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[ 短編集(分類不能) ]
ポオ小説全集3
創元推理文庫
エドガー・アラン・ポー 出版月: 1974年06月 平均: 7.50点 書評数: 4件

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東京創元社
1974年06月

No.4 7点 蟷螂の斧 2020/05/03 21:10
 「モルグ街の殺人」6点 別途書評済み 
 「メエルシュトレエムに呑まれて」8点 別途書評済み 
 「悪魔に首を賭けるな」7点 悪魔に首を賭けてもいいが口癖の行く末。ユーモア系・怪奇系 
 「週に三度の日曜日」7点 週に三度、日曜が来たら結婚できる。さてどうする。ユーモア系 
 「楕円形の肖像」6点 画家の妻はモデルになるが・・・。怪奇系 
 「赤死病の仮面」7点 疫病が蔓延。仮装大会に死に装束の人物が現れる。怪奇系
 「マリー・ロジェの謎」6点 安楽椅子探偵系 
 「告げ口心臓」7点 死体を床下に埋めたが・・・。怪奇系 
 「眼鏡」6点 一目惚れして結婚するが・・・。 ユーモア系 
 「催眠術の啓示」7点 死にかけた人物に催眠術をかけると神について語り出す。怪奇系 
 「早まった埋葬」5点 生きたまま埋葬の例があるので脱出できるように手配。ユーモア系

No.3 8点 クリスティ再読 2020/01/25 00:06
創元全集3巻目は「メエルシュトルム」「モルグ街」「マリー・ロジェ」「告げ口心臓」「赤死病の仮面」などなど。一般に「告げ口心臓」はミステリ枠に入りづらい作品とされがちだけど、犯罪小説で読んだらこれはあり、と評者は思うんだ。たしかに「告げ口心臓」+「大鴉」=「黒猫」なんだけど、これ自体は一種の犯罪心理小説と見ていいと思ってる。
としてみると「モルグ街」「マリー・ロジェ」の「ミステリの元祖」評価には、やはり「名探偵の発明」が重大なウェイトを占めていると見えるんだ。しかしデュパンのイメージにたとえばロデリック・アッシャーの超感覚を重ね合わせることもできるのだろう。してみると、ポオの中で「ミステリの元祖」となった作品を特権的な作品として捉えすぎないほうがいいようにも感じるのだ。たしかに「モルグ街」は面白い。その面白さは「証言者がすべて自分の知らない言語での叫び声を聞いている」逆説から引き出される結論であるとか、あるいは密室が密室ではないことを証明する消去法であるとか、そういうやや地味で批評家的なセンスの部分のようにも感じられるのだ。
じゃあそういう見方でデュパン三作では一番皆さんが苦手な「マリー・ロジェの謎」を見るのがいいようにも思うのだ。評者あらためて「マリー・ロジェ」を読んで、実のところこれが一種のテキスト・クリティークになっていることに気が付いたんだ。これを安楽椅子探偵と呼んじゃ、いけない。新聞記事をネタにして、それぞれの整合性を考慮しながら、どれがどれだけ信用できるのか?を推測評価しつつ、その中で事件の真相を推理していくことになる。情報は正しいかウソか、ではなくて、それぞれの立場を再構成し、その中での相対的な真実性を比較考量して「情報」を客観評価しようとするデュパンの方法論に、評者はちょっとイカれたな。これはまさに、鋭い文芸評論家のやり口だ。
少し前に「みんなの意見は案外正しい」という本が話題になったことがあったけど、「マリー・ロジェ」も同じようなことを言っている。

民衆の意見というものは、ある条件の下では無視されるべきじゃない。それが自然に発生した場合―つまり厳密な意味で自発的に現れた場合には、天才の特徴である直観と類似したものとして考えるべきだ

事件は平凡だからこそ難しい。「モルグ街」みたいな奇矯な特徴を持たないがゆえに、推理としても小説としても歯切れが悪い。知性を評価するには「何がわかるか」ではなくて、「自分が分からないことは何かが、どこまでわかっているか」であるべきだと評者は思う。そういう平凡さの逆説として「マリー・ロジェ」を愉しみたいと思う。このデュパンが一番ポオの素顔を写してもいるのだろう。

No.2 8点 おっさん 2011/03/27 12:53
1841年の「モルグ街の殺人」から、44年の「早まった埋葬」まで17篇を収録。なのですが・・・43年作の「黄金虫」と「黒猫」は次巻にまわされています。
この創元の<全集>は、基本的に編年体の配列をとりながら、あらためて見直すと、こういう“編集上の配慮”が目につき、一歩ゆずってそれを良しとするにしても、なんら断り書きが無いのは不親切に思います。
また、各巻末の「収録作品の原題と発表年月」リストも、掲載誌を挙げていないのは、資料性に問題があります。
たとえば本巻、「マリー・ロジェの謎」を(42年12月)で片づけてはイケナイ。Lady's Companion の42年11月、12月、翌年2月号にわけて掲載された(モデルとした事件の新発展にあわてたポオが、途中、連載を一回休んで構想を練り直した経緯がある)ことは、作品論的にも重要なのですから。

あだしごとはさておき。
「モルグ街」は、フェアプレーの不徹底という瑕疵はあっても、事件の異常性と真相の意外性の落差が、やはり見事です。
作者が意図した、推論行程の面白さがかすんでしまうくらいにw(推理とか抜きに、「モルグ街」のネタを拡大してエンタテインメント化したのが、「キ○グコ○グ」ならん)。 プロットのパーツとしてしか人物を造型できないポオの欠点も、分析能力の権化のようなデュパンの創造では、プラスに転じています。
続篇の「マリー・ロジェ」は、推論面をパワー・アップしたものの、肝心のネタがつまらない(時事ネタが風化した)ため、退屈な出来に。アームチェア・ディテクティヴで長丁場をもたせるための、工夫もたりません。やはり、ポオは連載には不向きな体質だなあw
しかし、散文のきわみのような「マリー・ロジェ」をものすいっぽうで、42年には、詩的というか幻想的というか、そのきわみのような「赤死病の仮面」を書きあげているあたりが、著者の天才たるゆえんでしょう。この振り幅は凄い。
ただ、ミステリ的なホラーとして、個人的な好みからいえば、サイコ野郎の一人称語り「告げ口心臓」だなあ。説明されていない部分をこちらが想像で埋めようとすると、俄然、怖くなってきます。
圧倒的な危機から、知力で脱出をはかる(はかろうとする)、「メエルシュトレエムに呑まれて」と「陥穽と振子」も、ミステリ・ファンにはお薦め。
あ、お笑い系のオチが炸裂する「眼鏡」もお忘れなく。
歴史的価値を抜きにしても、収録作全体のレベルは高いです。

No.1 7点 kanamori 2010/07/19 17:45
「東西ミステリーベスト100」海外部門にはエドガー・アラン・ポオの短編が3作入っている。そのうち当全集第3巻収録で最初の推理小説といわれる「モルグ街の殺人」は36位。密室トリックとしてはツッコミどころもあるけど、今読んでも古さを感じない内容でしょう。
なお、第4巻の収録になるが、暗号解読ものの名作「黄金虫」は40位、逆説的な隠し場所トリックの代名詞「盗まれた手紙」は64位だった。


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