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[ 警察小説 ]
顔 FACE
横山秀夫 出版月: 2002年10月 平均: 7.00点 書評数: 14件

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徳間書店
2002年10月

徳間書店
2005年04月

No.14 8点 ぷちレコード 2023/11/29 22:44
D県警秘書課広報広聴係に転属した瑞穂は、記者クラブへの対応や防犯訓練の手配をしたり、犯罪被害者支援対策室で一般からの相談電話を受けたりの毎日。その中で、婦警という仕事の意味をもう一度見つめ直すことになる。
広報の仕事や、似顔絵捜査経験者ならではの視点を活かした謎解きが堪能できる他、本書の事件はどれも社会と女性の関りがベースにあるものばかりだということに注目。
警察という男社会の中、時にはマスコットとして、時には広告塔として、組織に利用されてきた婦警たち。彼女らが正当な評価を得るため、悪戦苦闘する様子には共感する人も多いはずだ。

No.13 7点 パメル 2022/04/27 08:51
主人公は、婦人警官の平野瑞穂。以前は、刑事事件で重要な役割を果たす鑑識課で、目撃者からの聞き取りを元に似顔絵を作成していた。しかし今現在の部署は、複雑な事情もあり広報課である。その平野瑞穂が刑事とは別の立場、別の視点で捉え鑑識課で培った観察力と似顔絵の能力を活かし事件の解決に導いていく5編からなる連作短編集。
「魔女狩り」署内のどこかに潜むニュース・ソースを追う。作者自身の経験に裏打ちされた「心理的密室」の妙。
「決別の春」何でも相談テレフォンに掛かってきた心の悲鳴。多発する放火事件と復讐に怯える娘の記憶。誰が騙し、何を偽るのか。こじんまりとまとまった人情譚。
「疑惑のデッサン」38度の気温が招いた行きずりの殺人。平野の後釜が描いたあまりにも似すぎた似顔絵は何を意味するのか。「顔」という連作のテーマが最も際立った作品。
「共犯者」抜き打ちの銀行強盗の防犯訓練を行っていた時、同じ銀行の別支店で本物の銀行強盗が発生。被害者とその動機に鮮烈な印象を残す。
「心の銃口」女性でありながら、署でトップクラスの射撃の名手が拳銃を奪われる。平野は得意の似顔絵で犯人に迫ろうとするが、思いがけない真相に辿り着いてしまう。長編になりうるプロット。
子供の頃から婦人警官になりたかった平野瑞穂は、正義感にあふれているが男社会である警察組織という現実に上手くいかないことが多い。周囲の軋轢や失敗にもめげず、前を向く姿勢は共感が持て応援したくなってくる。爽やかな読後感をもたらす作品集。

No.12 7点 HORNET 2017/12/23 12:58
 私の中では一番の短編の名手。無駄なく、無理なく、謎を絡ませながらまとめ上げる手管はさすが。今回も楽しませてもらった。
 「共犯者」「心の銃口」が秀逸。特に後者は、失敗や裏切りなどのひっくり返しにより真相にたどり着く過程は非常によかった。婦警間の人間模様、という点では「疑惑の似顔絵」も心に残った。
 女性蔑視に耐え、立ち向かう警察内での婦警の葛藤が本編の一つのテーマだが、主人公・瑞穂は常にそのことが頭にあり続ける。どんな社会もいまだに男性優位の風潮は残り続けているが、特に警察という社会はその色が濃いのだろうな、としみじみ感じた。

No.11 5点 いいちこ 2016/08/20 18:44
凡庸な作品ではないものの、1個の読物としても、ミステリとしても、作者の他の作品と比較して見劣る印象

No.10 6点 まさむね 2015/04/09 22:48
 警察モノに違いないのですが、「婦警」が主人公という点で、横山作品の中でもドロッと感が少ないというか、優しさが勝ったタッチとなっています。しかし、中身は婦警やその周りの人物の心理を見事に描いており、捻りも効いています。さすがです。個人的ベストは、最終話の「心の銃口」かな。

No.9 6点 simo10 2013/06/10 23:18
D県警シリーズ第三弾。第一弾の短編「黒い線」で登場したお手柄似顔絵女性警察官平野瑞穂が主人公とした短編集です。以下の五話で構成されます。

