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ミステリの祭典

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YMYさんの登録情報
平均点:5.99点 書評数:430件

プロフィール| 書評

No.430 7点 炒飯狙撃手
張國立
(2026/09/26 21:15登録)
炒飯作りの名手でもある潜伏工作員はローマで標的を殺害した後、何者かに命を狙われるようになる。一方、定年を目前に控えた刑事の老伍は、軍人の連続不審死を追っていた。
一見、コミカルなタイトルだが、中身は硬派な活劇小説で、細部まで凝った銃撃描写を堪能できる。主人公の逃亡劇が世界各地を舞台に点々と繰り広げられ、スケールの大きな冒険小説になっている点も見逃せない。


No.429 7点 邪教集団トワイライトの追撃
ディーン・クーンツ
(2026/09/26 21:08登録)
悪魔がこの世を支配する「黄昏の時」が接近している。そして、その悪魔の化身こそ少年のジョーイ。
狂信的な老婆が尊師として君臨するカルト宗教集団に理不尽のも命を狙われることになってしまったジョーイとその母親の手に汗握る逃亡劇。オカルト、サスペンス、ロマンスと娯楽小説のジャンルを越境しながら、カルト的新興宗教のしつこさをこれでもかと語り、心胆を寒からしめる。


No.428 5点 ロング・プレイス、ロング・タイム
ジリアン・マカリスター
(2026/09/12 21:31登録)
リヴァプールを主な舞台とする変則的リプレイものの巻き込まれ型犯罪サスペンス。主人公のジェンの息子がある晩、家の前で見知らぬ男を刺殺して逮捕される。警察署から深夜帰宅して鑑識に立ち会い、朝目覚めるとなぜか事件前日。事件の背景を調べ、悲劇を止めようとするジェンだが、その後も過去へ過去へと遡り、やがて家族の恐ろしい秘密が明らかになる。
ミステリ的な真相は途中で見当がつくが、自分や夫や息子がだんだん若くなっていく趣向は面白い。しかし結末は都合よすぎる。


No.427 6点 ゴースト・ストーリー
ピーター・ストラウブ
(2026/09/12 21:21登録)
古今の幽霊譚を自家薬籠中のものとして、それらをパロディ、パスティーシュ、引用、剽窃して創作された作品。
本書はゴースト・ストーリーに関するゴースト・ストーリーなのだが、その語られるゴースト・ストーリーが登場人物たちが語る複数のゴースト・ストーリーの寄せ集めで構成されている。極めて知的なプロットを凝った文体で綴った本書は、どちらかと言えば純文学ファンに喜ばれそうである。また宿命の女のテーマとしても優れている。


No.426 8点 蜂工場
イアン・バンクス
(2026/08/25 21:05登録)
タイトルの「蜂工場」とは、大時計の文字盤を迷路に改造し、十二の数字のそれぞれに異なる死の方法を決めておき、その迷路に入られた蜂の行き着く先の数字によって運勢を占う、主人公の少年が作った装置のことである。
フランク少年がそんな残忍な遊びにふけり、小動物を殺すことに喜びを見出すようになったのも、異常な性格の父親のせいでもあり、現に兄のエリックは精神病院に収容されていた。その狂った兄が精神病院から脱出した時から、弟フランクの前代未聞の過去が明らかにされる。ショッキングなラストに呆然。


No.425 6点 ゴーイング・ゼロ
アンソニー・マクカーテン
(2026/08/08 21:13登録)
最新鋭の犯罪者追跡プログラムの実用化準備を進めるCIAと巨大IT企業は、実証実験「ゴーイング・ゼロ」βテストを開始する。十名の男女を選択し、一カ月間見つからずに逃げ切った者には三百万ドルを贈呈するというのだ。スタートから二時間の猶予を与えられ、策を練って逃げ隠れる参加者だったが、次々と捕まってしまう。ところが、真っ先に脱落すると思われた女性図書館司書が予想を裏切るまさかの展開に。
全世界に張り巡らされた追跡の目から、平凡な女性がどう逃げ切るのか。すると大きなサプライズが。しかもその先こそが真の読みどころになっているから驚き。監視社会の是非だけでなく、正義と理想が大きな力を持って歪む恐ろしさを考えずにいられなくなる。


