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[ クライム/倒叙 ]
大誘拐
天藤真 出版月: 1978年11月 平均: 7.52点 書評数: 52件

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カイガイ出版部
1978年11月

徳間書店
1990年11月

角川書店
1991年01月

双葉社
1996年05月

東京創元社
2000年07月

No.52 9点 よん 2024/01/18 13:27
紀州随一の大富豪、柳川家の当主・とし子刀自が、三人組の男に誘拐された。ところが、自分の身代金が五千万円と知った刀自は、「見損なうてもろうたら困るがな」と百億円に吊り上げる。かくして、どちらが被害者なのかわからないような誘拐劇が進行し、ついには身代金受け渡しの場面をテレビ中継させるという大作戦まで飛び出す。
奇想天外な発想、ハラハラドキドキの進行、そしてあっと驚くどんでん返し。これぞまさに史上最大の「人を食った話」といえる。

No.51 5点 みりん 2023/04/14 02:53
どこか憎めない3人組と頭脳明晰なお婆ちゃんが生み出す日本中を巻き込んだ誘拐エンターテイメント作品。

No.50 9点 まさむね 2022/04/29 22:00
 純粋に面白かったですね。テンポもよく、ハラハラさせられながらコミカルでもある。そして痛快。登場人物のキャラ設定も抜群です。真の悪者がいないのもイイ。全員を応援したくなりましたね。
 それもこれも「とし子刀自」のおかげ。「とし子刀自」を生み出した作者に敬意を評します。

No.49 5点 じきる 2021/06/06 01:44
私の好みのエンタメからは外れているが、プロットや数字の計算などの作りは丁寧だと感じた。
ラストの落とし所も良い塩梅かと。

No.48 8点 虫暮部 2021/03/25 12:55
 面白い、だからこそ、読むほどに心臓がキリキリ痛くなる。これにどうオチを付ける?
 と心配していたら、思いがけない算盤で意表を突きつつ、人情派の着地点でグッジョブ。ところでベクトルは正反対だけど漫画『バクネヤング』(松永豊和)を思い出しちゃったなぁ。

No.47 8点 斎藤警部 2021/03/12 11:42
“しなくてもええ小細工をして得意がる、いうような子どもっぽいところも、かれらにはあったようでございます。”

けったいやなあ、スリルもサスペンスも無抵抗でユーモアに蹂躙されとるのに、まるで気にならへんわ。ドタバタのハイパーインフレすらアリやで。それはやはり、こう見えておそろしく高いゲーム性に担保された物語だからでありましょうか。そのゲームを支配出来る人物の存在と未来への影響力こそが。。 さて少なからずサスペンスは削がれるものの、終盤に寄るにつれ内側に籠って微熱を放ち始めるスリルはなかなかだ。 まさかのタイミングでまさかの急展開もしびれた。回想の中の回想やないか。。

“・・・・・・が何かひっかかるものがある。”

ああああーー 作中人物のみならず⚫️⚫️も騙しに来たかーー それも小さいのと大きいのと。 ちょっと油断しましたが、こりゃ完全にミステリ小説ですわ。叙述トリックもどきの要素すらある。まさかそんな巨大過ぎて気付きゃしないミスディレクションが。。。。 そこに■■というものが存在するからこそ成立する大犯罪(他人事やおまへんで)。 確かな計算に裏打ちされた或る錬金術は、計算の種類こそ異なるものの、なんとか二人氏某作の身代金奪取トリックを連想させます。

“・・・・・・ここまで来て、「何か変だな」と気がついた視聴者たちも少なくなかった。変なはずだった。”

所々文の意味が取りにくく、読むのに突っかかる箇所もある。だが大きく取ればリーダビリティは高い。
明るいが、スッキリし過ぎないエンドも味わい深い。 個人レベルの悪人を生成させない配慮の裏で、実は或る’巨悪’がうっすら影をしのばす少しの苦味も残すからこそ、よく締まっている。

それにしても、これはある種の◯人◯役あるいは◯役? 更には多重ダニット??

