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[ 本格/新本格 ]
陽気な容疑者たち
天藤真 出版月: 1963年01月 平均: 6.50点 書評数: 14件

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東都書房
1963年01月

KADOKAWA
1980年08月

東京創元社
1995年02月

No.14 6点 ボナンザ 2023/02/23 18:18
最初の長編らしく、天藤のユーモアセンスと思想が出た良作。

No.13 6点 斎藤警部 2022/12/26 01:09
「死んだ当人となんで知恵くらべをせにゃならんのです? 一枚ならいい。二枚ならまだ辛抱します。三枚とは何です! ひとをバカにするにも程がある!」

蓋然性もぐらつく微妙な密室構成。この構成要素の面倒臭さは最早ユーモア演出のために強いて画策されたものかと思えば。。。ん!?

嫌われ者で飛び切りの変人である田舎の鉄工所老社長が、労使対立の先鋭化する只中、トーチカ風のエキセントリックな密室にて変死。容疑者多数、事件の後も何故かご陽気に宴会など開いている。
主人公はこの鉄工所清算のため東京より派遣された計理事務所の「事務員」だが、何度もしつこく「計理員さん」と呼ばれちゃうのはなかなかのユーモア醸造ポイント。

「つづけて死ぬわけがないでしょ。一ぺん死んだら、次の晩はもう死んでるわけだもの。」

でもまあ、ユーモア言うても時々仄暗いところもあり、そこがまた魅力。 労組が活躍したり、障碍者雇用の話も出るが、社会派要素は薄いか。 巡査との物侘しい、短くもやけに万感押し寄せる別れのシーンは記憶に残ります。。

"空がパッと明るくなった。西の山塊の影に沈んだ日が突然のように最後の光を放ち、満天の雲が火がついだように赤々と燃えたのである。眼下の桃谷村は一面に赤い余映を浴びて、この世の竜宮城のように輝いた。生れてから見たこともない、壮大な夕焼けだった。"

主人公と探偵役、更には犯人、おまけに証人、(実はもう一人、扇動者?)との関係性がなんとも、微妙というか、斬新、なのではなかろうか! 真相の独特なスッキリしなさ加減を、その斬新さで宥めているような気もするのです。

「……実のところ、わたしがあなたの役割に確信をもったのは、さっきあなたと会ったあの瞬間です。」

メイントリックについては、ア●●のアレとアレの要素をうまいことリンゴ味オブラートで包み込んだような。。あと古典密室のアレとか。。何気に「●●続」にも通ずるアレトリックも無いとは言えませんな。。

No.12 5点 虫暮部 2020/08/20 17:46
 ベースの部分をしっかり持っていて、その上で軽妙な表現を上手にコントロールしているような筆致は好感度大。ユーモア小説として高く評価したいのだがしかし。
 
 ネタバレしつつ書くが、ミステリとしては何か変だ。
 これは、不測の事態によって計画変更を余儀なくされ即興的にプランBを実行、と言う話である。
 さてそれでは、当初の計画で、侵入する予定だったのは誰か? 誰もいないのだ。探偵役の解説でもその点がいつの間にかあやふやになっていて、もしや読者を煙に巻くことがあの会話の目的だったのか。

 もう一点。“目撃者”がいるけれど、あの存在は何なのか。見て、告げて、かと言って犯人に絡むわけでもない。あの人は何がしたかったのか。作者はあの人で何がしたかったのか。

No.11 7点 nukkam 2018/01/01 00:49
(ネタバレなしです) 千葉県で開拓農民をしていた天藤真(1915-1983)は高木彬光や鮎川哲也よりも年長ながら作家デビューは遅く作品数も多くはありません。おまけに作風がユーモアミステリーと喧伝されることもあってか知名度では大きく劣ります。しかしその実力は非常に高く、ユーモアの影に複雑な仕掛けを潜ませた作品があります。1963年発表の長編第1作である本書でもその実力は十分に発揮されています。三重密室の中で発見された死体を扱った本格派推理小説ですが、殺人の証拠も自殺の証拠もなく自然死としか考えられません。しかしある人物がこれは殺人だと事件関係者たちを告発してからサスペンスが高まります。真相だけを評価すると感心できない読者もいるかもしれませんが、意外なところに謎解き伏線を忍ばせてあったことに気づかされるプロットは軽妙でありながら計算高いです。

