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[ 本格 ]
モルグ街の殺人・黄金虫 -ポー短編集Ⅱ ミステリ編-
新潮文庫
エドガー・アラン・ポー 出版月: 2009年04月 平均: 6.11点 書評数: 9件

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新潮社
2009年04月

No.9 7点 みりん 2024/11/04 09:48
ゴシック編に続きミステリ編ですが、編集者の趣味か?非ミステリも混じっています。3読目ともなればかなり余裕を持って読める。隠し場所の意外さに気を取られてサラッと流していたが、何気にデュパンは数学の公理は異教の伝説みたいなもんだとディスりまくっているのを見逃してはいけない。代数学専門の兄に読ませたら発狂しそうな内容だ。ポーは知り合いの数学者に大嫌いな奴でもいたのだろうか、それとも詩人としてのプライドか。論理の『モルグ街の殺人』、心理の『盗まれた手紙』と記憶しておこう。

『群衆の人』は人間観察が趣味の語り手がとある老人に惹かれて尾行するお話。都会人なら誰しもが持つ感情、罪悪の権化、ただ集団にいるだけでは幸福も人生の意味も見出せないといった群衆の本質たるものが描かれているのだと思うが、まあよく分からん。翻訳もイマイチなそうなので他のでも読んでみるかな。
目玉は『ホップフロッグ』これが読みたかった!江戸川乱歩の『踊る一寸法師』はこれに影響を受けたらしいので。道化師とは基本的にいじられキャラなわけですが、それも度がすぎるとこういう結果を招いてしまうという教訓ですね。小学校の学級文庫に置いておくべきでしょう。ましてや彼は親友への暴力がきっかけになっているので、まだ幾分か優しいのですが…
ホップフロッグは身体能力の欠如。それに対して、オランウータン(またもや笑)に仮装させたことは知性・品性の欠如を揶揄した皮肉でしょうか。天井を見上げるときたねえ花火が見えるという映像的に派手なラストは『踊る一寸法師』よりはるかに印象に残りました。

No.8 5点 ことは 2024/02/10 19:06
久しぶりにポーを読む。ポーほどの古典になると、個々の作品の評価は難しいので、評価は編集を主にしたもの。
「モルグ街の殺人」は、いくら評価しても足りない、ミステリの原点だなぁと思う。今読んでも、伏線や展開が現代の作と見劣りしないのは、すごいよなぁ。
「黄金虫」は、何度読んでも良さがわからん。つまらなくはないが、なぜこんなに評価が高いのか、わからない。
アマゾンの評などにもあるが、たしかに翻訳はよくないと思う。「群衆の人」は、本サイトにも登録されている集英社の「黒猫 エドガー・アラン・ポー短篇集」で読んだときは抜群によかったのに、今回はいまひとつ。読み比べてみると、やっぱり集英社版がいい。
ひとつ、本新潮社版で意味が読み取りずらかった部分を拾い出して比較すると、こんな感じ。
・新潮社
「格好のいい連中は枚挙にいとまがないが、しかしこのところ大都市を騒がせている腕利きの掏摸の一味だということは、たちどころにわかってしまった」
・集英社
「見たところ威勢のいい連中もたくさんいたが、これは大都会にきまって出没するハイカラ趣味の掏摸たちであると、すくぐにわかった」
全体に、こんな感じで差異があるので、「群衆の人」は、ぜひ集英社版で読んでほしい。

No.7 7点 ミステリ初心者 2021/12/17 00:38
ネタバレをしております。

 ミステリ好きを自称するなら読んでおかねばならないとおもい、購入しました(笑)。解釈が難しい話もありましたが、レベルの高い短編集だと思いました。

・モルグ街の殺人
 ミステリを好んで読んでいると、一度はネタバレされてしまう超有名作品ですね。世界最古のミステリとする説もあるそうですが、最古とは思えないほどの驚きの展開で、むしろ現代にこそありそうなネタですね!

・盗まれた手紙
 これも有名作品ですね。ただ、やっぱり警部は本当に見つけられないのかなと疑問に思ってしまいます(笑)

・群衆の人
 解釈が難しい話でした。RPGゲームで、重要なNPCだと思いきや、モブだった時のような感じでしょうか(笑)。この人は孤独恐怖症なのでしょうか?

