たかだいさんの登録情報 | |
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平均点:5.05点 | 書評数:198件 |
No.198 | 5点 | 金色の魔術師 横溝正史 |
(2025/07/02 22:32登録) ジュブナイル向けに書かれたライトなミステリー小説で、主に少年探偵団を自称する少年達が事件を調査し、その上で相談と報告を受けた金田一耕助が事件の全貌を解き明かすという形式でストーリーが進みます 従って、金田一耕助は(少なくとも本書に関しては)ほぼ安楽椅子探偵に徹してますし、いつもの横溝正史作品にあるようなおどろおどろしさは鳴りを潜め、どちらかというと少年達の冒険活劇といった趣きがあり、ちょっと物足りなさを感じたのも事実 メインのターゲット層が違うと言えばそれまでですが、個人的には独特の怖々とした雰囲気の横溝作品が好きなので、その辺は微妙に思った所でした とは言っても、金色の派手な衣装に身を包んで少年少女をあの手この手で誘拐していく老怪人と少年たちの対決は、今で言うラノベ 的でそれはそれとして読み易く、楽しめました |
No.197 | 6点 | 探偵は田園をゆく 深町秋生 |
(2025/07/01 00:57登録) 以前レビューを挙げた「探偵は女手ひとつ」の続編で、前作と異なり本作は長編です 冒頭、相変わらずの便利屋家業としてデリのドライバーで糊口を凌いでますが、そこからすぐに手斧を持った暴漢との乱闘に介入する羽目になり、その縁から行方不明の息子を捜索するという本業(探偵)の仕事に着手する事となります 山形のさらに一地方・置賜一円を舞台にしている割に、1人の男の失踪から事態が加速度的に緊迫感を増していく辺り、登場キャラが山形弁前回というギャップもあって、らしさが見れて楽しかったです また、主人公の身内にもスポットが当たっており、娘とのやりとりであるとか、実母よりも接しやすい義母、なにかと主人公を縛りつけたがる実母との関係等、主人公自身のキャラというかバックボーンが深掘りされた内容でもあったように思います |
No.196 | 4点 | 十津川警部 東京上空500メートルの罠 西村京太郎 |
(2025/07/01 00:26登録) 西村京太郎の十津川警部シリーズと言えばトラベルミステリーが有名だが、個人的には本作のようなハイジャック物や誘拐物の方が馴染み深い 西村京太郎が描くこれらの作品は規模が大きい話が多く、総じて大味な傾向にあるので手軽に適度なサスペンスを楽しむのに向いていると思っている 尤も話の〆に雑さや荒さが見え隠れするのはご愛嬌とも思っているが… 本作も例外はなく、最新の飛行船を爆弾を使ってジャックした犯人が6億もの身代金を手にして逃亡する為の策までは適度なサスペンスを楽しめたが、ラストは結構呆気ないいつものパターンで終わる ある意味で安定感はあり、時間潰しの軽めな読書には丁度いい作品ではあると思ったが、同じような傾向の作品で言うなら(以前レビューを挙げた)サンダーバードを扱った作品の方がより完成度は高かった印象です |
No.195 | 3点 | 空中密室40メートルの謎 浅川純 |
(2025/06/28 17:57登録) 建物の上部に帆船を載せた構図のゴルフクラブを舞台に、地上40メートルの甲板で発見された白骨遺体の謎に迫る推理小説 元警察関係者達が集まり、『刑事』という役割(キャラ)として事件の経緯を取材・放送するという、なかなかにぶっ飛んだ奇抜な設定は面白い ただし、それはあくまで「発想」としてはという話で、読み進めてみた感想としては嫌悪感が付きまとう試みだったと思う 本作が放送・報道という代物に対する痛烈な皮肉や風刺を含んでいるとすれば十分に成功していると思う一方、それを読んだ感想としては不愉快さが際立つ感じ 正直、「この人(人達)は何様のつもりだ」と端々で思いながら読んでいたので、メイントリックに関する印象は一際薄いし、かと言って再読しようとも思えないし、その気力もない なんとも風刺の色が目立つ読み難いミステリーでした… |
No.194 | 5点 | 北緯43度のコールドケース 伏尾美紀 |
(2025/06/25 13:15登録) 警察小説特有の重厚なリアリティというか生々しさを感じられた作品 奇妙な幼女遺体遺棄が起こり、そこにかつて被疑者は死亡しながら被害者が見つからないまま未解決となっていた幼女誘拐事件も絡み始めるという流れで、ミステリー的にもなかなか面白い たしかに取調室でのラストの攻防に関しては然程決定的な証拠が出てきたわけでもないが、話の流れであっさり落ちたとでも言うような唐突感は否めず、状況証拠はばっちりながら頑なな犯人をどう追い詰めるかという点では微妙と言わざる得ない ただ、それ以外の部分ではよく出来た警察小説という仕上がりで、多少のドロドロやギスギスした雰囲気がかえってきちんと人を描けている気がして(本作に関しては)好感が持てました |
