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ミステリの祭典

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孤島の鬼

作家 江戸川乱歩
出版日1969年01月
平均点7.21点
書評数24人

No.24 9点 みりん
(2023/07/27 01:53登録)
これは名作ですね〜 乱歩良いな乱歩
江戸川乱歩って子供向けなイメージがあって今読んでもつまらないだろ?って失礼な先入観があったんですが、「陰獣」を読んでからイメージが180°変わりました。
「孤島の鬼」では「陰獣」のような粘着質で気持ち悪い文体ではなく、かといって清涼!爽やか!って感じでもなく、どこか不気味で不安感を駆り立てる良い雰囲気でした。

スリラー・冒険・本格・怪奇小説そしてラブロマンス どれも優秀でそれぞれが魅力を打ち消し合わずに、ジャンルが変わっていく面白さを味わえます。

No.23 7点 じきる
(2023/03/26 21:40登録)
怪奇エンタメ系ミステリとしては申し分無し。乱歩ワールドにどっぷり浸れます。

No.22 5点 虫暮部
(2022/08/18 13:18登録)
 何より面妖かつ胸打たれたのは秀ちゃんの手記! 実は偽造だとか叙述トリックだとか、そんなしゃらくさい仕込み無しで素直に読めるのも良い。

 注目すべきはやはりお父つぁんこと復讐鬼こと諸戸丈五郎。直接の出番は意外と少ないが存在感も求心力も抜群。過去の諸々を伝聞で処理するなんて勿体無い。あれだけの設定が背景にあるなら、“不具者製造工場潜入記” も書いて欲しかった。医学的に出鱈目だろうと、作者も読者も気にしないだろう。

 と言う特記ポイント以外は今一つノリが良くない。最後までエンジンはかかり切らなかった。

No.21 8点 YMY
(2021/06/30 21:54登録)
独特の愉悦に満ちた一大浪漫絵巻の世界が繰り広げられ、幻惑される。
前半は、密室殺人と衆人環境の中での殺人という二つの不可能犯罪を軸とする。主人公の友人である医学者がこの謎解きをするが、密室の謎解きは当時の日本家屋の構造についての知識が必要と思われる。
話が進むにつれ、せむしや小人が登場し、怪しさが増してきてミステリというより、秘境冒険小説というノリになっている。

No.20 9点 mediocrity
(2020/07/24 21:34登録)
<ネタバレあり>


最高のエンターテインメントでした。
最初の3分の1が密室物の推理小説。シンプルかつロジカルですばらしい。当時の家屋がイメージしにくいけれど、それは仕方ない。
次の3分の1は怪奇小説でしょうか。アイデアが豊富すぎて圧倒されっぱなし。ストーリー運びも最高。
最後の3分の1は冒険小説。途中までは楽しんでいたんですが、あいつがお宝見つけて発狂という所だけは何だかきれいじゃないなあ。

No.19 6点 バード
(2020/03/18 00:05登録)
本書は序盤から中盤にかけて雰囲気が大きく変わる。普通(?)の殺人事件の捜査をする『D坂』のような序盤と、中盤以降の冒険もの(横溝さんの『八つ墓村』に近い?)が滑らかにつながる見事な構成で、本書は両雰囲気を一冊で楽しめるお得な作品である。
また、かたわ者や同性愛者といった登場人物達が不気味さを醸し出し、作品に良い味付けをしていた。乱歩さんにこの手の題材を書かせると自然と筆が乗るのか、良い感じ。私が読んだ創元推理文庫には竹中英太郎さんの挿絵があるが、これも不気味さの演出に一役買っていた。

ただし、面白いが手放しに褒められない、というのが本書に対する私の総評だ(理由は後述)。
文庫版の背表紙には、本書が『パノラマ島奇談』や『陰獣』に並ぶ乱歩さんの長編代表作、とあるが、コンパクトな『陰獣』の方が本書よりも好き。(『パノラマ』は未読。)
テーマや事件を考えると、7~8点に到達するポテンシャルがあったはずなのだが、惜しい作品という印象。

