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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.19点 書評数:851件

プロフィール| 書評

No.831 7点 神々の埋葬
山田正紀
(2023/10/27 19:46登録)
山田正紀氏の作品は若かりし頃夢中になって読みました。
年齢もほぼ同じ、生まれも同じ名古屋ということでとりわけ思い入れが深く、発表リアルタイムで読んでいました。
たまたま本棚を整理していたら紙が焼けて一部変色してしまった文庫本が出てきたので、懐かしく再読しました。40年以上ぶりということになります。
やっぱりこの頃の山田氏は良いなあ。若書きなのでそれなりに粗さはあるが、お話にけれんみがなく、年齢を重ねた今の私が読んでもやっぱりわうわくしました。


No.830 6点 時空旅行者の砂時計
方丈貴恵
(2023/10/27 19:33登録)
このサイトではなかなか評判が高いようですが、私はすごいというほどには思いませんでした。
出だしはとても良い。SFと本格ミステリーが上手にカクテルされたようで、ワクワクします。
本格物は随分前よりネタ下れ気味になっているので、こういった方向での試みは悪くはない。
ところが一定の縛りはあるとはいえ、お話が時間を超越した移動方法が大きく影響してくると、なんだかばかばかしい感じが否めませんでした。
皆さんの評価が高いので、私の感覚が古いのかも知れません。
それでも作者の次の作品は読んでみたい、そう思わせるところはたくさんありました。
魅力的な作品であるとは思っています。


No.829 6点 碆霊の如き祀るもの
三津田信三
(2023/10/08 15:48登録)
ずい分久しぶりにこのシリーズを読みました。
まず難しい漢字だらけで、弱くなった頭では覚えるのが大変。極めて読みにくい。
それでも何とか読み進めると、このシリーズ独特の雰囲気が味わえるようになり、長いお話も途中まではすらすら読めました。なかなか良いではないか。
ところが怪奇な連続殺人事件がおこり始めると、はたしてこんな不可解なことがすっきり説明されるのであろうかと心配になってくる。さらに終盤に差し掛かって、大量の謎が提示される。こんなの全部解決なんて無理だよと思ていると、探偵が試行錯誤を繰り返しながらひとつづつ謎を解いていく。こりゃ無理な解決だと思って読んでいると解決案はあっさりと撤収。こんな感じが続いて最終的には解決案が提示されることとなります。
これですっきりしたかというとなんだかもやもやが残ります。
解決案では登場人物のキャラクターからちょっとこんなの無理というものから、実際のトリックがまず困難なものまで混じっていると思われるからです。
途中まではかなりよかったが、残念。


No.828 6点 ナイフをひねれば
アンソニー・ホロヴィッツ
(2023/09/30 06:54登録)
ホロヴィッツ氏の作品はカササギ殺人事件以来いつも注目していますが、このホーソーンが出てくるシリーズはもう一つな感じです。
本作も確かに伏線が張ってあり、意外な犯人、どんでん返しと本格推理の王道を外しているわけではありませんが、探偵も登場人物であるホロヴィッツ氏も私には感情移入しにくいところがあり、あまり好きにはなれません。イギリスの警察もこんなに思い込み調査ばかりして人を逮捕したり、探偵が真犯人を指摘したら簡単にほかの人を逮捕できてしまうものなんですかねえ。
ホーソーンも冷たく非情な神経の持ち主ではあるが、行動としては窮地に陥ったホロヴィッツを助けに一肌脱ぐのですから、もっと好感度が上がってもよいのですが、そういった書き方はされていないようです。ホロヴィッツも助けてもらったのにホーソーンが秘密にしておきたいところをこそこそ探し回ったりなどしてちょっといやなやつですね。
こういったシリーズものは登場人物への好感(または興味?)がないと読む楽しみが半減します。少しずつホーソーンの実態が判明してきたので、次回ぐらいにはちょっと好きになるのかも。


No.827 5点 復讐は合法的に
三日市零
(2023/09/19 20:04登録)
4つの話の連作です。
このミスの隠し玉とのこと。
復讐を手伝う稼業のお話なんてちょっと陰湿で、性格が悪そうな感じです。
実際最初の話などやっぱりなあというところがあり、復讐が成功してもあまり良い気分になれませんでした。
ところが読んでいくとこんな設定にも慣れてくるのか、自分の性格が悪くなってくるのか、違和感は感じなくなりそれなりの面白く読めました。
いかにも次作ができそうな感じなのですが、もし出ても読むかどうかは今のところ不明です。


No.826 5点 バベル九朔
万城目学
(2023/09/15 20:17登録)
この作品は多分ファンタジーの部類の入るものと思います。
私はファンタジーが嫌いではありませんが、こういった作品は現実とかけ離れているので、何らかの共鳴なり美しさなり感動なりがないと、単なる独りよがりのお話となってしまいそうです。
この作品は独りよがりとまではいきませんが、美しくもなく、感動的でもなく、なんともないお話となっているように感じました。
読みにくいことはないのですが、大して面白くもなかった。


