疾風ロンド スキー場シリーズ |
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作家 | 東野圭吾 |
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出版日 | 2013年11月 |
平均点 | 6.17点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2021/08/31 19:30登録) やっぱ夏は雪だな! 全力で書き飛ばした様な一筆書きハイクオリティには参った! このツイストだらけの豪速リーダビリティは、ターンを交えて高速直滑降(スノボ群と共存しつつ)の隠喩そのものではないか?! 物語の幹は、或る超危険物質の争奪戦、舞台はスキー場、やわらかい人達が軽い会話と行動を繰り返すくせにやたらサスペンスは熱い!! Tetchyさんもご指摘の、スタート間もないトコでいきなり大型ツイストが捻じ込まれる展開はシビれます。 こんだけヤバいブツを相手にお気楽過ぎねえかと思う場面もたくさんありますが、それはもういいです。 斬新で滑稽で絵になる雪上のアクションシーン、忘れるものか! ホワイトなんだかブラックなんだかターコイズなんだか、誰が狡くて誰が哀れか、誰がしっかりしてんだか無用心なんだか、心と頭が空中に迷う凄いエンド!! こんだけエンタメに振っといて、ダークなしこりもそれなりに残す。やっぱビールは苦くないとな。フウー。 (コロナ禍で罹患等被害に遭われた方には、辛い側面のある小説かも知れません) |
No.5 | 6点 | take5 | |
(2019/07/14 04:02登録) 東野圭吾は、こんなに軽いエンターテイメントが書けると捉えた方が良いでしょう。 深みより軽快さ。スノボやスキーの場面は映像が浮かぶようです。 目新しさも無し。娯楽です。私見です。 |
No.4 | 8点 | Tetchy | |
(2015/12/14 22:58登録) 文庫書き下ろしで刊行された本書はまたもやスキー(スノボ?)シーズンの雪山が舞台となる。そして主人公を務めるのは『白銀ジャック』でも登場した根津昇平と瀬利千晶の2人だ。 本書は細菌テロという重いテーマを持ちながらも、雰囲気は軽妙でコミカルな装いで物語は進む。 まず新種の炭疽菌『K-55』の名自体が作者の名前をもじっていることからも深刻さを避けようとしているのが明白だろう。 しかし構成は単純ながらもさすがはベテラン作家東野、ストーリーに様々な要素を織り込んでいる。 まず脅迫者が事故死したことで『K-55』の隠し場所が解らなくなるというツイストもなかなかだ。さらに必死になって不祥事を揉み消そうと躍起になる東郷&栗林のコンビとは別に『K-55』を先に手に入れて3億円どころかそれ以上の身代金を請求しようと企む研究員、折口真奈美という第3の影。 そして捜索に同行させた栗林の息子秀人が現地で知り合う地元の中学生山崎育美の同級生高野一家に降りかかったインフルエンザで亡くなった妹の死に絡む母親の昏い情念と、コミカルながらも不穏な要素をきちんと用意している。いやあ、いい仕事してますわ、東野氏は。 そしてそれらがきちんとクライマックスに向けて二転三転するストーリー展開に寄与していくのだから凄い。単に思わせぶりなエピソードに終わらず、それぞれがそれぞれの事情で正体も知らずに『K-55』の争奪に関わり、利用しようとする。 正体を知っている者たちの思惑と知らない者たちの思惑が交錯して、クライマックスではスキーヤーとスノーボーダーの滑走しながらの一騎討ちといった活劇も織り込んで最後の最後まで息をつかせないノンストップエンタテインメント小説に仕上がっている。 恐らくおっさんスノーボーダー東野圭吾は経営難で苦しんでいる日本中のスキー場を救わんととにもかくにも爽快で軽快な物語を愉しんでもらいたいという思いで本書を著し、そして多くの人に手に取ってもらうために文庫書き下ろしという形での発刊を選んだに違いない。 従って本書は徹底的に娯楽に徹したエンタテインメント小説である。難しいことは考える必要は全くない。従来の東野作品の読者ならばこの単純さが、ベストセラー作家の走り書きとか、ストーリーに厚みがなくて物足りないなどとのたまうかもしれないが、単純面白主義の何が悪いと開き直って読むのが吉だ。逆にこれだけウィンタースポーツとしてのスキー、スノーボードの疾走感やスキー場の臨場感も行間から滲み出てくるような躍動感に満ちていることをきちんと気付いてもらいたい。読みやすいが故にこの辺の技術の高さが軽んじられているのが東野圭吾氏の長所であり短所でもある。 普段読書をしない人たちに「何か面白い本、ない?」と訊かれたら、今はこの本を勧めるだろう。そして『白銀ジャック』に続いてドラマ化されてもおかしくないくらい映像化に向いている。 こうやって東野圭吾の読者が増えていくわけだが、それも仕方がないと納得せざるを得ないリーダビリティに満ちた作品だった。 |
No.3 | 5点 | ∠渉 | |
(2014/03/13 20:23登録) 好きですね、東野さん、冬。 『白銀ジャック』の続編なのかなぁと思いながら読んでましたが、根津さんが出てきましたね。比較的ライトなサスペンスで、キャラも展開も非常にコミカルで、読んでる間はけっこう楽しい。さらっとそれぞれのキャラクターの特徴がわかるように書かれていて、安心して作品の中に入り込めます。まぁ読み終わってみればなかなか滑稽な話でした。もちろん良い意味で。読む前、そして読みはじめのときはこんな感じで終わるとは、思わなかったなぁ。そういう意味ではなかなかサスペンスしてたな笑。 あと、ひとつ思ったのは、ここ1~2年の小説ってあまり読んでなかったから、東日本大震災後の物語という位置づけの作品が出てきてるんだなぁと、まぁ当たり前のことでしょうが、だからこそコメディタッチにした意図もあったのかなとも思い、エンタテイメントっていいな、と改めて思いました。 |
No.2 | 5点 | 白い風 | |
(2013/12/19 23:28登録) 「白銀ジャック」にも登場の根津昇平が出てきて姉妹編のような作品でしたね。 どちらも東野さんには珍しいアクティブなシーンがあって、映画化されたら迫力があって面白そう! ただ、ミステリー的には平凡だし、ストーリーも読めそうだったけどね(笑) 文庫本らしく簡単に読めました。 |
No.1 | 6点 | makomako | |
(2013/12/15 14:27登録) 東野圭吾氏は話題作を次々にかけるということだけでも本当にすごい才能だと思いますが、やはり多作すぎると内容は薄いものが出てきてしまうのは避けられないのでしょうか。 本作品は細菌学兵器開発についてのお話なのですが、以前の氏の作品であったらもっと凝った内容となったのではと思われます。 本格推理度はきわめて薄く、冒険物というほどでもありません。話の進行は二転三転しますが、どこか行き当たりばったりでご都合主義なのです。 それでもさすがに物語を語る手腕があるのでなんとか最後まで読ませてしまいますが、帯にあるようなぶっとびとは程遠いのは残念です。 まあ暇つぶし程度なら問題ない作品ですが。 |