No.424 6点 異能機関
スティーヴン・キング
(2026/07/23 21:35登録)
子どもたちを機械的に支配・消費していく研究所の無機質な狂気と、人としての尊厳を剥ぎ取られていく子供たちの苦痛・恐怖・絶望を濃密かつ閉塞的に描いた前半から逃走と反撃に転ずる後半へ、研究所の職員たちのみならず子供たちまでもが人間性を喪って強大な怪物と化していく。超能力によって生み出された二種の怪物が互いを食い合うという恐怖譚。


No.423 7点 7月のダークライド
ルー・バーニー
(2026/07/23 21:30登録)
寂れた遊園地で働くハードリー・リードは、煙草の火傷痕が体に残る幼い姉弟と出会う。虐待を疑った彼は児童保護サービスに通報するが頼りにならず、ハードリーは自ら探偵まがいの調査を始める。
非力で堕落した印象の若者が、幼い命のために奮闘する中で変化していく様子が温かさと切実さが混じり合う筆致で描かれていく。私立探偵小説風の展開から、意外な着地を見せる終盤に目を瞠った。


No.422 5点 合理的な疑い
フィリップ・フリードマン
(2026/07/07 21:11登録)
一人息子を殺された元連邦検事の弁護士が、その容疑者で息子の妻である女性から弁護を頼まれる。
彼は息子の妻に強い疑念を抱いていたが、孫を宿していることを知ると承知する。そして有能な女性弁護士と共同で、この殺人事件の捜査と公判の準備にかかる。裁判手続きが詳述されており、意外な犯人に至るまでの経過が、主人公の心の動きと並行して巧みに描かれた司法ミステリ。


No.421 6点 ポップ1280
ジム・トンプスン
(2026/07/07 21:05登録)
タイトルの「ポップ1280」とは人口1280の意味で、舞台となるのはアメリカの南部の町、ポッツヴィルの人口を表している。
ポッツヴィルの保安官・ニックの一人語りで、性悪な妻とその友人である愛人、昔の婚約者という三人の女に翻弄されながら、町の悪党どもを淡々と謀殺する日常が語られる。
一見目的を持っているかのように、ニックは人を殺していく。その語り口は、下品極まりない言葉がこれでもかというぐらい何度も出てくる。だが、突然神聖な詩情が流れる瞬間がある。ニックが何者であるか、隠喩に満ちたラストが用意されている。


No.420 7点 生者と死者に告ぐ
ネレ・ノイハウス
(2026/06/22 21:35登録)
罪のない市民が次々に狙撃され、仕置き人を名乗る犯人から声明文が届く。犠牲者を結ぶ環は比較的簡単に発見され、その後で犯人捜しが始まる。
捜査陣は容疑者が多くて絞り切れず、最後まで引っ掻き回される。最後の最後まで誰が犯人か分からない面白さが味わえる。


No.419 7点 警部ヴィスティング カタリーナ・コード
ヨルン・リーエル・ホルスト
(2026/06/22 21:31登録)
主人公のヴィスティング警部は、二十四年間にわたって、失踪したカタリーナの夫と親交を持ち続けてきた。ある種の友情にも似た思いを抱いてきた相手を被疑者とし、真意を隠したまま真相を探らなくてはならなくなった。
静かでありながら徐々に緊迫感を増す展開。タイトルにもなっている失踪当時にカタリーナが残していった暗号を解明するためのさり気なくも大胆な伏線の張り方が見事。


No.418 8点 身代りの女
シャロン・ボルトン
(2026/06/08 21:42登録)
大学入学間近の若者六人が自動車事故を起こして、親子三人の命を奪ってしまう。その中の一人、メーガンが自分だけしかいなかったと罪を被って自首すると申し出る。刑期を終えたら借りを返してもらうことを五人に約束させた彼女は、全員がサインした念書を作成した。それから二十年、出所したメーガンが、社会的に成功した五人の前に現れた。
保身のためにメーガンだけに罪を負わせた五人に共感できないが、彼らがメーガンの出現に戸惑い、振り回される過程はスリリング。メーガンはなぜ一人で罪を背負ったのか、彼女はどんな要求を突きつけてくるのか、それに対して五人はどう応えるのか。思わぬ展開に興味をそそられ、ぐいぐい読まされた。


No.417 8点 耳をすます壁
マーガレット・ミラー
(2026/06/08 21:37登録)
メキシコ旅行に出掛けた二人のアメリカ人女性の一人がホテルのバルコニーから墜落死する事件が起きる。墜死の場に居合わせたもう一人の女性が帰国後に失踪し、私立探偵がその身辺を探るうち、タイトルに絡む一件が重要な意味を帯びて立ち現れる。
追跡劇のサスペンス、二重三重のプロットの捻り、それを彩る豊かなユーモアが満喫できる。


