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[ 短編集(分類不能) ]
ポオ小説全集4
創元推理文庫
エドガー・アラン・ポー 出版月: 1974年09月 平均: 7.60点 書評数: 5件

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東京創元社
1974年09月

No.5 6点 メルカトル 2023/03/29 22:56
アメリカ最大の文豪であり、怪奇と幻想、狂気と理性の中に美を追求したポオ。彼は類なき短編の名手である。推理小説を創造し、怪奇小説・SF・ユーモア小説の分野にも幾多の傑作を残した彼の小説世界を全四巻に完全収録した待望の全集!
Amazon内容紹介より。

こんな私でも『黄金虫』や『黒猫』は知ってますよ。小学生の時に読みましたからね。どちらもなかなか面白かったです。『黄金虫』はまさか暗号が絡んでくるとは思ってませんでした。記憶もあやふやでしたし。『黒猫』はよく覚えています、特にラストはやはり忘れられません。そして『盗まれた手紙』、デュパンが登場した時は思わずおっ!?となりました。が、オチを知っていたので余計に、自身の推理を正当化する様な御託を並べていたのが、何だかなあという気持ちになりました。警察はそんなヘマはしませんよねえ。

『メロンタ・タウタ』はややこしい天文学を比較的分かり易く解説してくれて、かなり興味を持てましたし、『ミイラとの論争』のオチは好きです。その他はストーリー性や情緒と云ったものと無縁の世界で、見た事もない熟語が出てきたり、作者のやりたいことが全く分からない作品もありました。それはつまり、自分にとっては意味のない、厄介な作品群であり、読んでいていい加減嫌気が差してきたのが正直なところです。又、全体的に会話文が極めて少なく、文字も小さく改行も少なくびっしりと連なる文字列を前にして、読む気力が失せてしまい、辟易としました。

No.4 8点 クリスティ再読 2020/01/26 00:27
創元ポオ全集4巻目も「黄金虫」「黒猫」「盗まれた手紙」「お前が犯人だ」「アルンハイムの地所」などなどなど、名作目白押し。
子供の頃に読んだジュブナイルのポオが「長方形の箱」「ちんば蛙」を収録していて、有名作以上に印象的だった記憶がある。やはり好きだなあ。「長方形の箱」は推理可能な真相がある話だから、語り口を変えればミステリになると思う。「ちんば蛙」は様式的な復讐譚だけど、ここにもオランウータンが!あと「天邪鬼」あたりだって、換骨奪胎すれば立派にミステリに入るようにまとめれると思う。
デュパン第3作の「盗まれた手紙」は、確かにすっきりまとまった好編とは思うんだが、「モルグ街」「マリー・ロジェ」の混沌に論理とパターンを見出して...というまでの帰納的な部分ではなくて、天下った演繹推理になるため、ある意味評者は「ポオらしくない」印象がある。ポオって感覚的に収集されたデータの混沌から、独自の論理を引き出す力業に今回の再読では評者感銘を受けているんだ。D**大臣=タレーラン、G**警視総監=フーシェみたいに見えたのは評者の見方がヘンかな。
まあ、ポオの「デテールの魔」が一番に発揮されたのは「アルンハイムの地所」とか「ランダーの別荘」で、ここには「デテールしかない」。ポオはデテールで最高の力量を示す作家なので、「黄金虫」の暗号だって、デテールの混沌の中にある言語の秩序を感得して...という帰納法として捉えるべきなんだと思うし、ポオの帰納法を支えるのは、ほかならぬデテールへの偏愛なのだと思う。幻想以上に幻想的な感覚の作家として読みたいと思う。
まあ一般にミステリ枠に入らない作品でも、ポオの作品のかなりの部分評者はミステリだと思っているよ。ヘイクラフトとか乱歩の時代は、狭く取るのが探偵小説概念の確立に必要な「手続き」だったのだろうけど、5作品とか狭く取る必要は、今はないだろう。

