home

ミステリの祭典

login
オクトーバー・リスト

作家 ジェフリー・ディーヴァー
出版日2021年03月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 take5
(2024/08/25 11:51登録)
ジェフリーディーバーの作品群は、よく
ジェットコースターに例えられますが、
この作品では私はジェットコースターに
乗り遅れてしまった感じがしてしまい、
一気読みできませんでした。他のかたが
説明されている通り、時間を遡っていく
構成なので、毎章の最後で「あの事か」
と小さい伏線回収が続きます。ジェット
コースターが一気に走らないんですよね

技工は素晴らしいですがもう一度頭から
読んだり後ろからさかのぼって読んだり
する気力が夏の終わりの今はなくて、只
何重にも楽しみ尽くしたい方はよろしい
のではないかと思います。どうでしょう

No.3 7点 Tetchy
(2024/06/22 01:36登録)
ジェフリー・ディーヴァーの久々のノンシリーズ作品である本書は実に変わった構成の作品だ。なんと終章36章から始まるのだ。そう、本書は物語を逆行して語られる。

しかしこれがまたこれまでにない先入観をことごとく覆す展開になっていく。
例えば味方だと思っていた人物の家に血に塗れた死体が転がっている描写があり、実はシリアルキラーで危険な人物なのではと思わされるとさらに章を遡ると彼がオンラインゲームにハマっていて先ほどの死体はゲームの中でのことであることが解る。
いわば本書は時間を逆行することで物語の前提条件や人物設定が後から判明していき、先入観が覆される構成になっている。本書はそんな小技の効いたどんでん返しが数々散りばめられている。

しかしそれでもやはりこの作品は読みにくかった。時系列を逆行することで前章の結末から次章への繋がりがスムーズになされないからだ。例えば30章が終わると次の29章の始まりはその30章へとつながる箇所の数分前とか1時間前に設定されているため、物語の展開が唐突すぎて頭に素直に入っていきにくいからだ。

あと最後に付される目次に書かれた各章題を見ながら、各章の写真を見るとまた別の意味が立ち上ってくるのも憎らしい演出だ。
特に第9章の馬の写真と章題「サラ」は1章を読んだ後だと笑えるし、第14章の骸骨が砂の中から出ている写真と章題「ダニエルの最初の仕事 一九九八年ごろ」を照らし合わせると228ページ3行目からのエピソードが別の意味を伴ってくる。

とこのように様々な仕掛けが読後に立ち上ってくる作品である。
従って本書は読み終わった後に色んな読み方ができる作品だと云えよう。例えば今度は1章から読むと感じ方も変わるだろうし、また同じように第36章から読み返すとさりげない伏線や描写の数々にほくそ笑むことだろう。また目次の章題を照らし合わせながら読むとそれまで気付かなかった写真や文章の意味合いに気付かされることだろう。

No.2 7点 E-BANKER
(2023/03/03 19:08登録)
この物語は第36章から始まる。しかも「逆回し」に!
作者らしい仕掛けに満ちたサスペンス作品。技巧の限りを尽くした作者だからこそ産み出せる作品。
2013年の発表。

~本書は最終章から始まる。ひとり娘を誘拐され、秘密のリストの引き渡しを要求されたガブリエラ。隠れ家で仲間を待つ彼女がドアを開けたとき、そこにいたのは銃を手にした誘拐犯だった。だがご安心、すべては見かけ通りではない。章ごとに時間は逆行し、真相が明かされるのはラスト2章! 前人未到の超絶技巧サスペンス!~

さすがである。
「騙しのプロ」という称号がこれほど似合う作品もそうそうないかもしれない。
本作は紹介文のとおりで、本当に逆回しで展開される。始まりが金曜日で終わりが日曜日。しかし、物語は日曜日から始まって金曜日へ徐々に遡っていく。
そして、本当にラスト2章でカラクリが明らかになる仕掛け! 今まで信じていた現実がガラガラと音を立てて崩れていき、真の姿が目の前に現れる!

これはまぁちょっと誇張しすぎかもしれないけど、「ああ、そうきたか!」って思わず膝を打つような場面が後になってフラッシュバックしてくる仕掛け。これが本作の真骨頂だろう。
ディーヴァーは実際、作品を創作する際に、場面ごとの塊をつくり、それをどういう順序で見せるのが効果的かを熟考するというのを聞いたことがあるが、本作などはまさにその最たるもの。

ただ、やはり分かりにくさはある。逆回しなので、特に中盤は「いったい何を意味しているのか?よく分からん」という場面が頻繁に出てくる。もちろん最終的には理解するのだが、霧の中をさまよいながらの読書になるので、ここで挫ける読者もいそうだ。そういう意味では再読すれば、本作のスゴさも再認識できるのかもしれない(もちろんサプライズ感は全くないけど・・・)

いつものリンカーン・ライムシリーズもいいけど、たまに出るノン・シリーズもやはり良い。最近ネタ枯れ気味なのを心配していたが、「やりようならいくらでもあるよ」と反論されたかのようだ。
ということで、個人的には評価したい。

No.1 6点 HORNET
(2021/07/31 22:15登録)
 ガブリエラは、秘密のリスト「オクトーバー・リスト」と多額のお金を引き換えにと、娘を誘拐された。警察には真相を通報はできない中、協力してくれる仲間と誘拐犯との交渉に。しかし物語は最終章から第1章へ逆をたどっていくという前代未聞の構成で、本事件の真相が時間軸を遡って次々に明らかにされていく。そして最後の(?)第1章―「そういうことだったのか!」
 試みとしては面白いが、通常のミステリにおける推理もいわば「起こったことを逆に辿って真相にたどり着く」過程を描いているわけで、それを「推理」ではなく純粋な「種明かし」にしているだけとも言える。細かい展開においていつも結果が先に来て、そこまでの過程がそのあとに描かれるので、単純に読みにくさもあった。
 とはいえラストでは、冒頭から見えていたものが全く違った意味をもつように覆され、巧みな仕掛けは作者らしさを感じた。

4レコード表示中です 書評