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[ 短編集(分類不能) ]
雲の中の証人
天藤真 出版月: 1982年03月 平均: 7.00点 書評数: 5件

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KADOKAWA
1982年03月

東京創元社
2001年05月

No.5 5点 ボナンザ 2021/10/04 20:30
ユーモラスで皮肉で残酷な様々な人間を描いた短編集。

No.4 7点 虫暮部 2021/08/12 11:33
 創元推理文庫版で。
 ミステリ的なネタとしては事前に読めてしまうものが散見される。しかし書き方が巧妙なので、その行動は間違いだと判っていても語り手に絆されてしまう。参ったネ。
 表題作の主人公、探偵社から弁護士のところへ出向して自腹で調査させられる、との設定が良く判らない。最後までずっと気になった。

No.3 6点 蟷螂の斧 2021/04/24 16:14
①雲の中の証人 8点 弁護士からあり得ないアリバイ証人を捜すよう仰せつかった。絶対無理!しかし、奇跡は望むところに起きる???。途中の推論が絶品で、これが真相だったら大どんでん返し(笑)
②逢う時は死人 5点 横領の発覚を恐れ自殺?。日記にはNなる女性の影が・・・初期の作品で、ユーモア系ではない。偶然がご都合主義かなとの印象
③赤い鴉 6点 一過性精神障害で無罪の判決。その真似をしようと試みるが・・・シリアス系
④公平について 6点 最初の裁判で、窃盗犯は証拠がなく無罪に。さて、2回目は?ユーモア系
⑤悪徳の果て 6点 悪徳産婦人科の話。解説の「秘められた愛を見詰める作者の優しさが伝わってくる」より嫌悪感の方がつよく後味は悪い。フォローできるような人物ではない(苦笑)
⑥或る殺人 7点 題材は社会派風ですが、著者らしい雰囲気の作品でした。こんなとんでもない裁判官が昔はいたのかなあ・・・

No.2 8点 2021/03/16 04:08
 『犯罪講師』に続く角川文庫版第二作品集で、〈日本の刑事弁護士では五本の指に折られる〉〈つるつる禿なのに顔の面積とおよそ不釣り合いな大きなヒゲを生やした〉北弁護士シリーズ連作四編に、法曹もの二編を加えたリーガルミステリ特集。収録作は年代順に 逢う時は死人/公平について/雲の中の証人/赤い鴉/悪徳の果て/ある殺人 の六本。創元推理文庫版『雲の中の証人 天藤真推理小説全集15』は前者から「悪徳の果て」を除き、私が殺した私/あたしと真夏とスパイ/鉄段/めだかの還る日 を加えたものだが、未収録作品を漏らすまいとする余りややとっちらかった印象を受ける。今回はよりタイトな編集の角川版で読了した。
 表題作は便宜上中編扱いだが、分量・内容的にも〈短めの長編〉とした方が相応しい堂々たる雄編。三河島のアパートで製薬会社の会計課員・長崎登が殺され、三千二百万円が奪われた事件の容疑者・酒井松三を弁護するものだが、目撃者によればアパートから該当の荷物を持って出入りした人間は松三しかおらず、しかも金策に窮していた筈の彼は入手不明金二百五十万円を携帯していた・・・というもの。
 どう転んでもこりゃ無理だよ、という状況があれよあれよと覆り、山場では『遠きに目ありて』シリーズ「完全な不在」をさらに大掛かりにしたような、弁護士渾身の大技が犯人に炸裂する。同じ手口の繰り返しはやや頂けないが、二つの鍵に仕掛けられた暗示トリックなど実際的かつ巧妙で、なおかつメインの発想は出色。一向に取り上げられないのが不思議なくらいの秀作である。シリーズのみならず本集で抜きん出ているのはコレ。
 大神卓名義で発表された「逢う時は死人(「塔の中の三人の女」に続く短編三作目!)」、ユーモラスな「公平について(「雲の中~」のゲストキャラ、矢来裁判長が登場する)」、一家五人殺傷事件を扱った「赤い鴉」等、他の連作はレベルは損ねぬといった程度だが、シリーズ外の二作「悪徳の果て」と「或る殺人」は、法の裁きが取りこぼした被疑者の人間性を感動的に描き、いずれも読み応えがある。特に半身麻酔で身動き出来ない人妻を犯す、ふてぶてしい悪徳医師の物語と思われたストーリーが後半から結末にかけて反転する前者には、この著者ならではのぬくもりと余韻があって味わい深い。また後者の次の文章など、他の誰に書けようか。

 小柴七郎は作業の合間にはなるべく高いところへ登って仕上げてきた道路を眺めるのが好きだ。明るいグレイの滑らかな肌はぬり立ての絵具のように見え、作りかけの真白なガードレールはまるで発光体のように眩しく日を照りかえしている。
  〈こんな長い、平らなやつを、みんなおれたちが作ってるんだからな〉
  土工夫ならだれも、口にはしないが腹の底にもっているひそやかな自慢気分だ。

 このような描写があるからこそ、一方的にそれを奪うものへの憤りが映える。『大誘拐』や『殺しへの招待』には流石に届かないが、著者の数ある佳作の中でもその次の座、ベスト・ファイヴを競える傑作中短編集と言える。

No.1 9点 Tetchy 2008/02/10 12:52
天藤版リーガル・ミステリ集とでも云おうか、9編中5編が法廷を舞台にしたミステリでそのどれもが傑作。
設定から結末まで一貫してユニークな「公平について」はもとより、中篇の表題作の何とも云えない爽快感。
「赤い鴉」、「或る殺人」の哀愁漂う結末。膨大な人生の喪失感を思わせる深い作品。
もう少しこのシリーズを読みたかった。


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天藤真
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