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ダシール・ハメット伝
ウィリアム・F・ノーラン
伝記・評伝 出版月: 1988年11月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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晶文社
1988年11月

No.1 6点 クリスティ再読 2019/03/10 23:18
ハメットのアメリカ共産党歴については現在結論が出てる状態なんだけど、本作はそれ以前というか、ハメットの基礎的な伝記情報を整理してまとめた雰囲気の伝記である。実際、本作のベースは1969年に書かれた著者ノーランの先駆的なハメット研究(MWA特別賞を獲っている)わけだから、それ以降のハメット論のベースを作った伝記である。どちらかいうと、著者の立場がオーソドックスで保守的なこともあって、ある意味「ハメット伝説」的な印象も強い。ハメットを左翼にしたがらないとか、ヘミングウェイとの影響関係に否定的とか、いかにもアメリカ人らしい思い入れが見え隠れする。
なので、評伝、という場合の「伝」はしっかりしているのだが、「評」の方はやや食い足りない。勿論ハメットが作り上げたハードボイルド文体のオリジナリティは高いのだが、それでも評者はアメリカン・リアリズムの伝統やシンクレアとかドス・パソスなどとの同時代性を考慮するべきだと思っているわけでね...まあ、本作はそういうことを論じる上でのベースみたいなものだ、と思ったほうがいいのかもしれない。
それでも、リリアン・ヘルマンとの関係、アリューシャン列島での兵役、映画業界・ラジオ業界との関係など、語られにくい情報もいろいろと手に入る。とくに、「影なき男」以降、何度も新作を書きかけては挫折を繰り返す様子が痛々しい。ラフリーの「別名S・S・ヴァン・ダイン」に描かれた、宿敵ヴァン・ダインの像を思い起こさせる。そのうちやろうと思っているのだが、「影なき男」もサブカル影響が絶大な作品なんだよね....


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