狂ってストーカーと化していくのがなんとも恐ろしいです。殺人を犯してから、死体をどうにか腐らせないように苦心する描写にぞっとします。
 私は、柾木が死体いじりをしだしたときに、「そうか、死体が腐ってウジ虫が沸くエンドだな!タイトルの蟲はウジ虫のことだったんだ!」と思っていましたが、まったくそんなことはありませんでした(笑)。wikiによると、死体を腐らせる微生物のようです。

No.16 6点 パメル
(2020/06/08 09:20登録)
春陽堂文庫版で読了。表題作を含む4編からなる短編集。 陰獣/盗難/踊る一寸法師/覆面の舞踏者
その中で、表題作の感想を。密室で繰り広げられる夫婦の秘め事という、完全にプライベートの領域に属する秘密が、赤の他人から送られてくる脅迫状に事細かに記されているというおぞましさを倒錯的なエロティシズムと共に描き出している。
作中に登場する大江春泥の作品のタイトルは「屋根裏の遊戯」「B坂の殺人」「パノラマ国」など、乱歩作品をもじったもの。乱歩の本名が平井太郎というのはよく知られており、それをもじるかのように大江の本名は平田一郎となっている。
このように「作中の私=作者の乱歩」ではなく「大江=乱歩」という印象を読者に与えるのだが、これ自体がトリックになっている。
だが、これについては、乱歩自身は全く意識していなかったと語っている。二転三転する真相には驚くが、さらに最後の数行で、驚かされる。もっとも、この数行については発表当時から賛否両論あったらしいが。

No.15 7点 レッドキング
(2018/11/21 17:10登録)
子供のころ この作品によって「本格」「変格」というガイネンを知った。また「ロジック」および「多重解決」っていう物のあり方を教わった。

No.14 10点 青い車
(2016/09/13 23:00登録)
 ほんのちょっと読んだだけで、ずっと乱歩を敬遠していました。いわゆるエログロナンセンス描写の魅力だけで評価されているのではないかと。しかし、その侮っていた描写力、雰囲気づくりの凄まじさにこのたび『陰獣』を読んで圧倒されました。サディストとマゾヒスト、天井からの覗き見といった過去作品のエッセンスを含みつつ、論理的推理とどんでん返しを両立させています。さらには、本来ならモヤモヤが残る独特な結末もいい味を出しています。
 『蟲』のほうは、別の短篇集で以前読んでいたのですが、読み返してみると記憶よりずっと面白かったです。主人公・愛造の異常心理はにわかには理解できません。でも、彼が生まれながら持っていた人というものに対する歪んだ感情は少しわからないではない部分もあります。そこがまた恐ろしいです。
 200頁ほどの薄い本なのに非常に濃い内容でした。江戸川乱歩という作家の底力がようやくわかった気がします。

No.13 9点 斎藤警部
(2015/10/24 23:16登録)
これは強力に吸い込まれましたよ。かなり若い時節に読みましたが、未知の気持ち悪さが継続的に脳内を侵食して来るのには参りました。今だったら、むしろ当時以上に真っ向勝負で味読出来るのじゃないかとも思います。 ○●○●トリックの遣い口は今考えるとあざといっちゃ見え透いたものかも知れませんが、バレるバレないよりむしろ、それを物語の主題に据えた事に意義があると思えてなりません。 どうしてだろう。 それはやはり、○●○●トリックを更に覆い包む例の「前代未聞トリック」が物語全体を睥睨しているからか? 