手放しに褒められない理由
・大胆な省略がある一方、もったいぶる、回りくどい言い回しが多すぎてテンポが悪い。乱歩さんらしいこれらの文章表現は、短編や小噺では語り手に親しみを覚えさせる表現としてプラスに機能しているが、長編で多用されると、早く言えよ!とイライラ。

・序盤の殺人事件の真相がしょぼい。(書かれた時代を考慮すると致し方ないですが。)

・ストーリー展開が全体的にご都合主義すぎる。
例えば終盤で「偶然」生きていた徳さんに「都合よく」再会して、おまけに事件の真相まで語ってもらうというのは中々にご都合主義よね。これ以上の列挙はあえてしないが、他にも都合の良すぎる例はあるように思える。

No.18 8点 ぷちレコード
(2020/03/12 19:28登録)
なんとも魅力的で、恐ろしくも悲しい話。
慶応年代にまで遡る伝奇的な因縁話であると同時に、とんでもないトリックの推理小説でもあり、背筋が凍るほどの恐怖譚でもある。
そしてこの作品、名探偵明智小五郎にもその傾向がほの見える同性愛を、真正面から描いている。

No.17 7点 メルカトル
(2019/11/16 22:42登録)
初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかった―。
『BOOK』データベースより。

江戸川乱歩の長編の代表作と言われているだけあって、確かに面白いです。私なんかは乱歩と言えば短編のイメージが強いですが、或いは小学生の頃に読んだ二十面相の印象が未だに残っていますが、それらを払拭するような傑作だと思います。

三分の一くらいまでは密室殺人、衆人環視の不可能犯罪と本格バリバリで、おおこれは、と唸らせますが一旦それは解決します。ちょっと無理がありますが、奇を衒った発想は認めて良いと思います。その後どう展開していくのかと懐疑的な思いを抱いていましたが、異様な日記で興味を繋ぎその後ホラーや冒険小説の様相を呈してきて、読者を飽きさせません。
後半はやや冗長なシーンもありますが、私好みの怪奇譚に仕上がって、乱歩の本領を発揮しているなと感じました。ただ、物語の流れが強引でかなり偶然性が強い気がします。それでも読む前に想像していたものとは全く異なった妖しい魅力を見せつけてくれました。差別用語が満載で、それが時代を感じさせ怪奇的な雰囲気を盛り上げる一端を担っているような気がしました。フリークスたちの存在が、これまた乱歩らしいなと思いましたね。

No.16 6点 ミステリ初心者
(2019/05/30 20:54登録)
ネタバレをしています。

 いろいろな要素が入った力作だと思いました。純粋な推理小説ではないため、評価点をつけるのが難しいです。
 最初の展開は、本格色の強いミステリ。密室殺人や、逆に大衆がいる中での殺人など不可能犯罪系です。私の日本家屋?に対する知識が浅かったためか、すべてはわかりませんでしたが、まあ大体のところは予想できました。しかし、推理小説としての出来は微妙かとおもいます(笑)。
 中盤からホラーになっていき、スリリングな冒険があり、最後には意外(?)にもハッピーエンドで、一気に読んでしまいました。ある意味今では販売できなような内容でしたね。唯一、道雄だけはかわいそうな最後でした。

 以下は好みの話です。
 一冊の小説としてはそれほど不満はないですが、読者の思考の裏を突く要素や、意味深な伏線とその回収、ミスリードなどがあればもっと好みの作品でした。殺人前に現れていた老怪人について、いろいろ妄想したのですが、いまいち拍子抜けしました。
 深山木があっさり死亡したんですが、花瓶の謎に気づいておきながらなぜ子供に警戒しなかったんでしょうかね? それとも、それ自体には気づいていなかったんでしょうか?