No.193 | 3点 | 三毛猫ホームズの恐怖館 赤川次郎 |
(2025/06/24 10:05登録) ユーモアミステリーで知られる作家・赤川次郎を代表する人気シリーズ「三毛猫ホームズ」の一作 既読のシリーズとしては本作が2作目で、初めて三毛猫ホームズに触れてからおよそ20年越しに手に取ってみたわけだが、猫であるホームズが事件のヒントを身振りで示し、それを受けた兄妹が事件を解決に導くというシリーズとしての枠組みは結構好きな作品だなと再認識 恐怖館というタイトルに反しておどろおどろしさは皆無のユーモアミステリーな作風で、古典ホラー映画好きが集まるサークルのメンバーやその関係者を中心に、冒頭でのガス爆発からの他殺体の発見に端を発し、次々と関係者がナイフで襲われる構図はなかなかスリリングで展開としては面白い しかし、肝心の謎(犯人が誰かは勿論、作中における密室の謎等)が正直薄っぺらく感じられた上に、個人的な好みの問題もあるとは言え作中のユーモアが基本スベっていて、挙句、主要キャラの性格などがあまり好きになれない…等々、骨格は面白そうなのに読んでみたら詰まらないという感想に落ち着きました |
No.192 | 6点 | 15年目の処刑 勝目梓 |
(2025/06/22 18:36登録) 姉を騙して自殺に追い込み、それを謝罪させようとし矢先にヤクザの殺し屋を差し向けられた男の15年にも及ぶ執念の復讐劇を描くハードボイルド作品 とりあえず、本作で本命の標的となる大臣に就任したばかりの政治家がとにかくクズなので、個人的に不快感なく主人公の復讐劇を楽しめた もっとも、それに巻き込まれて色々と巻き添えを食って酷い目に遭う政治家の家族や、主人公と深い仲のママには思う所がないわけではないが、いくら大義名分があっても綺麗事では済まされない復讐という行為の無意さや無慈悲さが分かりやすく現れている部分でもあるのかと思います 随所に性的なシーンや、容赦のない暴力シーンが多発する作品である為、好みは極端に分かれそうだが個人的には(偶に読むなら)好きな部類の作品でした |
No.191 | 3点 | 薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理 塔山郁 |
(2025/06/21 18:43登録) ある種ストイックで生真面目な女性薬剤師が、薬にまつわるあれこれを薬剤の知識で解決に導く短編集 読む前は「天久鷹央の推理カルテ」と似た系統の話かなと思いつつ読み始めましたが、実際のところ、あちらよりもかなりマイルドな印象 仮にも専門知識が必要な系統のミステリーという事で、こういった作品についてはそれらにまつわる豆知識が楽しみの一つなんですが、そう言った要素が本作に関してイマイチだと感じた 一つ一つの謎は調剤薬局、薬剤師をメインに据えた作品らしさがあって魅力もあると思えたが、展開が淡々とし過ぎていて抑揚が無かったのが話の詰まらなさに繋がったのかなと思われます |
No.190 | 4点 | ルパン、最後の恋 モーリス・ルブラン |
(2025/06/19 00:17登録) 「アルセーヌ・ルパン」やその作者「モーリス・ルブラン」の名は知っていたが、いずれの作品も未読の中、初めて手に取ったのが本書 おそらく「ルパン三世」の影響もあって『大泥棒』のイメージが先行する中、本書でのルパンの人物像は意外…というより異質に感じられた 知性派なのは間違いなく紳士な人物像は好感が持てるが、ストーリーが元々持っていたイメージと大分乖離していた為、思った程刺さらなかったというのが正直な所 冒険活劇を期待していたら、実際にはスパイ小説だった感じ スピード感のある展開で面白いは面白いのだが、終始、違和感というか「ちょっと違う」感が残ってしまった まぁ、こちらの先入観というか先行したイメージのせいで作品自体が悪いわけではないのは重々承知の上で、イマイチと評価させて頂く |
No.189 | 6点 | 黙秘犯 翔田寛 |
(2025/06/17 23:38登録) 目撃証言、凶器に残された指紋から逮捕に至った執行猶予中の傷害犯 一見単純な事件かと思えたが、逮捕された男が完全黙秘を貫いた事から徐々に不審点が浮き彫りになっていく お手本とも言える堅実な警察小説で、作中の刑事達が調べれば調べる程、男の人物像であるとか、その周囲を取り巻く人間たちの不審な挙動が見え隠れしてくるので、サスペンスなストーリー展開はなかなか面白かったです また、終盤における取調室での攻防は見所だと思う一方、黙秘を貫く男の真意、心情の痛々しさが読後、一番心に残りました |
