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[ 本格 ]
盗まれた手紙
エドガー・アラン・ポー 出版月: 1954年01月 平均: 6.40点 書評数: 5件

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No.5 5点 みりん 2023/08/07 17:47
結構前に海外の古典短編集が6つくらい乗ってるやつ(著者はバラバラ)で読んでて、唯一覚えてるお話。なんかコナンドイルの赤毛連盟とかも乗ってたような気もするが思い出せん。
ふと登録されてるの発見して嬉しいので書いときます。


これにピッタリなことわざ知ってますよ。
『灯台下暗し』ドヤ

No.4 9点 斎藤警部 2020/05/03 11:12
隠しのトリックにしても有名な「アレ」ってだけじゃなくリスク回避の念には念が入っているし、捜し出す方だって単に「アレ」に気付いたってだけじゃなく事件解決理論と実践の濃やかなハーモニーが薫ること薫ること。犯人、探偵双方の行状に備わったその冒険性も相俟って(挟まれた演説も猛威を揮う)、誠に読み応えのある知性横溢ミステリに仕上がっています。隠し場所の興味のみならず、手紙の盗まれた経緯の機微がまた素晴らしい。だが探偵の仕掛けた「盗難●●●●●●●●おく」という大トリックとその狙いの効用こそ本作最大の肝でしょうか。いくつもの滋味深い逆説が大に小に交差する絶景の一篇。ブラウン神父の直系尊属にあたる作品ですね。物語の締めがまたグッと来ます。
※弾十六さんの註釈群が凄く良いです。「鍵」の件は私も気になっています。どうも有り難うございました。

No.3 6点 弾十六 2020/01/25 22:56
初出は年刊誌The Gift for 1845(1844年9月発行)。創元文庫の『ポオ小説全集4』(丸谷 才一 訳)と青空文庫(佐々木直次郎訳)で読了。丸谷訳は相変わらずセリフが一部だけ丁寧になったりして気になります。(丸谷さんはそーゆー語り口だったのか。)
以前『クイーンの定員I』に感想を書きましたが、あらためて読んでみると、結構、上手くいく隠し方かも?と思い直しました。ほのぼのとした可笑しさが味ですね。Purloinといえば、この小説、というくらいの古風な珍しい語。直次郎訳のかつての表記『偸まれた手紙』なら良い感じかも。 (でも何故ポオはこの単語を使ったのだろう。フランス語っぽいから?)
原文はサイトThe Edgar Allan Poe Society of BaltimoreのTales(1845)バージョンを参照しました。
作中時間は「18**年、秋(p237, autumn of 18—)」でマリー・ロジェの「数年」(p238, several years)後、ということは1841年か1842年くらいか。
現在価値は、手持ちのが仏消費者物価指数は1902以降有効だったので、金基準1841/1902(1.00797倍)&仏消費者物価指数基準1902/2019(2630倍)で合計2651倍、1フラン=4.042ユーロ=489円で換算。
p237 セネカのエピグラム(Nil sapientiae odiosius acumine nimio): セネカではなく、ペトラルカのもの。De remediis utriusque fortunaeの第7の対話De ingenioより。(最初の語がNihilだが意味は同じらしい)
p237 フォーブール・サン・ジェルマン、デュノ街33、4階(au troisiême, No. 33, Rue Dunôt, Faubourg St. Germain): デュパンの「書庫兼書斎」(his little back library, or book-closet)の住所。残念ながらRue Dunôtは実在しないようだ。
p237 海泡石のパイプ(meerschaum): 何か響きが良いですよね。厳密に言うと「私」がミアシャムを楽しんでたのは確実だが、ここではデュパンは「いっしょ」だったと書かれてるだけ。後段p244でデュパンもミアシャムを使ってるのがハッキリします。
p242 ナポリ者(Neapolitans): 召使いは大抵ナポリ者だと言う。南フランスは貧しい印象があるが…
p242 ぼくの持ってる鍵: 警視総監のすごい武器。現実に似たようなネタがあったのか?
p242 三ヵ月間(three months): やっぱり本作の隠し方は無理。だって三ヵ月間ずーっと、手紙はそーゆー状態だったのでしょ? 探索が数回ならあり得るかもですが… (2020-1-26追記)
p244 一ラインの50分の1(The fiftieth part of a line): line=ligneは1/12インチ。英米式だと2.12mm、フランス式(メートル法以前の単位)なら2.25mm。直次郎訳註「1インチの1/12」は正確。丸谷訳註「約1ミリ」は、ボタンの直径を図る1/40インチ(約0.6mm)のline/ligneと混同した?
p248 五千フラン(fifty thousand francs): 丸谷訳のケアレスミス。50000フランは2445万円。
p248 アバニシー(Abernethy): John Abernethy(1764-1831) 英国の外科医。丸谷訳は注なしだが、直次郎訳註は丁寧「とくに、その奇矯な人格をもって知られていた。」
p250 丁半あそび(game of ‘even and odd’): 英wikiのOdds and evens (hand game)で解説されてるゲームとは違うようだ。作中の説明だと、おはじき(marbles)を握るのは聞く側一人だけで、答える側は握らない。
p259 緑いろの眼鏡(pair of green spectacles): 視線を相手に悟られないためか。
p261 手ずれがしている(chafed): 原語は「すり減ってる、擦り切れている」の意味。直次郎訳では「こすれている」
p262 マスケット銃(a musket): 先込め銃。当時ならパーカッション・ロックが主流。
p263 カタラーニ(Catalani): Angelica Catalani(1780-1849) 有名なイタリア人オペラ歌手。3オクターブ近くの声域。
p264 クレビヨンの『アトレ』(Crébillon’s ‘Atrée.’): Prosper Jolyot de Crébillon(1674-1762)は詩人、劇作家。引用されてる悲劇Atrée et Thyeste(1707)のAtréeとThyesteは兄弟で、Atréeが妻を奪ったThyesteに復讐する話。(直次郎訳の注が詳しくて良い。丸谷訳は註なし) 英Wikiによるとフランスの言語学者Milnerが1985年にD—とデュパンは兄弟という説を唱えてるらしい… 根拠はこの引用。ちょっと意表を突かれました。(確かにp254でD—は「二人兄弟(There are two brothers)」とありますが、奇説の類ですな。)