・おまえが犯人だ
 さすがに展開は読めましたが、ラストは衝撃の追い詰め方でしたね。精密検査などが無い時代?なのか、自白でないといけなかったのでしょうかね。

・ホップフロッグ
 トリペッタにワインをかけられた瞬間、すさまじい怒り?で歯ぎしりをして、その怒りを抑え込み、王様を殺す仮面舞踏会のネタを提供する姿が、どことなくクールに思えます(?)。道化師というところがいいですね。
破滅的なエンドかと思いきや、逃げおおせたのですね(笑)。

・黄金虫
 意味ありげな不気味な虫、黄金虫が重要か…と思いきや、それを包む紙が重要とは(笑)。暗号物は読んでいてすごいなと思う反面、自分には解けるわけがないと謎を放棄してしまいます(笑)。

 amazonなどの評価を見ると、どうやら訳が良くないみたいですね…そういえば、なんだか意味がつかみづらいこともありました(笑)。

No.6 6点 Kingscorss 2020/08/09 19:00
ミステリーの古典なので面白い面白くないは抜きにしてミステリー好きなら読むべき本。

内容はもちろん現在の凝りに凝った構成、トリック等には敵うものではないが、歴史上初といわれるこのミステリーから現在のミステリーまでの発展を感じられて感慨深い。この時点で現在まで脈々と続く”探偵モノ”のストーリー構成が完成されているのが驚愕の一言。

他には短編6本のうち、いくつか不思議な読後感のものがあるが、巻末の解説を読むとそれらを経て初の探偵ものである”モルグ街の殺人”が生まれたとわかり、これまた製造の工程を見るようで感慨深い。黄金虫も同様に初?の暗号モノとして燦然と後世にまで残る傑作短編として必読である。

ただ、トリックとかとは別に、言い回しが嫌にもったいぶったり、内情の知悉を知らぬものにドヤ顔で自慢するが如くしゃべりまくるのが時々イラッとくる。あとは昔の小説なのでしょうがないが、前述の言い回しや言葉選びで読みにくい部分が多い。

No.5 5点 いいちこ 2018/08/23 15:56
表題作「モルグ街の殺人」は、毀誉褒貶はあっても真犯人の意外性において突き抜けた作品であり、高く評価したい。
それ以外の作品は、全体として古さを感じさせ、短編集全体としてはこの評価

No.4 5点 青い車 2016/11/14 17:27
 高校時代に「推理ものを読むならポーぐらい押さえてなきゃダメだろう」という、よくわからない義務感から一応目を通しました。あともうひとつ、『黒猫/アッシャー家の崩壊』も読みましたが、おそらくその面白さ(あるいは歴史的意義)を半分も理解できなかった思い出があります。今になって書評を投稿したのは、ゴシック小説ならともかく、ミステリーの祖とされる本書ならまだ僕にも批評する資格があると思ったからです。
 モルグ~の方は密室殺人の祖でありながらその解決の型破りさが良くも悪くも意外でした。先駆者からしてここまで突飛なアイディアを使っているとは。良いポイントはとにかくその意外性で、ネタバレなしで初心者が読んだならまず間違いなく見抜けないでしょう。悪いポイントはうまく説明できないのがもどかしいですが、密室の看板を掲げるには(別にポーが唱えた訳ではないですが)その密室が実は脆弱だった点です。
 黄金虫は冒険小説的な趣もある作品で、世界初の暗号を使った小説として偉大です。あの江戸川乱歩も『二銭銅貨』をこれをお手本にして書いています。ただし、モルグ~にしてもこれにしてもまだ読者参加型の小説という概念がないため、伏線やミスリードの面白さはもちろんありません。
 どちらも今の水準で見るとやっぱり古びているのですが、ポーのむしろ評価すべきは僕にはあまりわからなかったゴシック篇の方かもしれません。

No.3 6点 2011/12/26 11:13
『モルグ街の殺人』・・・こんな古典ミステリーでもネタバレされていると面白みが半減してしまうことが、今回の初読でよくわかった。ネタに触れていなければ、おそらく驚愕(お笑い半分)だったのだろう。
この作品と、『盗まれた手紙』と、『おまえが犯人だ』とはいかにもミステリーの原型といった感じ。それだけで高い評価が得られるだろう。

『群集の人』・・・日常の謎の原型なのかと思いながら読んだ。私も身の回りでよく出くわすんですよね、同じようなことに。毎日すれちがうが名も職業もわからない人。その人が一体何者なのか、好奇心から調べたくなる。結局推理するだけで終わるけど、その推理がまた楽しい。本編は結末になにかあるのかと期待していたが、ラストはよくわからなかった。不思議な小説だった。

『ホップフロッグ』と『黄金虫』は、少年少女向け作品といったところか。前者は復讐モノだが童話(寓話)のスタイルとなっている。後者は暗号モノ冒険小説。いずれもワクワク感が十分にあり、広義のミステリーといえるだろう。『黄金虫』の暗号ミステリーとしての評価はどうだろうか、むずかしいなぁ・・・。たしかに歴史的価値はあるのだが。

本書は新訳だそうですが、こういう作品集は古臭い日本語文体で読んだほうが雰囲気が出るのでは、という気がしました。

No.2 7点 おっさん 2011/09/03 10:18
新潮文庫の新訳(巽孝之・編訳)ポー短編集、その二巻目は、ズバリ<ミステリ編>です。意外にこのコンセプトのポー・アンソロジーは希少なので、これが“定番”となるような内容を期待し・・・ガッカリしました。
収録作は、以下の6篇。
「モルグ街の殺人」「盗まれた手紙」「群衆の人」「おまえが犯人だ」「ホップフロッグ」「黄金虫」