No.416 5点 闇に問いかける男
トマス・H・クック
(2026/05/23 20:32登録)
ニューヨークの公園で、首を絞められ殺害された少女の遺体が発見される。状況証拠によりホームレスの青年アルバート・スモールズが逮捕されるが、彼は頑なに事件への関与を否定する。
主筋は、容疑を認めないホームレスに対する二人の刑事の追求にあるが、その脇にはごみ収集人のエディ・ランブラスコを筆頭に、果たして少女殺しの一件とどう絡んでくるのか判然としない多様な登場人物たちの人生の一夜が同時並行的に進行している。そして二人の刑事たちの事件捜査が一応終結を見た後、静謐な雰囲気から湧き上がる興奮を抑えられない驚きの結末が待っている。
感動を誘う幕切れであることは疑いないが、この解決はあまりにも偶然に頼りすぎていて出来すぎの感は否めない。


No.415 6点 キリング・ヒル
クリス・オフット
(2026/05/23 20:24登録)
雄大な自然が広がるケンタッキー州の田舎町で女性の遺体が発見される。郡保安官のリンダ・ハーディングは、兄で陸軍犯罪捜査官のミック・ハーディングに事件の捜査の協力を依頼する。
筋立てはシンプルで、閉塞的で小さな共同体における犯人探しが軸となっている。だがプロット以上に胸に深く刻まれるのは、自然の細やかな描写とそれに呼応するかのように描かれる登場人物たちの心理。
視点の切り替えも巧みで、主要人物以外の内面にも入り込んでいく部分には、確かな描写力を感じさせる。


No.414 5点 修道女の薔薇
キャロル・オコンネル
(2026/05/11 20:31登録)
他人と心を通わせることを拒む孤高の天才、キャシー・マロリーが活躍するシリーズ。
行方不明の修道女を捜すマロリーは、四重殺人事件に引き寄せられる。同じ頃、修道女の甥である盲目の少年・ジョーナは、何者かに監禁されていた。無関係に見える二つの出来事を結び付ける作者の手際は見事。多少無理は感じるものの、必死に生きようとする少年が魅力的だし、ラストは感動的。


No.413 7点 明日訪ねてくるがいい
マーガレット・ミラー
(2026/05/11 20:27登録)
トムは老婦人から元夫を探してほしいと依頼を受ける。トムは殺人事件に巻き込まれながらメキシコで捜索を続けるが、なかなか本人のもとへ行き着かない。しかもその探索行自体がある成果をもたらしていた。
捻りの効いたプロットと、ウィットとユーモアに富む筋運びが小気味いい。


No.412 7点 死はあまりにも早く
ヘンリー・ウエイド
(2026/04/29 20:41登録)
ブラックトン屋敷の当主のジョン・ジュロッド大佐は、巨額の相続税を回避するため既に財産の大半を息子のグラントに移管していたが、課税を免れるためには贈与から五年が経過する一九五〇年九月二十五日までは生存していなければならなかった。ところが大佐は主治医から肝臓癌で余命六カ月との宣告を受けた。一族の財産を守るため、大佐が亡くなっても弟のフィリップが大佐に変装して必要な生存期間を経過したと見せかける計画を立てる。
倒叙形式で語られる作品で、犯人側、捜査側双方の動静が逐一詳細に記述される。サプライズを呼ぶミステリ的な仕掛けは特にないが、悲劇的な犯罪小説として十分に読ませる。社会性も色濃く、社会的諸条件の変化が相続税という形をとって世襲財産を解体し、特権階級を没落させる。その時代のうねりの中に発生した一つの悲劇が哀惜をこめて描かれている。


No.411 6点 巡洋艦アルテミス
セシル・スコット・フォレスター
(2026/04/29 20:31登録)
枢軸国軍の攻撃により物資不足となっていたマルタ。補給品を運ぶ輸送船団を護送するために英国海軍が派遣できたのは軽巡洋艦と駆逐艦のみ。一方イタリアは超弩級戦艦を含む虎の子の艦隊で襲い来る。
迫力ある戦闘シーンの中に、過酷な戦争の実態と男たちの矜持を、冷徹されど情感豊かに描き出す精緻な筆遣いに胸が熱くなる。

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