No.3 8点 蟷螂の斧 2019/09/27 17:20
(再読)各短篇(21篇)を一言に要約すれば「意外な犯人」「ユーモア」「ブラック・ユーモア」「悲劇」「夢落ち」「パロディ」「どんでん返し」「怪奇」「幻想」「復讐」「盲点」「犯人の心理」「暗号」「冒険」などとなった。現在ミステリーの基礎用語でもあり、著者が探偵小説を創造したということで間違いないのであろう。
「黒猫」「黄金虫」は別途評価済み。
「タール博士とフェザー教授の療法」9点 精神病の新治療は失敗したらしい。院長の行動に注目。
「盗まれた手紙」8点 1986版東西ミステリーベスト100の第64位 心理に関する嚆矢的作品。
「ちんば蛙」8点 残酷だが好きな作品。
「ウィサヒコンの朝」8点 ミステリーには該当しないが、何故か心を打たれた。
「お前が犯人だ」8点 探偵小説の原形。死人がしゃべる?。笑えます。
「シェヘラザーデの千二夜の物語」7点 千夜一夜物語はハッピーエンド。では千二夜は?。
「長方形の箱」7点 なぜ彼は箱に自分を縛りつけ海へ飛び込んだのか?。余韻のあるラスト。

No.2 7点 ボナンザ 2014/04/24 17:31
何をおいても盗まれた手紙は読んでおかないことには始まらない。全推理小説好き必読の短編である。

No.1 9点 おっさん 2011/04/07 21:32
1843年からポオ急逝の年49年までの、充実の短編20作と、随筆「暗号論」(41)を収録。
ポオを推理小説の父として語らしめる5編のうち――

「黄金虫」(話者の目を通した、主人公の雲をつかむような行動の数かずから、一転、合理的な推理の開陳へ移行する演出の妙)

「「お前が犯人だ」」(意外な○○テーマより、どことなく不気味な、記述者即○○の趣向のほうがアトを引く、変化球。これと「黄金虫」をかけあわせたのが、乱歩の「二銭銅貨」ならん)

「盗まれた手紙」(およそリアリティのない逆説論理を、最適化された舞台と言葉の魔術で普遍化した、現代の寓話。デュパンものの白眉にして、短編ミステリの理想形のひとつ)

以上3編を収めるほか(「モルグ街の殺人」と「マリー・ロジェの謎」は前巻に収録)、巻末解説がわりに、江戸川乱歩による作家論「探偵作家としてのエドガー・ポオ」が配されています。
また怪談として一級品ながら、猫の祟りを描くと見せてサイコ・ホラーの味わいが濃厚な「黒猫」(併録の「天邪鬼」と合わせ読むと、そのへんの現代的センスが実感できます)、その「黒猫」と共通するギミックを、怪奇テイスト抜きに、人間のコワさを描き出す手段に利用した「アモンティリャアドの酒樽」(結びの、ふたつのセンテンスが絶妙)なども、ミステリ・ファンの琴線をかき鳴らします。
この調子で書いていくと、きりが無いw

収録作全体の素晴らしさは、ゆうに10点満点なのですが、総括的な解題が無いことと、たびたび指摘してきた編集の杜撰さが、この巻にも依然あることから、1点減点しました。
具体的にいえば・・・
実際には1846年作の、幻想ミステリの小品「スフィンクス」が、誤って49年の初出とされ、小説パートの最後に置かれている!
ポオによる、49年作の最後の散文小説は、ニューヨーク郊外で道に迷った旅人が、自然の美の中にある住居を訪う「ランダーの別荘」なのです。
これは、直接の関連はないものの、併録の「アルンハイムの地所」(巨万の富を相続した芸術家による、理想の人口庭園創造のお話)の続篇と銘打たれており、およそストーリーらしいストーリーの無い不思議な味わいと、両作のタッチの違いが、ついポオの“晩年”の境地を深読みさせる小説なのですが・・・
サイトの趣旨から逸脱しそうなので、自粛しますw

創元推理文庫のこの<全集>は、素晴らしい企画でした。
しかし、編集に、その後の研究や新しい発見を反映した、全面的な改定版を出すべきだと、あえて提言します。


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