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星新一 一〇〇一話をつくった人
最相葉月
伝記・評伝 出版月: 2007年03月 平均: 8.00点 書評数: 1件

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新潮社
2007年03月

新潮社
2010年03月

No.1 8点 小原庄助 2020/01/07 08:52
ショートショートと呼ばれる極めて短い小説の手法を作り、千一編の物語を書き続けた作家、星新一。本書は、その七十一年の生涯を描いた評伝である。とにかく読んで面白い。日記や書簡を含む膨大な遺品を整理し、本や新聞、同人誌などの資料と数々の証言を得て、よくぞここまでまとめたものだと思う。
前半部は、星製薬の創業者である父、一の先進的な仕事や人となりとともに、作家の生い立ちを描く。一九五一年、父の死により、二十四歳で会社を引き継ぐも、ふたを開けてみれば借金だらけ。会社経営には向かないと自他ともに認めながら、会社整理に奔走する。沈みかけた船は、さながら地獄の様相である。
そのころ、探偵小説雑誌の軒先を借りる形で始まった日本のSF小説。一つのジャンルの草創期のエネルギーと、それがどれほどいばらの道だったかを、丁寧に生き生きと描いていく。
五七年、実質的な処女作となった「セキストラ」は、一読した江戸川乱歩が傑作と評価して「宝石」に掲載。六〇年には六作品が直木賞候補に。そして累計三千万部という、第一線のSF作家への道を歩み始める。
徹底的に分かりやすく、時代を超えた読者へのプレゼントとして生涯、作品を磨き続ける一方で、新人賞の審査員を務めて多くの後進を見出し、育てた。星作品を敬愛する作家は多い。
願わくば、全体を俯瞰する年譜が欲しかった。また新一が書いた父の伝記「人民は弱し官吏は強し」で触れられている、が一八年に刊行したイラスト付きSF小説「三十年後」が、どんな作品だったのかも知りたかった。「息子がタイム・マシンで大正の御代に舞いもどり、代筆したんじゃなかろうか」(石橋喬司)というぐらい、発想も文体も、似ていたらしい。


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