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[ ホラー ]
黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集Ⅰゴシック編ー
新潮文庫
エドガー・アラン・ポー 出版月: 2009年03月 平均: 6.40点 書評数: 5件

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新潮社
2009年03月

No.5 7点 ことは 2024/02/12 02:00
新潮社のポー短編集「ミステリ編」を読んだ勢いで、同じ新潮社のポー短編集「ゴシック編」も読んでみた。
ホラー系は、好みの真ん中というわけではないが、それでも面白く読める。今読んでも、演出に凝ってるように感じるのがすごいな。
目次を見ると、きいたことのある作ばかりで、ポーから選ぶとすると、(別冊にしたミステリを除くと)これらになるよねという作品。実際、集英社の「黒猫 エドガー・アラン・ポー短篇集」の収録作と比べても、本編集6作の内、5作が重なっている。
重なっている5作を拾い読みして比べると、全体的に集英社版のほうが好み。ポーで最も好きな「群衆の人」が集英社版には入っているのもあわせて、集英社版が私のおすすめだな。
今訳で好きなところは、いままで多かった”赤死病”を、”赤き死”としている点かな。”黒死病”と対比するための”赤死病”だったのだろうけど、”赤き死”とするほうがイメージ喚起力があっていいよね。

No.4 5点 ミステリ初心者 2021/02/15 19:28
ネタバレをしています。

 エドガー・アラン・ポーの名前は聞いたことがあったのですが、今まで読んだことはありませんでした。
 全体的に怪奇?やホラーよりの話が多く、世にも奇妙な物語的です。古典なのでしかたがないかもしれませんが、面白くなってきたところで急に終わってしまうように感じる作品が多く、個人的にもうひとひねりほしかったです。
 あと、文章が難しくまどろっこしいです(涙)。私には難解な話が多く、どれだけ理解できたのか不安です。

・黒猫
 黒猫を殺したときはあんなに動揺していたのに、どさくさにまぎれて(?)妻を殺したときは割とあっさり(笑)。そこがもう黒猫になにかしらされているのかもしれませんが。
・赤き死の仮面
 なかなか面白かったのですが、王がすぐ死んでしまって急に終わったのが残念。病気が蔓延して追いつめられる王のほうがスリリングで面白かったかも?
・ライージア
 ライージアが主人公の後妻の肉体を乗っ取る話…? ライージアがしゃべる呪詛めいた言葉はなにか関係があるのでしょうか?
・落とし穴と振り子
 パニックホラー(?)的なノリがあり、一番理解しやすかったです。振り子の話は怖くて面白いですし、脱出も見事でした。落とし穴の中には何が見えたのでしょうね?
・ウィリアム・ウィルソン
 ラストから、主人公のマネばかりするウィリアム・ウィルソンは、結局ドッペルゲンガーか自分のもう一つの側面みたいなものでよいのでしょうか(笑)。実在しないということは、カードのイカサマをばらしているのも自分? う~んよくわかりません(笑)。
・アッシャー家の崩壊
 早すぎた埋葬系。愛し合っていた兄妹の最後がアレかと思うと悲しくて後味が悪いですね(涙)。兄妹がテレパシー?なにか通じ合っている感じがあり、ロデリックは妹の蘇生のことに気づいていたのでしょうかね? 中盤、無機物も生きている的話がありましたが、アッシャー家族の全滅と関連するように家自体も崩落しました。家自体がアッシャー家族に何らかの悪影響を及ぼしていたような気がするんですが、この家は何がしたかったのでしょうか(笑)。

No.3 8点 斎藤警部 2018/04/25 18:22
黒猫/赤き死の仮面/ライジーア/落とし穴と振り子/ウィリアム・ウィルソン/アッシャー家の崩壊
(新潮文庫)

普通に世界文学名作撰の様相だが、割と気安く読めます。

私はやはり、二つの数学的ファクターが(一つは鮮やかに、一つは地味に)抜群のサスペンスと結託した某作が一番ですかね。

しかしまあ、モルグ街等のミステリ系統作品でなくとも、ミステリとその近隣文学に圧倒的影響をもたらしているんだっちゃなあ、とつくづく思いますね~~

No.2 7点 おっさん 2011/08/28 15:18
2009年、ポーの生誕200年に合わせて新潮文庫が刊行した、2巻本の傑作選を読んでみることにしました。今回は、<ゴシック編>と銘打たれた、その一冊目です。
この作者については、すでに『ポオ小説全集』全4巻と『ポオ 詩と詩論』(ともに創元推理文庫)のレヴューを済ませています。
しかし、そこでも指摘したように、当該テクストには種々の問題があり、諸手を挙げての推薦は出来ないことと、光文社文庫の“新訳”で読み返しはじめたドイルのホームズ譚が、予想以上のあがりの良さであったことから、ポーの“新訳”にも手を出してみることにしたわけです。

