皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 警察小説 ] 深追い |
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横山秀夫 | 出版月: 2002年12月 | 平均: 6.25点 | 書評数: 12件 |
![]() 実業之日本社 2002年12月 |
![]() 実業之日本社 2005年02月 |
![]() 新潮社 2007年04月 |
No.12 | 6点 | ALFA | 2025/02/14 07:23 |
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都心から離れた三ツ鐘警察署を舞台とする7編の連作短編集。ミステリー味は薄め。
なかでは「引き継ぎ」がお気に入り。サスペンス+辛口人情話の趣がある。 「いま最も脂の乗った泥棒の一人・・・」の一文が笑える。そして「トニーの店」(笑)。横山秀夫のユーモアセンスもなかなか。 表題作「深追い」は、謎は魅力的だが主人公の心情と同様にキレが今一つ。 舞台が職住超接近の三ツ鐘署だけに、勤め人社会の息苦しさがひしひしと伝わってくる。身につまされる読者も多いだろう。 ところで横山作品には昭和の匂いがあると思っていたが、この閉塞感はやはり平成っぽい。昭和はもっとラフでユルかった。 |
No.11 | 7点 | Rina | 2025/02/10 11:27 |
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とある地方にある「三ツ鐘署」を舞台とした連作短編集です。
以下、各編の簡単な書評です。 ・『深追い』(8点):「亡くなった夫のポケベルにメッセージを送り続ける未亡人」という何とも魅惑的な謎とエッジの効いた真相。本短編集の冒頭を飾るにふさわしい名編です。余談ですが、読んでいる最中連城三紀彦の『花葬シリーズ』がなぜかずっと頭の中に浮かんでいました。 ・『又聞き』(8点):夏の海で起きた悲劇。過去を探るうちに浮かび上がる真相は……。素晴らしいです。 ・『引継ぎ』(8点):伝説の泥棒と父の遺志を継ぐ警察官の物語。緊張感のあるストーリー展開と捻りの効いたラストには息を吞みました。個人的にこの話が本短編集のベスト。 ・『訳あり』(6点):出世コースから外れた刑務係長、定年間近の巡査、悪い虫がついたと噂される捜査二課長、警察官になれなかった男。様々な人々の物語が終盤、見事ひとつに収斂していく様は圧巻でした。 ・『締め出し』(6点):凄惨な強盗殺人事件の事件解決の鍵を偶然手にしてしまった生活安全課少年係の若い巡査。警察組織の息苦しさと暗号解読にも似た華麗な謎解きが楽しめました。 ・『仕返し』(6点):ひとりのホームレスの死からここまで話が広がるとは……。ラスト、主人公のとる行動がいいですね。 ・『人ごと』(5点):花好きな老人の奇妙な言動に隠された真意が徐々に明かされていく一編。これまでの6編に比べミステリ度は低いですが、その分人情譚として面白いです。読後感もよく、おだやかな心持で本を閉じることができました。それにしても最終話の重要なアイテムが花とは、また『花葬シリーズ』が脳裏に……。 全体を振り返っても非常に質の高い短編集だと思います。警察官を主役に置いた重厚な人間ドラマと短いページ数の中で展開される鮮やかな謎解きが7回も楽しめ、満足感が高いです。 警察小説好きの方だけでなく、キレのある短編ミステリを求めている方にもお勧めです。 |
No.10 | 6点 | パメル | 2021/11/25 09:28 |
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職住一体の「三ツ鐘警察署」を舞台に7編からなる連作短編集。
「深追い」なぜ、その妻は事故死した夫のポケベルに夕食のメニューを送り続けるのか。小さな謎を軸に鮮やかなツイストを決めたクライムストーリー。 「又聞き」十五年前に幼かった三枝を助けようとして溺死した小西。大人になり写真家となった三枝は、ある写真に疑惑を抱く。ユニークな設定と謎解きに一工夫ある人情譚。 「引継ぎ」泥棒刑事と異名をとった盗犯一筋の父を追って警察官になった尾花。見慣れた手口が再現された時、功名心は引退した泥棒に容疑の目を向けさせる。最後の一言で、主人公も読者も救われる。 「訳あり」ある巡査の定年後の受け入れ先に悩む滝沢。果たして人事のプロは内部告発された不祥事を丸く収めることが出来るのか。多重的に組み上げられたプロットが心地良い。読後感も爽やか。 「締め出し」少年係の鬱屈が、単独捜査に三田村を駆り立て、ある人物の呟きは青春の誇りをかけた推理へと彼を導く。ダイイングメッセージものに通じる謎解きは小粒ながら納得出来る。 「仕返し」ホームレスの死が招く疑惑。閉じられた世界の論理が人々を狂わせた時、人生はやり直せるのか。決断の重みに唸ると同時に、ほろ苦い感動を呼ぶ。 「人ごと」草花博士と呼ばれる会計課長・西脇は花屋の客の落とし物を届けに行く。そこに見た人間模様。孤独なお年寄りの思いに感動。 |
