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新青年読本全一巻 「新青年」研究会編 |
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伝記・評伝 | 出版月: 1988年02月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
作品社 1988年02月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2019/02/01 23:30 |
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戦前の作品を読んでいるのなら「新青年」を知らないのはモグリというものだ。評者の知ってる70年代ならまだ関係者も生きていて、作家たちも昔愛読していて....とそれなりのプレゼンスがリアルにあったようにも思うよ。だからこそ、桃源社あたりが先鞭をつけた異端作家たちから新青年作家たちへ...という流れを何か自然なもののようにして捉えていたね。
まあそういうルートだと、どうしても「探偵小説の牙城」として新青年という雑誌を捉えてしまうのだけども、実はそうでもない。もっと総合的な都会派娯楽雑誌だったのである。それこそ飛田穂州ありの徳川夢声ありの柳屋金語楼ありの、と有名人の自伝風エッセイもあれば、科学記事、ファッション記事、スポーツ記事も盛りだくさん。読み物として翻訳探偵小説が採用されたのは言うまでもないが、当時の「探偵小説」はずいぶん広くて、SF・ホラー・ファンタジー・ユーモアまでカバーしていたし、国内の創作が盛んになったらなったで、いわゆる新青年探偵小説作家にはあまり入れてもらえない獅子文六だって代表的な新青年作家だし、大佛次郎、山手樹一郎・吉川英治・山岡荘八だって書いている。と新青年の実像を気鋭の文芸評論家集団が複眼で紹介するムック本である。 執筆者は鈴木貞美、川崎賢子、谷口基などなど、モダニズムの研究者が主体だが、上野昂志や笠井潔も少しだけ書いている。それに中島河太郎、日影丈吉、中井英夫、横田順彌などによる思い出話、そして水谷準へのインタビュー、巻末は全巻の目次。なかなか豪華な本である。 <犯罪科学>なる<科学>には、ある種のいかがわしさ、またそれゆえの魅力がある。<科学>という概念のもとにありとあらゆるものを投げ込んでしまう心性、それは<科学>の通俗化あるいは<科学>崇拝とかたづけるにはあまりに過剰だ。 とこれが川崎賢子による小酒井不木の評みたいなものになる。まあこういう本である。多面的だがそれぞれなかなかツッコミが厳しくて面白い。新青年は昭和25年には廃刊になるのだが、たとえば昭和55年に創刊された「BRUTUS」が「新青年の精神を継承する」と謳っていた、というのが面白い。今にして評者は思うのだが、この新青年という雑誌の一番の面白さはエディトリアルな部分なんだろう。バブルを迎える80年代に、ようやく表舞台に立とうとするエディトリアルな感性が、「新青年」という「エディトリアル精神の先駆」と触れ合った、そういう瞬間を記録しているのが一番の本書の醍醐味ではなかろうか。 (最近結構乱歩と正史の不仲が...という話題をよく眼にするけど、正史って人はそもそもモボの教祖みたいな人だったわけだからね。これを落として横溝正史を論じるのはどうかと評者は思うんだ) |