No.12 6点 いいちこ
(2015/07/07 16:34登録)
独特の世界観が高評価の理由であろうが、犯行の非合理性やフィージビリティの低さを犯行動機だけで説明しようとする論理性の低さが強く引っ掛かる。
著者の作風が自分にあっていないということだと理解

No.11 7点 ボナンザ
(2014/04/07 22:03登録)
実によくできている。後味の悪さも一級品だ。

No.10 8点 バード
(2014/02/22 09:55登録)
とてもおもしろかった、犯人の意外性がないのは長さ的にしょうがないがそれをふまえても良かった。

普通ミステリで未解決というか最後にもやもやさせてくるのは好ましくないと思うがこの作品についてはかえってそれが良かったのかもしれない。春泥の作品がもろ過去の乱歩さんの作品だったのもいいスパイスだった。

No.9 8点 蟷螂の斧
(2013/02/05 15:30登録)
東西ミステリーベスト100の35位(1985年版14位)。私(探偵小説家~探偵形)と大江春泥(同~犯罪形)の対立構造をうまく料理していると思います。この時代では、かなり凝ったトリックとなるのでしょう。陰鬱で艶めかしい雰囲気も良く出ているし、ラストの余韻もよいと思います。

No.8 7点 TON2
(2013/01/21 18:39登録)
講談社「江戸川乱歩全集3」より
 耽美的ではありますが、乱歩としては珍しい正統派の長編探偵小説です。作者の投影と思しき「大江春泥」なる探偵小説作家を狂言回しとしています。

No.7 6点 E-BANKER
(2011/09/28 21:36登録)
角川ホラー文庫版で読了。
乱歩中期の傑作と評される作品ですが・・・
①「陰獣」=探偵作家の寒川に資産家夫人・静子が助けを求めてきた。捨てた男から脅迫状が届いたというのだが、差出人は探偵小説家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味で寒川はできるだけの助力を約束するが、春泥の行方は掴めない。そんなある日、静子の夫の変死体が発見された~

乱歩の匂いが濃厚に漂う作品だなぁ。
乱歩らしい世界観とロジックが微妙な具合に融合していて、その辺のミックス加減が本作の「高評価」を生んでいるのでしょう。
「大江春泥」と「平田一郎」。謎の2人の人物をめぐって、寒川の頭の中で、様々なストーリーが形作られる・・・
静子の造形も何とも乱歩らしい。
(乱歩好きなら、堪えられない作品なのでしょう)

②「蟲」=これはミステリーというか、軽いホラーでしょう。「虫」ではなく、「蟲」としたタイトルが言い得て妙。
前半~終盤はどうでもよくって、ラスト1頁にすべてが集約されてます。

No.6 7点 itokin
(2011/08/19 12:07登録)
短編として良くまとまっている。トリックに少し無理を感じるが独特の雰囲気で最期まで一気に読ませる(私はこうゆうのあまり好きではないが)。

No.5 8点 haruka
(2011/07/30 21:44登録)
乱歩作品では一番好き。独特の倒錯した世界観を残しつつ謎解きはいたって論理的。余韻を残すラストも良い。

No.4 8点 kanamori
(2010/07/29 18:37登録)
ともに乱歩自身をモデルにしたと思われる<変格探偵作家>大江春泥と、主人公で<本格探偵作家>の寒川とを対峙させる構図の中で、作者のこだわりの××トリックが最大限に生かされています。
物語自体、旧前の耽美的作風でありながら、プロットは理知的探偵小説そのもので、作者の二面性が結実した傑作だと思います。

No.3 7点 りゅう
(2010/05/08 15:15登録)
 登場人物が少ないこともあって、真相に近いことは推定できたが、真相と同じことまでは推定できなかった。
 本作品のトリックについて、横溝正史が「真説金田一耕助」の中で「世界最大のトリックだといまでも信じている」と書いている。古典的なトリックを発展させたものだが、世界最大というのは横溝正史のリップサービスではないかと思う。

(ここから完全ネタバレ。注意!)
 設定に若干無理があると思う。
 大江春泥は一切目撃されていない設定の方が良かったと思う。わざわざ、浮浪人を雇うようなことをするだろうか。この目撃情報が真相を推理するうえでの障害となっている。
 死体が川で流される保証がない。流されなければ犯人が真っ先に疑われる。

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