一番の問題は、見てわかるように、デュパンもの第二作「マリー・ロジェの謎」を、外していること。その理由を、巽氏は解説の中で、「現実に起こったメアリ・ロジャース事件を作家自身が解決しようと試行錯誤しながらぶざまに失敗しているためである」と説明しています。
筆者の率直な感想は――阿呆か。
こう書くと、一部の奇特な住人から、次のような声が聞こえてきそうです。
「だけど、おっさんもさあ、マリー・ロジェは退屈とかコメントしてたじゃん」
はい、確かに(『ポオ小説全集3』のレヴュー参照)。
でもですね、<ミステリ編>を謳うのであれば、ポーの最狭義のミステリたるデュパン三部作(謎と論理のエンタテインメントの、ホップ・ステップ・ジャンプ)を押さえるのは、基本のキ。ここで個人の主観はいりません。
常識的に考えて、これに「黄金虫」と「お前が犯人だ」を加え、そののち初めて、ページ数を勘案しての、編者のパーソナル・チョイスが許されるべきでしょう。
「マリー・ロジェ」を省いて、「群衆の人」と「ホップフロッグ」を採ったのが見識だ、という意見(があるとして)に与することは出来ません。
まあ、「群衆の人」に関しては、一ミステリ・ファンとして、収録自体に異議はありませんが(よろしければ、『ポオ小説全集2』のレヴューをご参照ください)、復讐劇の「ホップフロッグ」は・・・どうかなあ。巽氏は結局、これって「モルグ街」と×××××××つながりなんだよね、と、それを云いたかっただけじゃないのかしらん。

で、問題点その二は、訳文。
じつは、本書にまず期待したのが、かつて芦辺拓氏が指摘してミステリ・ファンに知られるようになった、「モルグ街」の旧訳に多く見られる、ある設定上の誤訳(原書房『本格ミステリーを語ろう! 〔海外篇〕』参照)が修正されていることだったのですが、その点、相変わらずでした。
巽先生、このコンセプトで本を編むなら、文学も良いですけど、もう少しミステリ周辺に目配りしましょうよ。
で。
訳文についてのこの先は、畢竟、好みの問題と断っておきますが、現代的に訳そうとした部分が、逆に違和感を感じさせ、裏目に出ている気がしました。
たとえば「モルグ街の殺人」の犯行現場が「中から鍵のかかった密室」だったり(ミステリのテクニカル・タームとしての「密室」が定着するのは、もっとずっとあと)、「盗まれた手紙」で、デュパンが「ライティングデスク」の蓋を開け(19世紀のフランスです)、取り出した手紙を警視総監が「速読」(!)したりすると、筆者は頭を抱えてしまいます。
「お前が犯人だ」で、「グッドフェロウ氏がパーティを展開した区画」という表現が出てきたときには、意味をとりかね、丸谷才一訳を確認しましたよ。するとそちらでは、「グッドフェロウ氏が一行を案内した地域」。これなら誰でもわかります。それにしてもパーティって・・・R.P.G.かよ。

最後に良い点についても触れておくなら、それはもちろん、書誌的なデータが万全であること。
たとえば「盗まれた手紙」。解説で、初出が<ギフト>1845年版であると明示するのは当然として、そのあとカッコして、同書が(1844年9月刊行)であることまでフォローしてくれています。こういう配慮は、本当に有難い。

採点は、失望の大きさから5点以下にしたいのが本音ですが、とりあえず基本的な作品レヴェルの高さと、そうした資料性を買って、不承不承の7点となりました。

No.1 7点 E-BANKER 2011/01/21 21:42
E.A.ポーのミステリー(的な作品も含む)作品集の新潮文庫版。
小難しい例え話などがいろいろ挿入されていて読みにくいですが、やはり歴史的意義は感じさせてくれます。
①「モルグ街の殺人」=言わずと知れた第1号ミステリー。もちろん、現代的感覚からすれば穴だらけの作品なのですが、「密室」や「意外な犯人」などその後の作品に与えた影響は計り知れないものがあると感じます。
②「盗まれた手紙」=これまた言わずと知れた作品。ポーミステリーの最高傑作という評価も多いようですし、こういう発想自体に作者の力量を感じてしまいます。
③「群衆の人」=「!?」 哲学的な話なのでしょうか? 高尚過ぎてよく分かりませんでした。
④「おまえが犯人だ」=これは傑作。オチが何とも言えずブラックで、インパクト抜群。
⑤「ホップフロッグ」=寓話的な勧善懲悪話。よくある話のように思いましたが・・・
⑥「黄金虫」=これも有名な暗号モノ。暗号の仕掛けについては今となっては古典的ですが、何とも言えぬワクワク感を抱かせます。
以上6編。
珠玉の作品集と言っていいかもしれません。現代の目の肥えた読者にとって満足できるかといえば疑問符なのですが、ミステリー好きならば、やはり一度は手にとって読むべきでしょう。
(①②⑥辺りは有名ですが、④⑤もなかなか深い作品だと思います。)


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