収録作は、以下の6篇。
「黒猫」「赤き死の仮面」「ライジーア」「落とし穴と振り子」「ウィリアム・ウィルソン」「アッシャー家の崩壊」

編訳者は巽孝之。巻末解説を読んでもアカデミックな印象を受けますが、ミステリやホラー畑の人ではなく、アメリカ文学専攻の、ポー研究の第一人者のようですね。なので、きちんとした資料にもとづく年譜をふくめて、資料的な側面は申し分ありません。
ただ訳文は――旧訳にくらべて格段に読みやすいという印象は受けませんでした。もともとモノがポーなので、しかもテーマ的に、私の好きな軽妙なタッチの作品群(「使いきった男」だったり「眼鏡」だったり)ははなからセレクト外なので、誰がどう訳してもドイルほどリーダビリティは無いw 創元版にくらべて、作品が新訳で面目を一新したとは言えないでしょう。
また、解説はアカデミック――と書きましたが、<ゴシック編>を謳いながら、ゴシックとは何か、またそこにおけるポーの位置づけとは、といった記述が無いのは、こちらのような“ジャンル読者”には物足りない。怪奇幻想小説と書いてゴシック・ロマンスとルビを振るあたり、アバウトすぎると思います。
まあ次巻の“ミステリ編”との対比で、ポーのホラーを集めましたよ、くらいに考えておくべきか。とすると、一篇だけスーパーナチュラルの要素が無い「落とし穴と振り子」(これを換骨奪胎したのが、ドイルの「技師の親指」ならん)が浮いてしまうような。

個々の作品のレヴェルの高さは、いまさらコメントする必要もないでしょう。
一般の大衆小説と違って、基本的にポーは、キャラクターに感情移入させる筆法をとりません。
そのため読者は、ホラーであっても、作品と冷静に距離を置いて、共感ではなく理解すること(理解して――心が動く)を求められますが、その努力を惜しまなければ、知的に構成された鮮烈な悪夢という得難い報酬が待っています。
たとえば編中、もっとも知名度が落ちるのは「ライジーア」でしょうが、しかし、これなどポー好みの“美女の死と○○”をあつかって、作者の小説技術を端的に示す出来栄えとなっています。
この一篇は、ラストのセリフこそクライマックス。逆に言えば、クライマックスが即ラスト。そこですべてが完成されるように組み立てられ――そのあとには何も無いのです。一切の余分な説明を排してカーテンが降りる。読者を無限の闇に残したまま・・・

本書もまた、無条件に推薦できるテクストとは言いかねますが、ポーを語るうえで、押さえておいて損の無い一冊ではあります。

No.1 5点 E-BANKER 2011/04/24 19:52
ポー生誕200周年を記念して新潮文庫から出版された作品集の第1弾。
第1弾は「ゴシック編」として、ミステリージャンル以外の作品が集録されています。(第2弾のミステリー編はすでに書評済)
①「黒猫」=ポーといえば「この作品」という方も多いのかもしれません。はずみで殺してしまった黒猫と妻。そして、ラストでは黒猫の祟りとでも言うべき現象が起こる・・・実にブラック&詩的です。
②「赤き死の仮面」=? 「赤き死」というのは、「黒死病=コレラ」を想起させるとのことですが・・・
③「ライジーア」=これも詩的ですが・・・解説によれば、「美女再生譚」の1つとのこと。
④「落とし穴と振り子」=実は、個人的にはポーの作品で一番面白いと思ってるのが本作。ラストに救いがあるのがいいね。
⑤「ウィリアム・ウィルソン」=これも難解な話。正直なにが言いたいのか理解できませんが、オチは他の作品でもよく見られるサプライズ・・・
⑥「アッシャー家の崩壊」=これもポーといえば本作というべき作品の1つ。ここでも、突き放したようなオチが何ともブラックだし、尾を引く感じなんだよねぇ・・・
以上6編。
タイトルどおり、いわゆるミステリーというジャンルに含まれる作品ではないですが、さすが「珠玉の名作」と思わせるものはあります。
文学的すぎて、小市民の私では理解できないところもありますが、たまにはこういう作品に接することも貴重な機会かもしれません。
解説では、ポーの生涯にも触れてますので、ポーという作家のバックボーンを理解したうえで本作を読むことをお薦め!
(個人的には④が大好き。もちろん、①や⑥も名作)


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