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ミステリの祭典

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七つの裏切り

作家 ポール・ケイン
出版日2022年12月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2023/02/20 16:16登録)
(ネタバレなし)
 登場人物の内面描写いっさいなし、ひとつひとつの叙述は明快ながら、なぜそこでその展開が? がすぐに呑み込めないのが当たり前なほど、ポンポンと、あくまでカメラアイ視点で、作中人物の言動を読者に放り投げてくる作品ばっかり。
 なるほどこれは……(汗)。

 これが本物のハードボイルド小説というのなら、今までオレが読んできた、たぶん数百冊以上の作品は、みんなハードボイルドミステリっぽいキャラクター小説でしかない、と思い知らされる(え!?)。

 木村二郎さんの解説がまた絶妙というか、要は、
・こういう作風ゆえにストーリーはわかりにくい
・複雑な物語を簡潔な文体で語り
・読んだだけで自慢? できる
 ……などなどの主旨? の予防線? 張りまくり。
 まあ、この解説文は、端的に作者の個性&作風を語りきっているとは思う。

 評者は、人物一覧メモを作るのは基本的に長編ばっかで、短編は名前や情報の書き出しをやらないんだけど、本書はこれはもうムリだ、と3作目から書き始め、おかげでいくらか、ほんのいくらか読むのが楽になった。 
 一番わかりやすいのは、その3本目の「パーラー・トリック」。まあ短いしな。
 ドライブ感を含めてそれなりに面白い? と思えたのは最後の「鳩の血」「パイナップルが爆発」の2編。

 評者は 『裏切りの街』は、十何年も買ったまま未読なのだが、そちらも気構えが要りそう? 
 まあ、なんのかんのいっても小説で、エンターテインメントだけどな。

No.1 8点
(2023/01/03 22:46登録)
収録7編中、謎解き要素がきっちりまとまっていると思ったのが『鳩の血』『パイナップル爆弾』の2編でしょうか。一方、『名前はブラック』は偶然が過ぎますし、『〝71〟クラブ』や『ワン、ツー、スリー』は長さの割には話を複雑にし過ぎています。そのように欠点をあげつらうことはできるのですが、禁酒法時代のアウトローな世界を描き出す正にハードボイルドという感じの客観的で簡潔な文章の前には、ストーリー的な不満もどうでもよくなり、高得点をつけざるを得ません。
なお、ケインの長篇『裏切りの街』紹介文にはチャンドラーが「超ハードボイルド」と評したと書かれていましたが、ハードボイルドを超越しているわけではありません。本作巻末解説で訳者でもある木村仁良は原文そのままに「ウルトラ・ハードボイルド」としています。"ultra" は「極端な」の意味ですので、これは納得。

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