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[ 警察小説 ]
陰の季節
横山秀夫 出版月: 1998年10月 平均: 6.50点 書評数: 16件

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文藝春秋
1998年10月

文藝春秋
2001年10月

No.16 6点 パメル 2021/06/30 08:30
D県警が舞台になっている4編からなる短編集。
表題作「陰の季節」の主役である人事担当の二渡警視がどの編にも顔を出し、D県警シリーズ全体の主人公として位置づけられている。事件を追う刑事が主役が多い警察小説の中、この作品は全ての主役が管理部門の人間である。
「陰の季節」天下り先のOBが今年で辞めることになっているのに、辞めないと言い出す。このトラブルに対処する人事の二渡だが、相手も大物でつけ入る隙を見せない。事件捜査、犯人逮捕ではない管理の仕事のため心理ミステリとなっているが、ミステリ的な謎解きがあるのが嬉しい。トラブルの真相は意外なもので、パズルと心理ミステリの深さが相乗効果でストーリーを豊かにしている。これは長編で読んでみたかった。
その他3編も、警察内部の動きを探り陰の部分を炙り出すという点は共通しており、警察内部の描写も詳細でリアリティがある。天下りや昇進、立場や醜聞というモチーフを通して描かれ、人間の野心や欲望、弱さやしたたかさが伝わってくる。

No.15 5点 いいちこ 2018/05/02 13:50
いずれの作品も小粒ではあるものの、一定の水準を保っているのは間違いない。
ただ、ご都合主義的な偶然や登場人物の不可解な言動等、リアリティの弱さ、主人公の推理が論理性に乏しく、飛躍が散見される点で、ミステリとしてのツメの甘さが散見される点は気になった。
読了順が逆になったことで、著者の後日の飛躍を実感させられる読書となった

No.14 6点 simo10 2013/05/30 22:59
氏の「半落ち」が面白かったことと非常に読み易かったことから他の作品にも興味を持ちました。
そんな訳でまずは当たり障りのないシリーズものを順番に読んでみようということにしました。
最近話題の「64」をシリーズ作品とするD県警シリーズ第一弾。以下の四話で構成されます。

①「陰の季節」:真相も面白かったが、人事の内情に触れられているのも新鮮でした。天下りって普通なんですね。
②「地の声」:冴えないベテラン警察官を貶める怪文書。その真意にまんまと私も引っ掛かりました。
③「黒い線」:警察という男社会における女性警察官の立場というか扱いがいかに厳しいものであるか分かります。
④「鞄」:秘書課のお話。出世のために、邪魔な人間の弱みを握るどころか、弱みを作り出してしまう。実際ここまでやるかどうかはともかく、警察の出世競争はそれだけ激しいことは伝わった。

著者の作品は主に警務課を舞台としているんですね。非常に新鮮で楽しめました。事件はなくとも謎の提示から真相の解明までの流れはミステリの味わいがありました。

No.13 6点 まさむね 2013/02/09 21:29
 D県警シリーズ第一作品…というよりも,作者にとっての第一作品集ですね。「警察小説」には違いないですが,刑事は登場せず,人事や監察,議会担当などの管理部門の人間が各短編の主役を務めます。
 「組織」を描かせるとホントに強いですよねぇ。各短編とも,謎の提示や終盤の転換が秀逸ですし,心理サスペンスという面でも楽しめます。その後の作者の活躍を十二分に予感させる作品集と言えましょう。
 ちなみに,登場人物の行動の中には「いくらなんでもそこまではしないだろう!」と突っ込みたくなるものもありますね。

No.12 6点 2012/09/03 11:13
警察の管理部門を舞台とした、今までにないスタイルの警察小説。
各短編の主人公はD県警の警務課、監察課、秘書課などに所属する刑事以外の警察官であり、かれらの身辺で起こる、事件にならないような人事や無断欠勤などが謎解きの対象となっている。
一編一編、なるほどなるほど、これはおもしろいと感心しながら読みきったものの、殺人のない日常の謎的な内容だけに、警察が舞台とはいえ、小道具を少し変えれば一般企業に置き換えた企業小説としても成り立ちそうだな、と思ってしまった。

「陰の季節」は想定外の結末に驚きはしたが、話が出来すぎの感があった。「地の声」はドンデン返しがあり、技巧的には抜群だが、リアリティが感じられず、やや興醒め。婦人警官を主人公に据えた「黒い線」の目新しさはよかった。「鞄」のきびしいラストには驚かされた。
総評すれば、技巧面では楽しめた。

一時期読んでいた企業小説、経済小説は比較的身近な設定となっているだけに、自分の身辺と比較してしまい、いくらなんでもそれはないだろうと感じて、読後の感動はあまりなかったが、本書もそれと似たような感覚があった。
横山作品、特に短編は優れているとは思うのだけど、年とともにすこしずつ感じ方が変わってきた。

No.11 4点 ムラ 2011/09/10 03:42
全体的に重い感じだが面白かった。警察小説だが犯人を捕まえる形式じゃなく内部の人事を扱う感じが新鮮。
題名にもあるとおり「影の季節」が一番よかった。
オチは比較的わかりやすいのがちょい残念。
キャラがどれも似たような感じなのでときどきごちゃごちゃしてしまったことも残念。

