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江戸川乱歩と横溝正史 中川右介 |
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伝記・評伝 | 出版月: 2017年10月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
集英社 2017年10月 |
集英社 2020年12月 |
No.2 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2020/02/13 17:16 |
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「横溝が「新青年」編集者として乱歩に「パノラマ綺譚」と「陰獣」という傑作を書かせた。横溝がいたからこそ生まれたと言える。そして戦後は乱歩が編集者となり横溝に「悪魔の手毬唄」という最高傑作を書かせたのだ。」と筆者は語る。その間に不仲の時代があったのは興味深い。乱歩が「悪霊」を途中で休載し休養に入った。1年半後の1934年に復活するも、横溝は「復活以後の乱歩こそ悲劇のほかの何者でもない。」再休養したらの旨発言。友情に亀裂が入った。その2年後には和解か?。終戦後、横溝は自信作「本陣殺人事件」を発表。乱歩はべた褒めした後に不満を述べる。それは密室トリックが機械的過ぎ、動機が弱いということであった。横溝はドスをつきつけられたように思ったという。その後「獄門島」が発表された時は貶された「本陣」の方がいいと言われ、更に「君、こんど「犬神家の一族」というのを書くだろう。ぼく、犬神だの蛇神だの大嫌いだ。」などと言われる。二人は時には対立したが、ライバルとしてまた盟友として探偵小説界を牽引したのは間違いない。ただ、「翻訳」「翻案」「創作」の違いを対外的にあやふやのままにしたことは罪づくりであると思う次第。やがて”探偵小説を「お化屋敷」の掛小屋からリアリズムの外に出したかった”という松本清張が台頭することになった。(敬称略) |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2018/04/18 22:34 |
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江戸川乱歩と横溝正史(本書の本文中ではそれぞれファンの慣例的な呼称に準じて「乱歩」「横溝」と略称)の二大巨人の歩みとその両者の交友の軌跡、さらには周辺の国内ミステリ界の動向に目を向けながら、日本推理小説の黎明期から乱歩の死、そして横溝ブームを経た当人の逝去の時期までを、膨大な資料を駆使して語った一冊。よほどのマニア・研究家でない限り、この本から何も学ばないという人はまずいないのではないかといえる手応えの、思わず溜息が出るような力作である。
1960年生まれという世代人の著者ゆえ、ポプラ社の少年探偵団シリーズ(リライトもの含む)の隆盛や横溝の復活以降の探偵小説復興ブームなどにもその場に立ち会って高揚した者としてのオマージュが熱く語られ、特にムック「別冊幻影城」の横溝編が複数出た事実を、角川の横溝ブームへの便乗企画であり、しかしそれは復活した横溝の支援の役割も確かにあった、と冷静に断ずるあたりもなかなか痛快(ただしこれについては記述に問題がある。後述)。 『本陣』と『喋々』の世界観が実は巧妙にリンクしているのではないか、という見識のくだりも(あくまで仮説の域を出ないものながら)ああ、本当に好きなファンが、良い意味での思いつきを熱く書いているな、という感じでとても好ましい。 ■全体的には実に素晴らしい一冊だと思うが、重箱の隅的な苦言をあえて並べると ①「乱歩の『幽霊』が明智作品ではない」という記述はもちろん勘違い ②1967年のポプラ社の「名探偵シリーズ」は「八冊で中断」(P304)というのも誤認。 ③乱歩の大人もの長編の明智ジュブナイルものへのリライトについては各作品ごとに言及した研究本などの類がほとんど無い、とあるがこれは不適な記述。宝島社のムック「僕たちの好きな明智小五郎」のなかで十数ページにわたり、十数冊のリライト作品ごとの解題がされている。 (巻末参考資料一覧によると、本書の著者・中川氏は「僕たちの好きな明智小五郎」の文庫版しか見なかったらしいが、そちらではリライト作品の解説記事が相応に短縮されている。) ④横溝の逝去と金田一耕助の退場の余韻を語りたかったらしいが、そのために『悪霊島』のラストのフレーズを引用。結果、完全に真犯人の名をネタバレしている!! ⑤「別冊幻影城の横溝編は3冊出た」とあるが間違い。実際には4冊出ている。 ・・・・・・などなどの瑕疵があり、この辺はいささか惜しまれる。 (もちろんこういう不備はある程度、資料として参照する側の方で補って使うべき、というのも正論ではあるのだが。) Twitterなどでも相応の反響があり、売れ行きも好評のようなので、近日中に再版、またはそう遠からぬ内の文庫化なども見込まれる。可能なら確認の上、ご対応を願いたいと思う。 |