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いやいやながらルパンを生み出した作家 モーリス・ルブラン伝
ジャック・ドゥルワール
伝記・評伝 出版月: 2019年09月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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国書刊行会
2019年09月

No.1 8点 小原庄助 2020/03/24 10:08
一人の作家が創り上げたキャラクターが、その作家をはるかにしのぐほど有名になる、というのはどういうことなのか。とりわけ、そのキャラクターが「いやいやながら」生み出されたものだとしたならば・・・。
本書は、邦訳も出ている「アルセーヌ・ルパン辞典」や「ルパンの世界」でルパン研究家の第一人者として知られている著者によるもので、本国フランスではこの二冊より本書の方が先に出版されている。
今でも世界中に熱烈なファンを誇るルパンだが、作者であるモーリス・ルブランに関する本格的な伝記は本書が初めて。緻密で詳細な資料に基づいて、その誕生から死まで、作家ルブランの生涯が再現されている。
ルブランと言えばルパン、というように彼の代名詞のように語られているルパンシリーズだが、実はルブランの作家としてのスタートは純文学だった。しかし御多分に漏れず、純文学の筆一本で暮らしていくのは難しかった。幸いなことに、ルブランは富裕な家の生まれではあったが。
転機となったのは、当時は新米編集者だったピエール・ラフィットから大衆小説の執筆を依頼された事。この依頼こそが、後のルパンシリーズに繋がっていくのだが、純文学を志し、モーパッサンの弟子を自任していたルブランにとって、大衆小説の執筆は本意ではなかった。この時、ルブランは40歳を過ぎていた。
ルパンシリーズの成功はルブランに富をもたらしたが、それとともに作家としてのプライドは屈折していく。創作と生活の板挟みになったルブランの苦悩は、本書の帯にも引用されている。「ルパンが私の影ではなく、私の方がルパンの影なのだ」という言葉に象徴される。
一人の作家の成功と、その陰に隠されてしまった知られざる苦悩。ルパンの生みの親だけではない、ルブランの全てがここにある。


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