①「魔女狩り」:警察側からするとネタ元は裏切り者のようなものなんですね。密告があるでもなし、ちょっとタイトル負けな内容。
②「訣別の春」:<なんでも相談テレホン>に移動した平野巡査の優しいお姉さんぶりが発揮されます。
③「疑惑のデッサン」:自分が就きたいポストに自分より実力が明らかに劣る者に就かれたら嫌ですねえ。実は逆もまた然りで劣る方は奪われまいとビクビクしてしまうもんなんですね。
④「共犯者」:抜き打ちで銀行強盗対策の訓練というのがあるんですね。監査課というのが憎まれ役というのもよく解りました。
⑤「心の銃口」:この著者の描く刑事はどれも荒っぽいが、それがなかなか好きであったりする。犯人のイメージはシズちゃんを連想してしまった。

女性警察官が主人公ということで、これまでの氏の作品に比べて、グッと華やいだ印象があります。どれも読み易いですが個人的ヒット作はありませんでした。平野瑞穂は私のイメージでは綾瀬はるかだったのですが、すでにドラマ化されていて仲間由紀恵が演じてるんですね。

No.8 5点 koo± 2011/09/08 11:45
相変わらず口当たりはくどい。しかし脆弱さのなかに芯の通った強さを秘めたヒロイン瑞穂が等身大で魅力的。しなやかに頭を垂れながら強風でも倒れない瑞々しい稲穂。その名前に著者の密かな思いが込められている。

No.7 9点 ウィン 2010/09/25 12:04
いつもの横山作品とは少し違って、これでは主人公が婦警。まあ警察小説という点では同じだが、いつものオヤジくさいものから、サッパリした婦警が主人公のものとでは大違いである。
でも、サッパリした、とは言いながらも警察内での婦警の扱いはヒドいものであるようだ。
男女差別が未だに警察内で行われているということである。
そしてもうひとつ、似顔絵婦警というのはすごいと思った。わずかな手がかりから犯人そっくりの似顔絵を描き上げるのである。
もはや常人ではない。

No.6 8点 E-BANKER 2010/09/08 23:31
本作もやはり絶品の短編集。
「陰の季節」収録の1編「黒い線」で脇役として登場したD県警の婦人警官、似顔絵のスペシャリスト平野巡査を主人公に据えた作品集です。
①「魔女狩り」=警察対マスコミ。作者得意の設定です。
②「決別の春」=意に沿わぬ配置換えをされた平野巡査の心の動きが手に取るように分かります。(同じく、組織の中で働く人間として)
③「疑惑のデッサン」=女の対決。男には分からない世界かもしれません。
④「共犯者」=意外な犯人と意外な動機。短編には付き物ですよね。
⑤「心の銃口」=結構な長さで中篇と呼ぶべき。婦人警官と銃・・・なかなか難しいテーマですし、それだけ読む者の心を撃ってきます。
全5編+αあり。
とにかく、作者の筆力には脱帽です。主人公はもちろんフィクションなのですが、そんなことは忘れてしまい、思わず「頑張れ!」と応援したくなってしまいました。

No.5 8点 show 2009/03/13 08:29
主人公の心の葛藤と事件が上手く結びつけられていて、一気に読んでしまいました。

No.4 6点 おしょわ 2009/02/28 23:34
ごくフツーの出来です。
他の作品と比べると若干薄いかな。

No.3 7点 akkta2007 2007/07/27 16:38
横山作品では珍しい?・・・婦警を主人公とした作品であった。
警察シリーズの作品の中で、女性の婦警が主人公となるのは珍しく、読んでいても新鮮な感じがした。
男社会の中での女性の心理、また立場的なものの考え方などとても上手く表現できているように思えた。
なっとく出来る作品であった。

No.2 8点 ひこうき雲 2007/05/26 01:45
若い女性が主人公のせいか、他の横山作品とは違い、優しいやわらかい感じがしました。横山作品は楽しめるけど、どれも重く、硬い感じがしますからね。
この作品は、男社会の警察機構で働く女性警官が受ける偏見や矛盾が描かれていますが、直向に頑張る主人公平野瑞穂の姿が潤いを与えてくれます。
ドラマ化されたTVを観ていたせいもあって、主人公の平野瑞穂は仲間由紀恵を思い浮かべて読んでました。ちなみにドラマで共演していたオダギリジョーの役は、小説の方では登場しません。

No.1 8点 とも 2005/05/03 11:22
ドラマ版も好きなんだけど、こちらの方がさらに気に入りました。投身自殺の死体の似顔絵を描くときの描写がかなり強く印象に残りました。目を背けたくなる気持ちを押さえ込んで、プロとして線を引き続ける姿・・・文字だけなのに映像が浮かんでくるように感じました。


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