No.188 | 8点 | 翳りゆく午後 伊岡瞬 |
(2025/06/15 19:01登録) 社会問題にもなっている高齢者ドライバーによる自動車事故をテーマにした社会派なミステリー作品 正直、ミステリーとしての謎、真相だけを見ればなんて事のない小説です ただ、そこに「いつ当事者になってもおかしくない」というリアリティが加わって一級のサスペンスに仕上がっていると個人的には感じられた 作品の冒頭、厳格な祖父の些細な異変から始まり、そこに何やら女性関係も絡むらしい、からの「人を轢いたかもしれない」 作中、主人公も半狂乱の心境で事件・事態に向き合うわけだが、我が身になって考えると恐怖である やや主人公が自己保身のきらいが強く、若干の嫌悪感がなかったわけでもないが、概ねリアルな反応が描かれていたと思います 日常生活を送る上での実態もあって簡単には解決出来ない問題とは言え、それを踏まえても中々に心を抉ってくる作品でした |
No.187 | 3点 | アンサーゲーム 五十嵐貴久 |
(2025/06/15 15:59登録) 結婚式を挙げてハネムーンに向かう筈だった新婚夫婦が謎の閉鎖空間に拉致され、意味の分からないクイズゲームに参加させられるサスペンス小説 もっと砕いて言えば、強制参加のデスゲーム物 正直、それ以下はあっても以上はない作品で、デスゲーム物の作品を何作か嗜んだ人からすればそこまで面白みのある内容でもないと思う(少なくとも私はそうでした) ゲームに巻き込まれた夫婦間の疑心暗鬼やギクシャク感に関してはこの作品の味かなとも思えたが、とは言ってもだから面白いとまではならない 一応、読みやすい作品ではあるし、デスゲーム物とは言ってもグロい描写はないので、一定の緊張感をライトに楽しめる作品だとは思いました |
No.186 | 5点 | 科警研のホームズ 毒殺のシンフォニア 喜多喜久 |
(2025/06/14 20:27登録) 科捜研…ではなく科警研という微妙に聞き馴染みのない警察組織の一部署を主舞台に、様々な毒物を主軸に据えた風変わりなミステリー短編集 同じ作者による別シリーズ「化学探偵Mr.キュリー」にも若干通ずるモノがあった気がしますが、そちらに比べてより専門性が高かったように思います 専門知識がないと謎解き不可能という点で(作者も異なる別作品にはなりますが)「天久鷹央の推理カルテ」と本質が近く、故に「そんな物質があるんだ」とか「そんな事あるんだ」と言う楽しみ方が出来るタイプのミステリーです 少なくとも私はそうゆう方向で本作を楽しみました |
No.185 | 5点 | #拡散忌望 最東対地 |
(2025/06/09 11:08登録) 旧Twitterを利用した凄惨な呪いの恐怖と、その呪いに立ち向かう学生達の足掻きを描いたノンストップホラー わりかし正統派なジャパニーズホラーだった前作に引き続き、本作もまた、良い意味で正統派なホラー作品に仕上がっていたかと思います 敢えて言うなら(前作も含め)グロにより過ぎな気はしますが、内容的にはかの名作「リング」の系譜を受け継いでいる作品です ただ、本作の呪いに犯された者の末路は視覚的(イメージ的)なインパクトは抜群ですが、被害者自身の煮えたぎった(脳等の)体組織が、目鼻口から溢れ出して顔面が判別不能な程に焼け爛れる(しかも死ねない)という意味をイマイチ汲み取れなかった為、読んでて微妙に気になったというかその死に様(厳密には生きてる)ありきの作品なんだろうとは思いましたかね とは言え、ミステリー要素も含まれ、関係者が次々と呪いの餌食となる様はジェットコースターのような勢いがあり、ホラー作品として無難に楽しめました |
No.184 | 5点 | 撮ってはいけない家 矢樹純 |
(2025/06/09 10:51登録) オカルティックな恐怖を主体としつつ、ミステリー小説のような側面も併せ持った新機軸のホラーといった印象 決まった年齢に達すると児童が謎の死を遂げるという真偽不明の曰くがある家系に隠された悍ましい闇であったり、横になっている自分が周囲の人々に喰われたりする不気味な夢を時折見る少年、そこに過去の事件も関係して一つの終焉へと収束していく様は面白かったです ただ、個人的に少々文章が読みにくいと感じた点や、当初期待したいかにもなホラー小説とも少々毛色が違った部分が読んでいて気になりました 読了した感想としては面白かったのですが、普段の読書ペースから言えばなんか読み進まないと言いますか、中盤以降から終盤に掛けて盛り返してくるタイプのスロースターターな作品だったように思います |