No.15 8点 レッドキング
(2018/11/21 17:03登録)
もちろん点数は大きくオマケ付き。だって乱歩といったら「陰獣」とこれだし。

前半は、二つの密室・不可能トリックが付いた本格ミステリ。
中盤にスリラーな怪奇手記を挟み、後半の冒険サスペンスへ。

「宵待草」、竹久夢二、「ゴンドラの唄」・・・ 大正ロマン時代を舞台に、昭和初期エログロナンセンス文化期に書かれた奇跡的な一冊。
「不具者」「かたわ者」「せむし」「つんぼ」・・・ 障害者差別用語のオンパレードに同性愛者探偵・・・今なら「LGBT差別」とかにもなりかねない・・・の活躍、 やや惜しい出来の密室・不可能トリックも、「最後にひとひねりほしかった」と言う不満も含めて「申し分なし。」 他に何が必要だったろう。

No.14 10点 フランコ
(2018/01/10 15:57登録)
魅力的な導入部。舞台の面白さ、意外な展開、大団円のあとの侘しさ。mysteryとしても小説としても第一級品。何度読んでも面白い。

No.13 8点 HORNET
(2017/06/24 22:32登録)
 乱歩作品にそれほど精通しているわけではないが・・・「That's 乱歩」という感じがする作品だった。いわゆる「変格」とはこういうもの?
 現在なら出版自体が危うい差別用語の連発。先天的な障害、同性愛などエグい要素が盛りだくさんで・・・やっぱり「That's 乱歩」。洞窟を彷徨うくだりなどは、これにインスパイアされた後発も多かったのではと思ったのだが、なにせミステリ史に浅学なので違っていたらご容赦を。
 
 古き良き時代の、よい意味で現実離れしたミステリ。三津田信三にこの継承を期待したいところだ。

No.12 5点 nukkam
(2016/06/24 10:56登録)
(ネタバレなしです) 江戸川乱歩(1894-1965)の最高傑作と評価されることも多い1929年発表の長編作品です。ジャンルミックス型のミステリーで、3分の1が謎解き本格派推理小説、3分の1がスリラー小説、3分の1が冒険小説となっていて彼の多面性がこの1冊に網羅されているのが高評価につながっているのだと思います。不可能犯罪の謎は魅力的ですがトリックはやや微妙(笑)、でも一応合理的に解決しています。とはいえやはり彼の本領はスリラー小説にあったようで、雑記長に書かれた異様な物語や異常な犯人像描写は本書の白眉です。個人的にはあまり深入りしたくありませんが(笑)。

No.11 7点 クリスティ再読
(2016/04/24 23:20登録)
そういえば乱歩はミステリのパイオニアであるのと同時に、ゲイ小説のパイオニアでもあるわけだ...ちょいと行きがかりもあるので、今回そういう読み方もしてみよう。
とはいえ、密室トリックとか衆人環視の下での殺人とかすっかり内容忘れてたよ。それでもねえ「諸戸と簑浦は変だ」とか「めんない千鳥」とか完璧に憶えてた(シャム双生児の件も大丈夫)...評者はそもそもそういう読み方してたようだ面目ない。
本格→怪奇→冒険、って流れはスムーズで、ページターナーって言葉は本作のためにあるような気もするよ。乱歩っていうと意外にネタ数が少なくて同じネタを別作品で何回も繰り返すイメージがあるが、そういや本作のネタって他の作品での転用が少ないんだよね。そこらが「いつもの乱歩」じゃない新鮮さを感じるが...よく考えると「獄門島」がルブランの「三十棺桶島」にヒントを受けてって話があるが、本作もベースは「三十棺桶島」かもね。

でいうまでもなく本作のクライマックスは、名探偵に襲われるワトソン! まあ今じゃBLって便利なものもあるわけで、総受けな名探偵だって誘い受けなワトソンだっているわけだが、BLに先んずること半世紀以上前にこんな小説があり、しかも当時ベストセラーになっているニッポンの出版状況というのはスゴいものがあるな。