(2020-1-26追記)
本作は映画化されてませんが、TVシリーズSuspenseが1952-4-29に30分番組として映像化していて某tubeで見られます。残念ながらデュパンは登場しませんが、筋は結構忠実。隠し方を変更しててガッカリ。間のコマーシャルがカットされず残っているのがあって、当時のCMが一番面白かった… 主演Mary Sinclair, Arnold Moss, Edgar Stehli。

No.2 5点 HORNET 2011/02/13 14:53
 殺人は起きませんが,ポーの推理小説は三篇とする説によれば,「モルグ街」と「マリー・ロジェ」とこの作品だそうです。(初期は「探偵小説」と言われていただけに,単にデュパンが登場するのがこの三作品だからかもしれませんが)盗まれた手紙がどこにあるか?をデュパンが推理するのですが,その種は(特に今では)単純といえば単純です。しかし,この視点というか手法は,手を変え品を変えその後多くの作品に応用されたことを考えると,最初にこの視点を生み出したポーの力量の高さ,頭の良さは十分に感じられると思います。

No.1 7点 江守森江 2010/03/27 07:53
※但し書き
私的な歴史的古典作品の書評方針を「モルグ街~」とこの作品を利用して表してみた。
どちらかと言えばファジーな選択を好むので未読な儘の膨大な古典作品群は「乱歩のトリック集成」や「藤原宰太郎のネタバラシ推理クイズ」で済ませたい気持ちが強い(読むべきか?読まずに済ますか?の線引きに悩む)
さて、この作品だが時代に風化・埋没しない最たる例だと思う。
この作品の肝な部分は現在でも多数転用されているし、パクリと批判されるどころか上手く見せれば褒められもする。
話のタネの為だけに読んでも価値がある。
書かれた時代を考慮せず、現在視点でも高評価になるだろう。


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