皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 短編集(分類不能) ] アッシャー家の崩壊/黄金虫 光分社・古典新訳文庫 |
|||
---|---|---|---|
エドガー・アラン・ポー | 出版月: 2016年05月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
光文社 2016年05月 |
No.1 | 7点 | みりん | 2024/11/08 02:36 |
---|---|---|---|
某理由から『アッシャー家の崩壊』を再読したくて、どうせなら新しい訳で読もうということで登録しました。本サイトのサルガッソー海をさらに荒らす私は海の藻屑です。
ただ、ポーに振り落とされずに余裕を持って楽しめる小川高義さんの翻訳はなかなか良いぞよ。愛する女性との死別を描いた『アナベル・リー』『ライジーア』『大鴉』が3作並んでいて比較しやすい所も超ナイス。 『アナベル・リー』と『ライジーア』は愛する女性の名がそのままタイトルになっているだけでなく、語り手の思慕の情も似通っています。例えば引用すると↓ 「夜空に星が出るたびに 美しきアナベル・リーの輝く星が見えている」 「ライジーアの美しさが私の精神に染み込んで美神が居を定めたようになってからは、現実界に存在するさまざまなものを見るにつけ、あの大きな明るい双眸が私の内部にもたらす感覚と似たものを呼び起こされていたのだった-(中略)-望遠鏡で天の星を眺めていても、その一つか二つにはそんな感想を抱いた」 などです。詩と小説で表現媒体は違えど、同一のテーマでしょう。『ライジーア』は更に意志の超越や死者蘇生(ポー愛好)が加えられますが。『大鴉』に登場する大鴉の定型句「ネバーモア」は『ポー詩集』の阿部保訳では「またとない」と翻訳されていましたが、こちらでは「もはやない」となっています。死別に対する冷徹なアンサーであることを考えると、「またとない」の方が適していそうです。 この次が『ヴァルデマー氏の真相』。これまた生死の境界の曖昧さが催眠術の例を用いて説かれている。しかしこちらは上3作と違って、意志の強さや情は絡んで来ず、怪奇小説風味な終わり方となっています。 |