No.183 | 6点 | 探偵は女手ひとつ 深町秋生 |
(2025/06/01 03:20登録) 山形県を舞台とし登場人物皆が山形弁で喋るまったりユーモアミステリー系かと思いきや、意外なほどハードボイルド系のストーリーで軽い衝撃を受けた作品 前述のような山形弁の会話や、元刑事の探偵(という名の実質、便利屋)を営むシングルマザーを主人公に据える等、一見した印象とは裏腹に各ストーリーに多かれ少なかれ暴力も付きまとう硬派な一面を覗かせるのが本作の魅力かと思った 話自体も、さくらんぼの盗難から始まり、死亡した万引き犯、拉致された売春婦、不審な訪問者等々、結構社会派というか現実味のあるガチめな事件が主体だった印象 仮にシリーズ物になったとして読み続ける魅力は若干弱いと感じたが、それでもこの1冊に関しては十分満足のいく出来だったと思います |
No.182 | 3点 | トリック・シアター 遠藤武文 |
(2025/05/20 00:04登録) 読み進める程にスケールが壮大になっていく力作ではあると思う そうは思うのだが、個人的には思っていたストーリーと違ったな…というのが正直な所 遠く離れた現場で起きた2件の殺人、その容疑者として挙がる1人の人物 閉鎖病院というある種の密室的状況での、新たな殺人 事故や自殺と死因は様々ながら、年違いの同じ日に死亡している面々 普通にミステリーとして面白そうな謎がいろいろ提示される割に、そこに公安が絡んできたり、それに付随して意味ありげな禁句も出てくる為、折角の謎もなんか薄まった印象しか受けなかったです たしかに、あちこちで言われているように詰め込み過ぎな印象はあるし、ストーリーにせよ、登場人物にせよ、ごちゃごちゃし過ぎている感が否めない… (著者としてはその辺も書きたかったのかも知れませんが)例えば公安関係を全面的にカットしたり、もっとシンプルにまとめてあれば読後の印象も違ったかも知れません |
No.181 | 9点 | 蒼海館の殺人 阿津川辰海 |
(2025/05/18 18:03登録) 阿津川辰海による館四重奏の2作目で、今回は水害が迫る館での凄惨な殺人事件と、不穏な一族の謎に失意の名探偵が挑む 家族の在り方がテーマとしてあるのか、語るべきを語らず、悪意のない嘘とすれ違いによって歪んだ一族と、そんな一族の皆と本気の語り合いをする事で絡まった糸(謎)が少しずつ解けていく様は見事 また、そんな一族の心理を読み切り、手玉に取り、操って尚、それが功を奏したら儲け物で失敗しても本質的には構わない。徹底して非情で、疑心暗鬼を生み出し、その中に隠れて表に出てこない本作の黒幕『蜘蛛』のキャラクター性についても、その正体含め大満足の出来栄えだったと思います 「紅蓮館」「蒼海館」と順調に期待を越えてくる館四重奏ですので、シリーズ最終章を飾るであろう未開の館に期待を膨らませつつ、差し当たって現時点での最新刊「黄土館」を近々読もうと思います |
No.180 | 2点 | ビートたけし殺人事件 そのまんま東 |
(2025/05/14 19:43登録) 県知事も歴任してインテリ系のタレントとして人気の「そのまんま東」が、自身を含め仲間たちを実名(というか芸名)で登場させたミステリー小説 個人的には、上記のインパクトが全てで、それ以上でも以下でもない作品って感じ オチも含めてストーリー展開は、可もなく不可もなし ただ、これは私のツボが合わないとか、世代じゃないって言うのもあるけど、随所で入るおふざけが洒落にならないくらいに詰まらない。詰まらないから、単に話のテンポが強制停止される意味しか成さず、読んでいて正直、イラついた部分も… 世代の方には刺さるのかも知れませんが、私には合わない作品でした |
No.179 | 5点 | 三幕殺人事件 草野唯雄 |
(2025/05/12 22:24登録) ゴルフ場建設事業を巡る攻防の末に父と兄を亡くした娘と、彼女らを取り巻く老人達による反撃の物語 推理小説というより軽めのサスペンス小説といった印象を受けたが、程よい緊張感があって話もスピーディに進む分、まずまず楽しめた お世辞にも力が有るとは言えない面々が力を合わせて巨悪に挑むという筋書を3部構成にして描き出した意欲作だと思う一方、個人的には、肝心の『巨悪』の人物像がそこはかとなく小物臭いのが微妙に感じられた所 ハードボイルド系のようなストーリーを、ユーモアミステリーのような軽さで描いた奇妙なバランス感覚の上に成り立つ小説だと思う |