No.10 6点 haruka 2011/05/29 11:56
主役に刑事以外の警察官を配置しながらしっかり推理小説しており、各話どんでん返しまで用意されている。人間ドラマとしても面白い。

No.9 7点 HORNET 2011/01/16 13:02
 D県警を舞台としたシリーズ短編。それぞれの話で,共通した人物が違う役割で出てくるので,通して読むと面白いです。どの作品も優れていますが,タレこみの内部調査にかかわる腹の探りあいを描いた「地の声」がよかったです。

No.8 8点 Tetchy 2010/12/23 19:39
横山氏は殺人課を使わずに事件性を持たして警察小説が書けることを証明した。ここに出てくるのは警務課で主人公それぞれが就いている職務は人事、監察、婦警の管理、秘書課と事件に直接的に関わる部署ではなく、警察の内務をテーマにしながらも事件を描くという点が新しい。
しかも扱われる謎は云わば“日常の謎”なのだ。
辞任の時期が来たのに、なぜ辞めようとしないのか。
悪意ある告げ口としか取れないメモ書きの真意とその犯人は誰か。
前日に手柄を立て、マスコミにも大きく扱われ、一躍メディアの主役になった若き婦警はなぜ翌日無断欠勤し、失踪したのか。
ある県議員が議会で本部長を陥れるためにぶつける質問、即ち“爆弾”の正体とは何か。
これらが警察組織で起これば、事件性を伴い、背後に隠された事件・犯罪を浮かび上がらせ、十分警察小説になりうることを横山秀夫氏は見事に証明した。これは正に新たなジャンルの誕生とも云える発想だ。綿密な取材と落ち着いた文章と過不足ない引き締まった内容で横山氏はそれを高次元のレベルで成し遂げたのだから、確かにこれは歴史的快作といえるだろう。

No.7 6点 江守森江 2010/07/13 17:50
韓国ドラマの不発から昼間に再放送される機会が格段に増え、表題作を含みドラマを先に観た。
主演の上川隆也も悪くないが、久々にドラマより原作の方が楽しめる作品だった。
「臨場」でも思ったが先に原作を読みたかった(ドラマ優先で久々に敗北感があった)
今まで読んだ限り横山秀夫の短編にハズレはない!

No.6 7点 E-BANKER 2010/04/30 21:23
D県警を舞台とした連作短編集。
粒ぞろいの作品集といっていいでしょう。
①「陰の季節」: 警務課二渡警視が主人公。二渡は他の3作にも登場する本書のキーパーソンです。本作は、元刑事部長が天下り先を辞めない理由について、思わぬラストが控えています。
②「地の声」: 監察課新堂警視が主人公。ラストの捻りが効いていてなかなか考えさせられます。
③「黒い線」: 婦人警官にスポットライトが当てられます。女性から見ればこういうのは許せないのでしょうね。
④「鞄」: 秘書課柘植警部が主人公。組織の中で勝ち上がる厳しさに慄然とさせられます。
普通の「警察小説」は現場の捜査官(刑事とか)を主人公として事件の解決を追っていくのに対して、本書は警察内部の抗争や組織の中の争いを扱っている点が大きく異なっており、そういう意味で「今までなかった警察小説」というべきなのかもしれません。(解説の北上氏も触れてますが・・・)

No.5 7点 白い風 2009/07/02 23:57
題名の「陰の季節」を含め通称エースと呼ばれる警務課調査官二渡が事件を見守り、判断を下す…。
どの作品も事件というより人事異動を含め昇級など警察の裏話が中心になってきます。
原作が短編なだけに先に数本ドラマで先に見ていたのが余計分かり易かった。
ただ、先にドラマを見た影響もあるけど、二渡をもっと全面に出した方が面白かったかも。

No.4 7点 おしょわ 2008/12/07 15:27
どの作品も質が高いですが、ちょっと捻りすぎてる感じもあってやや減点。
あれだけでの推理ができるんだったら二渡は刑事やった方がいいんではないかと。

No.3 7点 あびびび 2008/04/06 14:19
警察内部の心理サスペンス。謎解きより、なぜそのような疑惑が生まれたのかを辿っていく。ミステリーではないが、内容がある意味新鮮。いずれも話を広げていくほどのものではないし、短編がいいですね。

No.2 8点 ひこうき雲 2007/05/27 21:55
横山作品で最初に読んだ作品。
サスペンス、推理小説を期待して読んだら、警察を舞台にした人間ドラマが描かれた内容だった。警察も企業と同じで、組織なのです。いい意味の裏切りでした。。
他にはない新しい感覚を感じました。

No.1 8点 ギザじゅう 2004/01/10 23:53
警察小説というとあまり良いイメージを持っていないのだが、これはすごい!警察外部ではなく内部の事件での出世争いにおける自我のぶつかり合いや、公と私での自分の立場での悩み等々を描き出す作者に確かな実力を感じた。
単純に本格としてのホワイダニットとしても充分面白い。


横山秀夫
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