空軍輸送部隊の殺人 航空士エリザベス(リジー)・ヘイズ&ジョナサン・ケンバー警部補 |
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作家 | N・R・ドーズ |
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出版日 | 2023年05月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2023/08/28 15:57登録) (ネタバレなし) ナチスの侵攻が、欧州各地に広がりつつある1940年。そんななか、英国ケント州の農村スコットニーの空軍基地に、民間人の女性パイロットだけの後方支援部隊「補助航空部隊」が創設された。ロンドンで犯罪心理学者として博士号を得たエリザベス(リジー)・ヘイズも三等航空士としてその仲間となるが、基地に赴任した彼女を待っていたのは訓練教習所からの仲間のひとりが、正式な顔あわせの前に何者かに惨殺されたという知らせだった。ドイツ軍の空襲時の混乱の隙をつき、切り裂きジャックのような凶行を行なう謎の殺人鬼。リジーは自分の犯罪学の見識を犯人逮捕に役立てようと、スコットランドヤードからケント州警察に出向している中年刑事ジョナサン・ケンバー警部補に協力を申し出るが。 2021年の英国作品。 1959年生まれの作者の処女長編で、当人は30年間の公務員生活を終えたのち、2019年から新人賞に応募して入賞、本格的な作家活動に入ったそうである。 第二次大戦序盤の英国の田舎の世相、女性の立場が弱かった時代色、軍隊周辺の群像劇……などなどの要素をしっかり組み合わせて小説を築きながら、お話は文庫本で560ページほどの大冊。 いやとにもかくにも一晩で読めたのだからそれなり以上には面白いし、リーダビリティも高いが、かたや何はともあれ長い。 犯人の隠し方は良かったと思う所がソコソコ、これはよくないだろ、だって……と感じる箇所がそれなりに。 冷静に見て、探偵役たちの捜査や疑念への踏み込みが、悪い意味で、作者の都合で緩和されているのでは? と思ったりした。あんまり詳しく書くと、犯人の正体を暗示しちゃいそうなので、その辺への文句はホドホドにしておくが。 (ただまあ、真犯人が判明すると、それまでいわくありげだった(それなりの存在感のあった)登場人物の数々が、いっきょに色褪せちゃう、あのパターンの作品ではある。) ちなみに評者は「こういう小説の作り方なら、サプライズを呼ぶ王道の流れゆえ、このヒトが犯人だな」と勘ぐって、今回はまんまと外れた。悔しい(笑)が、一方で作者の方が、先の不満も踏まえて、悪い意味で定石を外した部分も見やり、ちょっとフーダニットのミステリとしては不満でもある。 さすがに売りの要素の大設定「戦時下の女性パイロット部隊の周辺での殺人&謎解きミステリ」という趣向そのものは、なかなか面白いとは思うし、実際に本国でも好評だったようだが、あっという間にシリーズ化されてすでに続編がさらに2冊も刊行されているというのには軽く驚いた。 数十年後の現実で本格的な捜査科学の一分野となるプロファイリング思考をすでに先取りしていたという設定のアマチュア女性探偵レジーと、妻を寝取られた、双子の子供(もう18歳)もいる中年刑事ケンバーとの関係は、お約束の年の差ロマンスに発展。 戦時下、大戦の戦禍がさらに拡大していくこの数年のなか、主人公コンビを次はどのような事件が待つのか、チョット気にならなくもない。 続編の翻訳はすぐに出そうだし、また読むかもしれない。 |