No.46 9点 Kingscorss 2020/08/30 00:50
これは超オススメ。完成度がかなり高く、特に文句のつけようもない。

エンターテイメント性がずば抜けて高く、ミステリーとしては薄味だが、犯罪小説として超絶面白い。

敢えて言うなら40年以上も前の著作なので仕方ないのだが、携帯もインターネットもなく、田舎ではテレビさえない、超高度情報化社会になる前でしか成立しないネタなので、時代背景がわかってない現代人から見ると色々と少し想像しづらいかも。(なんで〇〇しないの?とか、どうして〇〇なの?とか思ってしまうかも)
あと、中盤が少し中だるみするところかなぁ…

しかし、そんなの関係なしに応援したくなる犯人と刀自。100億(40年前の100億ですよ!)も身代金要求して、最後もどうやって話を着地させるんだろうと思ってたら、そうきますか… お見事です!

読後感もよく、まるで一本の映画を見てるよう。実際、自分は未見ですが、実写映画(1991年)もあるそうなのでそちらも機会があれば見てみたいですね。現在の腐った日本映画界が制作するアイドルの宣伝のための実写化と違い、実力派俳優ばかり起用で割と出来がいいらしいです。(面白いけどあまり売れなかったみたいです…やはりアイドルやジャニーズをバンバン起用して原作愛のないクソ映画つくるしかないのか?)

↓山田くん!レッドキングさんの座布団全部持ってって!

No.45 4点 レッドキング 2020/03/09 19:17
大誘拐-だい誘拐-おお誘拐-おおゆうかい-おおゆかい-OH!愉快・・・

No.44 8点 sophia 2019/06/19 21:21
「皆殺しパーティ」を読んだのを機会に再読。オチだけは覚えていましたが、途中の経過など完全に忘れていました。これ要は刀自の人脈が凄いという話に落ち着きます。犯人グループと警察とマスコミの三者の攻防は微に入り細に入り、読むのがなかなか大変です。通好みの作品になるのではないでしょうか。

No.43 7点 HORNET 2017/12/09 19:21
 上手い。仕組みも、文章も、人物造形も。
 自分が一番酔ったのは、ラストの締め方。井狩部長の気づきと追及、正義の結末は予想の範疇だったが、それ以外は…着地点が見事。この力作に脱帽という思いだった。
 物語(犯罪)の最大の生命線は、刀自の圧倒的なカリスマ性、崇拝ともいえる人望。それがなくてはそもそもすべてが成り立たない。よい意味で、現代にはそぐわない話だと思った。掛値なしで「何をおいても絶対に信じる、従う」というまでの信頼、人間関係が現代にあるだろうか?(肉親を除いて)
 物語の構想としても、実際の内容としてもスケールの大きな話。最終的に「悪人」がいない物語に仕立て上げた作者の手腕にも感心した。

No.42 10点 ねここねこ男爵 2017/11/08 21:40
極上のエンターテイメント。めちゃくちゃ面白い。

大地主で大金持ちかつ人格者の八十二歳のおばあちゃんが誘拐される。身代金の当初の予定は五千万円。ところが金額の安さにおばあちゃんが激怒し、百億円!に増額させる。そして頭脳キレッキレのおばあちゃんがなぜか犯人グループを仕切って『自分の身代金』の奪取計画をねり始め…というわくわくする設定。
全体がコミカルに描かれていて、登場人物に悪人もおらず、いつの間にか犯人グループとおばあちゃんを応援してしまう。読後感もとてもよい。
一九七八年の作品だそうですが、この時代に大掛かりな劇場型犯罪を描ききっている先進性はもとより、異常なテンポの良さ、退屈になりそうな部分では対談形式にして読者にストレスを与えないなど圧倒的なリーダビリティが光る。全身全霊全気合をもってオススメ。ツッコミどころとかこまけぇことはいいんだよ!

No.41 8点 メルカトル 2016/10/28 21:49
これは数ある誘拐物の中でも傑作の部類じゃないですか。
全体に緊迫感は感じられないものの、程よいユーモアにおおわれており、各キャラクターも個性的に描かれているのは好感度が高い。中でもやはり主人公のとし刀自は別格である。温かみがありながらも鋭い感性と頭脳の持ち主で、県警本部長の井狩とともに物語を引き締めながら引っ張っていく。
誘拐の過程そのものもマスコミを巻き込んで繰り広げられ、まさに「大誘拐」といった趣はタイトルに偽りなしと言えるだろう。その規模の大きさは前代未聞である。
またなんと言っても印象深いのは終章で、ストーリーに見合った爽やかさを残す、後味の良い締めくくりとなっている。誘拐犯たちも刀自もどこか前向きになれるような、それぞれの身の丈に合った生き方を予感させるラストが、何とも言えない救いを見いだせるのである。

