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ミステリの祭典

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レアンダの英雄

作家 アンドリュウ・ガーヴ
出版日1961年01月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 クリスティ再読
(2023/12/03 20:21登録)
ガーヴお得意の海洋冒険スリラー。
そりゃ鉄板、と言っていいでしょう。イギリスの植民地からの解放闘争の指導者を、アイルランド人でヨットマンの主人公が雇われて、囚われの島から脱出させようとする話。なぜ主人公に白羽の矢が立ったか、というと「ヨットマンは大体イギリス人だから信用できない」んだそうだ。そういうデテールのリアルが、いい。
そしてこのヨットマンの相棒としてスポンサーから寄こされたのが、指導者を崇拝する若き解放運動の女性闘士のレアンダ。最初は遠慮もあったが、次第に主人公と息が合ってきて、ヨットでの遠征もスムースに、虜囚の地ユルーズ島へ....

という話。うん、だけど、ガーヴだから。単純な冒険物語じゃないんだよね。でもこのネタはバラすと読者の興を大きく殺ぐ。ガーヴっていつでも不条理なほどの「悪意」が話の急所にあるんだ。そんな悪意が爆発するんだけど、これもまたガーヴだから、悪意の主には因果応報。これを期待していいのがガーヴ。
めでたしめでたし。
(でも皆さんも指摘するけど、幕切れのあと、二人はどうやって脱出したんだろう?)

No.3 6点 ことは
(2022/10/15 14:58登録)
読んでいて、初期の007(映画の方)を思い出した。
(本作の主人公の行動は、ほぼスパイといっていいのだが)スパイといっても、リアルなものではなくて、物語の中にしかいないような、のんびりした感じのスパイ。舞台は、現実にはなかなか行けないアフリカの島で、読者に観光気分を感じさせてくれる。相棒になるのは、(作中に細かな描写は少ないけど)美貌の女性。こう書いてみると、うん、やっぱり007ですね。
物語は、へんな寄り道なく、まっすぐ、すべるようにすすんでいく。するする読めて、一気読み。面白い。
とはいっても、展開は予想がつくし、心理描写には筆は割かれていないので、感動するほどではない。ポケミスで170ページと薄いので、2、3時間で読めて、「あぁ、面白かった」と読み終われる、佳作というところ。
ガーヴらしさとしては、ヨットの操船/行程に関してのデティールが細かいところ。多分、ここが一番書きたかったのだなと思う。あと、ラストのあっさりさは、やはりガーヴ。でも、このあと、主人公はどうするの?

No.2 6点 蟷螂の斧
(2013/11/12 16:38登録)
原題は「A HERO FOR LEANDA」、邦題より原題の方がしっくりしています。サスペンスより、冒険色の方が色濃い作品でした。主人公マイク(ヨットマン)とレアンダ(独立運動の英雄カステラを崇拝する女性・・・マイクの妻役(偽装))との関係(心理)をもう少し描いてくれたら、もっと楽しめたかな?。

No.1 8点 こう
(2008/09/10 23:20登録)
 全く本格作品ではなくサスペンス、スリラー一本ですが非常に面白い作家です。
 瀬戸川猛資氏が「夜明けの睡魔」で推薦していたので読んだ作家ですがその評論通りでした。サスペンスは甘くのんびりした進行、ある意味ワンパターンで結末もかなり甘い、という批評そのものですが話が短くストーリーテリングの力で一気に読ませるというのも概ねあてはまります。
 この作品は主人公がヨットで放浪している若者マイクでイギリス植民地の独立解放運動指導者カステラを幽閉された島からの救出を2万ドル+ヨット一艘の報酬で依頼を受ける。依頼者がつけたカステラの崇拝者の助手レアンダと共に救出に向かうことになる、というストーリーです。
 この作品はガーヴの作品の中では最もミステリ的要素が強い作品で一ひねりがあり非常に気に入っています。この作品も非常に「甘い」展開ではありますし他作品同様ワンパターンではありますが展開もスリリングで面白かったです。ただ推理の余地のある作家ではないので本格色を求めると失望しますが昔のスリラーが合う方なら絶対面白いと思います。 

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