No.9 | 5点 | simo10 | 2013/06/19 22:57 |
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今作の舞台は三ツ鐘署。都心から少し離れたところの様です。以下の七話で構成されます。
①「深追い」:コンヤハカレーデス。そのメッセージの真相は何とも悲劇的なものでした。 ②「又聞き」:命と引き換えに自分を救ってくれた人とその遺族に対する感情の描写がリアル過ぎて嫌だ。ラストに救われて良かったが。 ③「引継ぎ」:泥棒にも職業意識的なものがあるんですかね。どうでもいいが拘置所に空きがないというのは、それだけ治安が悪いってことなんじゃないかと思ってしまうのでもう少し説明がほしいところ。 ④「訳あり」:上司に逆らったら出世に影響するとか、どんだけ腐ってんねんと思います。あと当然のごとく行われている天下りもどうなんだろうと思う。 ⑤「締め出し」:捜査に関わっているのに重要な情報は本部だけでかこってしまう。しょうがないっちゃしょうがないが嫌だなあ。 ⑥「仕返し」:マスコミにバレたら責任問題に発展→出世に響く→隠蔽する。著者の作品を見ると警察ってこんなことが日常茶飯事のように思えてくる。 ⑦「人ごと」:自分の遺産相続で娘達に揉められたらかなわんですな。寂しい展開だが最後にちょっと救われます。 これまでの短編集と同様、刑事部以外の部署でのお話です。ただこれまでの作品よりもさらに若干暗めな印象です。相変わらずどれも読み易いですが個人的にヒットした作品はありませんでした。 |
No.8 | 6点 | ayulifeman | 2012/06/21 01:48 |
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社会人としての矜持とプライベートの懸念事項。
そのあたりが最後天秤にかかってそれぞれの主人公がそれぞれの答えを出すって感じですか。 どの方も人間臭くて好きでした。 みんな頑張ってるよね。 |
No.7 | 6点 | haruka | 2011/05/29 12:22 |
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相変わらずの安定感。 |
No.6 | 8点 | HORNET | 2011/01/10 12:00 |
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氏の短編集全てに通ずることですが,この作品もまた,一つ一つのストーリーに描かれた,主人公の組織人や男としての生き方が感じられて読み応えがあります。「訳あり」「締め出し」が,ともにラストが胸のすく思いでした。 |
No.5 | 7点 | E-BANKER | 2010/07/18 23:05 |
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お得意の地方警察署(本作では三ツ鐘署)を舞台にした連作短編集。
①「深追い」=死者のポケベルにメッセージを送り続ける美貌の未亡人の真意は? なかなか悲しいラストです。 ②「又聞き」=ラストはなかなかいい話に。 ③「引き継ぎ」=個人的には本作のベスト。「トニーの店」のネーミングセンスが笑えます。 ④「訳あり」=これもラストがいい。サラリーマンとしては是非こうありたいと思わせます。 ⑤「締め出し」=ある老人の”独り言”に驚愕! ⑥「仕返し」=これも面白い。ラストの捻りも見事。 他1編の全7編。 相変わらずの安定感。どの作品も「起承転結」が効いていて、読み手を作品世界に引き込みます。 登場人物が実に人間臭いのも魅力なのでしょう。 |
No.4 | 6点 | まさむね | 2010/03/19 21:03 |
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お得意の県警+個人心理+短編モノ。
地味で渋い短編ぞろいだが,すべての作品が平均点を軽くクリア。この安心感というか安定感はすごい。 |
No.3 | 5点 | おしょわ | 2008/10/28 22:18 |
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読み終わった後にタイトルがうまくつけれられていると感じます。
でもきれがちょっと弱いかな。 |
No.2 | 7点 | あびびび | 2008/06/04 18:31 |
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お馴染み、一連の警察官ドラマ。ほとんどが心理戦だが、内情に詳しい作者ならでは。どれも苦なく読める。
佳作揃いで特別な話はないが、クオリティは高いと思う。 |
No.1 | 6点 | ひこうき雲 | 2007/05/26 23:58 |
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三ツ鐘警察署を舞台に、組織に生きる人間ドラマの七編。
実に面白い横山作品の中では、割と落ち着いた感じの内容。 この作品の中では『人ごと』は、なかなか温かく感動できます。 |