No.40 6点 風桜青紫 2016/03/20 22:45
憎めない誘拐犯トリオのやり取り、ハッスルしたばあちゃんのキャラクター、本気で100億円獲得をやらかすハチャメチャなプロット。面白かった……が、どうも「軽い」という印象が強かった。登場人物がどいつもいい人すぎて、なんだかしっくりこない。しかしまあ、人によっては「すべてにおいて完璧」だとか「エンターテインメントの極み」だとか言ってしまうようだし、きっと趣味の違いなのだろう。ドタバタ劇なら私は筒井康隆の強烈な毒のほうが好きである。

No.39 10点 青い車 2016/02/10 22:10
柳川とし刀自をはじめ、登場人物全員がどこか憎めない者ばかりで、底抜けに楽しく痛快な小説です。誘拐という犯罪を描いているのに陰気さは全くなく、かつハラハラさせられるストーリー展開が素晴らしい。皆が幸せになる結末も爽快な余韻を残し、エンターテインメントとして一流の秀作です。

No.38 9点 ロマン 2015/10/20 14:45
ユーモアがあり、テンポもよく、登場人物がみんな愛すべきキャラクター。 結末も読み手が望むところに落ち着いていると思う。 つっこみどころは多々あるものの、爽やかな名作。

No.37 8点 谷山 2014/08/24 21:28
ミステリとしては確かに微妙かも知れませんが、エンターテイメントとしては抜群です。おばあちゃんや誘拐犯などのキャラ立ちが素晴らしく、この人達の行動を見てるだけでわくわくが止まりませんでした。
誰も不幸にならない結末も良かったです。

No.36 6点 ボナンザ 2014/04/08 01:12
話はかなりおもしろい。荒唐無稽だが、それを書ききるパワーがある。

No.35 8点 蟷螂の斧 2012/12/07 20:24
(東西ベスト100・既読分)誘拐物マイベスト3の一つ。飛行機内で一気読み。誘拐されたおばあちゃんの行動が秀逸。劇場型誘拐物のはしり?。映画も良かったです。主演・北林谷栄、風間トオル(虹の童子・犯人)緒形拳(刑事)

No.34 6点 E-BANKER 2012/02/16 22:41
岡本喜八監督で映画化もされた天藤真の長編代表作。
第32回日本推理作家協会賞受賞作。

~大阪刑務所で知り合った戸並健次、秋葉正義、三宅平太の3人は出所するや営利誘拐計画の下調べにかかる。狙うは紀州随一の大富豪・柳川家の当主とし子刀自。全国に聞こえる資産家で、持山およそ4万ヘクタール、小柄な体躯ながら齢82歳を重ねてなお矍鑠たる女丈夫だという。かくして犯人グループと被害者は運命の邂逅をし、破天荒な大誘拐劇の幕が開く。まさに絶品の誘拐ミステリー~

さすがの秀作ってところでしょうか。
誘拐ミステリーは数あれど、ここまで「劇場型」誘拐劇を追求した作品も珍しい。
誘拐された側であるはずのとしこ刀自の「動機」こそが、本作一番の「謎」となるわけですが、その辺りはまぁ想定の範囲内。
でも警察サイドを完全に煙に巻いてしまう老婆の年季には恐れ入ります。
作者のストーリーテラーぶりやプロットの妙を堪能することもできました。

ただ、思ったほどのカタルシスは得られなかったのも事実。
別段弱点があるわけでもないのに、なんでだろうという気もするのですが・・・
まぁ、一言でいうなら「経年劣化」ってことなのかな?
でも十分に楽しめるエンタメ小説であることは事実でしょう。
(登場人物のキャラ立ちは見事!)

No.33 5点 ようじろう 2012/02/16 17:22
天童真と言ったらこれ。
とはいうが、私にはそれほどハマらなかった一冊。

プロットはよく、誘拐をここまで突き詰めるのはすばらしいが、少々中だるみした感が否めない。
陽気な容疑者たちのほうが、私は好みかな。


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天藤真
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