No.10 6点 蟷螂の斧 2016/10/01 13:58
著者のデビュー作。後発の作品に比べれば、ユーモアはあまり感じられなかった。本作にユーモアがあるとの書評が多いということは、後発の作品がいかに面白いかの証左ですね。本作はのんびりした、ほのぼの感のある作品といったイメージです。白眉は、結婚式で明らかにされる元警察医の視点とそのロジックです(感心、感心)。

No.9 7点 ロマン 2015/10/24 23:12
山奥の旧家を舞台に社長急死事件に遭遇した主人公の計理事務所事務員。社長と対立していた従業員たち、社長に複雑な感情を抱く身内たち。自然死か?他殺か?いずれの可能性もある推理小説。とにかく自然死なのか他殺なのかが終盤までわからない。最後の結末は少々意外だった。まさかあの人が関わっていたとは!物事の答えは1つではないこと。常識にとらわれ過ぎてはいけないことを実感した小説だった。

No.8 8点 ようじろう 2012/02/16 17:20
ユーモアあり、驚きあり、とても楽しかった。

この人には読んでいる人を単純に楽しませる技術がある。
結末は今となってはお決まりのものだが、ここまでうまくやって簡潔に終わらせるのには相当な努力があったはずなのだ。いやはや感服。

ほかの作品も読みたい。

No.7 6点 測量ボ-イ 2010/05/02 09:08
名作「大誘拐」で有名な著者の(おそらく)デビュ-作。
本編も嫌味のないユ-モアで満ち溢れ、楽しく読める一品
です。
ただ密室トリックの解決はやや不満でしょうか?けれども
ラストは無難に締めくくれていると思います。

No.6 8点 itokin 2009/12/08 18:13
いやアー、こうゆうの大好きです。ユーモアたっぷりで笑いながら一気読みしましたトリックも無理ないし終わり方も良しです。

No.5 6点 江守森江 2009/10/07 06:33
ユーモア溢れる作風が軽いと思われた時代のデビュー作な為か埋もれていた。
更に、角川文庫化で少し注目された頃に同系統多作な赤川次郎がデビューし埋もれが長期化した。
しかし、そんな事は関係なく、非常に長閑で陽気な登場人物達に癒される。
天藤真作品には癒される為に何度も読んでしまう“そこらのミステリ”には無い魔力がある。

No.4 7点 E 2009/08/02 12:14
何と言うのでしょうか・・「陽気な」と付く通り、緊張感があまり無い風に感じていました。
意外な真実ではありましたが、ミステリー度もそんなに濃く無かった。
しかし、うぅ~む・・・・・何故でしょう?

何か、面白かったんです(爆)

No.3 6点 こう 2008/07/03 00:04
 天童真第一長編です。人物像や作風はさすがに古めかしいですが(昭和37年作)それさえ気にならなければ楽しめる作品だと思います。密室のトリックよりもラストの結婚式での探偵役の語るロジックが気に入っています。
 他作品同様ユーモアあふれる作風ですがそのためある人物がその場にいる不自然さにも気付きにくくなっており巧くできていると思います。しかもこの第一長編よりその後更に高水準の作品を出しており天童真は全作品お薦めです。 

No.2 6点 マニア 2008/03/29 05:16
ユーモア溢れる魅力的な登場人物をここまで上手く書き分ける作者の筆力に脱帽。それだけで1、2点プラスしてもよいほど個々のキャラの面白さと、ユーモアのセンスが感じられる。

ただ、人物は良いけど情景描写が少し分かりづらかったかな。イメージしにくい文章が多かった。
肝心のミステリ部分は、トリックが少々バカバカしい感じもするが、意外な真相は一読の価値に十分値する。

No.1 7点 Tetchy 2008/01/25 22:59
デビュー作とは思えぬほど卓越した文章。
密室殺人が起こるが終始のどかなムードで物語が展開するのがこの作者の人柄が表れていて、いい。
ただ真相は第1作目にして気負いすぎの感もあり。
でも登場人物全てが良くて、ホント「陽気な容疑者たち」だった。


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