No.10 8点 斎藤警部
(2015/07/27 17:20登録)
我が変態人生永遠のバイブル。。 とは惜しくもなり得なかった本書ですが、流石に必読中の必読と言える内容を誇る一冊です。 本格ミステリらしい前半と幻想/怪奇/冒険小説風後半とで随分と様相が変わってしまう構成も大きな魅力。 冒頭に述される「妻の惨たらしい傷跡」の正体は。。まさかの逆転の発想、まさかの伏線!! 私はこの傷跡が「どうやって出来たか」を考えると、たしか何かのミステリ小説の「心理的物理トリック」に、これと一脈通じるものがあったよなあ、とうっすら思うんだけど、どうにも思い出せない。。
しかし、当時は伏せ字で済んだ本作も、現在なら発禁どころか出版不可ではなかろうか、少なくとも日本(語)では。。。。

(これよりネタバレの匂いがします)
それにしてもこの物語の主人公の立ち位置は不思議ですよね。「探偵役は誰か?」が途中までなかなか見えづらい物語だけど、「この主人公は果たしてワトソン役なのか?」「まさか実はこいつが眞犯人なのか?」なんて疑問も浮かんでは消え。。  
パット・マガーに「ワトソン役を捜せ!」なんて趣向の作品、無いんでしたっけ? とふと思ってみたり。

No.9 7点 ボナンザ
(2014/04/07 22:00登録)
陰獣と並ぶ乱歩長編の最高傑作。
密室トリックと相変わらずの変態趣味で、普段のおもしろさに本格が加わった。
ただ、後書きの同性愛の文献あさりとはどういうことなのか・・・。

No.8 7点 蟷螂の斧
(2013/02/07 12:36登録)
東西ミステリーベスト100の27位(1985年版37位)著者のランクイン4作品のうち、本作のみランクアップ。密室殺人、暗号の謎、同性愛、○○男の登場、宝探し、そして強烈な狂気をもった真犯人と盛り沢山の小説。ミステリー部分は前半だけで、やや物足りなさを感じますが・・・。後半は、乱歩独自の世界が描かれている通俗小説的な趣となっていました。もう現在ではこのような作品(真犯人の意図等)は、なかなか書けない時代となっているのではないでしょうか。その意味で、価値ある作品であると思います。

No.7 7点 TON2
(2013/01/21 18:53登録)
講談社「江戸川乱歩全集4」より
 密室殺人、衆人監視の中の殺人、地下の大迷路、暗号と財宝探し、極悪非道な大悪人など、探偵小説のガジェット満載で楽しめました。

No.6 6点 haruka
(2011/07/30 21:56登録)
前半の本格的要素と後半の怪奇幻想のムードがうまく融合した作品で、続きが気になって一気に読めた。

No.5 3点 E-BANKER
(2011/06/21 23:11登録)
乱歩の長編代表作との声もある作品。
いつもの"乱歩節”が堪能できることは間違いなし。
~箕浦金之助は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で、先祖の系図帳を持っていたが、先祖がどこの誰とも分からない。ある夜、初代は完全に戸締りをした自宅で、何者かに心臓を刺されて殺された。恋人を奪われた箕浦は、友人である深山木幸吉に事件解明を依頼するが・・・~

春陽堂版で読了。
これは、だた一言、「好みに合わなかった!」
「これはなんなんだ?」って感じでしたねぇー。
不可能状況で連続殺人が起こる序盤はまぁ問題なしですが、殺人事件の解決が「○○○の殺人」ということでほぼ解決した中盤以降は、正直ちょっと萎えた。
まぁ、これが「乱歩の世界だ」と言われればそのとおりなのでしょうし、本作こそ乱歩らしさが"いい匙加減”で出された作品という世間的評価にも頷けるものはある。
ただねぇ・・・シャム双生児やら○○○男(今では放送禁止用語では?)やら登場させ、結局これが「動機」にもつながっていくんですが、これには相当食傷させられた。
終盤の洞窟シーンは有名ですし、緊張感ある展開はいいんですけどねぇ、ラストは何かあっけないですねぇ・・・
というわけで、嗜好性の問題かもしれませんが、個人的にはお勧めしません。
(ちょっと評価辛すぎかな?)

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