No.825 6点 若きウェルテルの怪死
梶龍雄
(2023/09/09 07:46登録)
梶氏は登場人物の描写がとても上手な方とお見受けしておりますが、この作品では肝心の中心人物たる若きウェルテルなる堀分くんのキャラクターが今一つはっきりしなかった。
登場人物が少なくトリックの多くは私でもわかるものでした。勿論すべてがわかったわけではなく、犯人は誰だが出てくるときには違う人を犯人と思っていた次第(これでも十分に理屈は通じると思っている二ですが)。
いろいろ割り引いても素敵本格推理小説です。
梶氏にはちょっとはまってしまった。
まだ未読作品がいろいろありそうなので楽しみです。


No.824 6点 仮面幻双曲
大山誠一郎
(2023/09/02 18:08登録)
今のところ大山氏唯一の長編とのこと。
短編でのトリック一発勝負が作者は得意のようですが、本作品は悪くないです。長編も書いてほしいなあ。
トリックは大胆で見破れそうで結局見事にやられました(まあ大体やられるんですけどね)。
私が読んだのは文庫本で、初版本から相当の改装があったとのことです。
作者が本作品へ注ぎ込む力が感じられますね。全体としてよかったですよ。
残念なのは医療のところで、これほどの形成手術は全身麻酔が必要になってくると思われますが、助手もなく医師一人でやってしまうのは同職を生業にしているものとしては強い違和感があります。要するにほとんど無理。
さらにこの医院には入院患者がいるようなのに、医師は昼ご飯も近くの人に作ってもらっているとの事。入院患者はどうなるのでしょうかねえ。せっかく改装したのならこの辺りも是非直していただきたいものです。次回の改装でご考慮して下さるとありがたいね。


No.823 6点 レモンと殺人鬼
くわがきあゆ
(2023/08/27 12:27登録)
めまぐるしく変わっていく展開がなかなかすごい。
登場人物もどんどんキャラクターが変化してしまう。
これだけやると普通はあきれるかちょっといやになるのだが、何とか最後まで持たせてくれている。

ちょっとネタバレ

最終的にはとんでもない登場人物たちがとんでもない行動をしていることになるのです。
こういった展開だと性悪でご都合主義のお話となりがちなのですが、何とかうまくまとめてあるので、読後感がそれほど悪くはありませんでした。


No.822 7点 葉山宝石館の惨劇
梶龍雄
(2023/08/26 07:05登録)
梶氏の作品が復刻されて、本格推理モノとして素晴らしいのに全く見逃していたことを痛感しています。続けて読んでいこう。
この作品はトリックとしてはかなりがっかりものです。犯人も何となくわかりそうですが、いろいろなひねりが入れてあり、それなりに楽しめました。
気になったのは警察の推理にちょっと難点があります。
リボルバー拳銃の薬きょうはオートマチックと違って発射されるごとに排出されないのです。薬きょうに関した推理は警察官なら絶対しないでしょう。さらにバンドラインスペシャルは1800年代のもので、サイレンサーは20世紀初めに造られたものなので、この拳銃のサイレンサーはないこととなります。まあオリジナルに作ったようなことが書いておるのでぎりぎりセーフとしましょう。
作者の作風が好きなので多少甘めの評価かもしれません。


No.821 5点 アリバイの唄
笹沢左保
(2023/08/26 06:54登録)
とにかく多作の作者の作品らしく、文章がいかにも説明風で必要なことは書きましたよといった乾燥した感覚でした。
分の推敲などはほとんど行わなくても次々とかけてしまうのでしょうね、きっと。
これがちょっといやになって初めのほうは全くよろしくなかったが、トリックの大がかりなこと。この辺りとなると俄然面白い。
バカミスとの評もあるが、有栖川氏が推す意味も分かる気がしました。


No.820 7点 谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題
東川篤哉
(2023/08/19 07:22登録)
東川氏の作風は好きなのです。
このところちょっとマンネリ化しているようにも思っていましたが、本作品は新しいヒロインがなかなか素敵です。名前もいいなあ(岩篠つみれ、いわしのつみれ)。イワシ専門料理屋イワシの吾郎の娘さん。お父さんは岩篠吾郎、お兄さんは岩篠なめ郎。探偵は怪運堂なるラッキーグッズ販売い店を営むかなり怪しくて軽いところがある変人。
短編集というべき4つのお話です。それぞれそれなりの凝ったところがありますが、ユーモアを取り除くと古典的作品のトリックをひねっとようなものがほとんどですので、まじめに読んでは面白くないかもしれません。
ユーモアにくすりと笑いながら読んだことがあるような古典トリックを思い浮かべて読むべきなんでしょう。


No.819 7点 透明な季節
梶龍雄
(2023/08/19 07:08登録)
この作品は江戸川乱歩賞受賞して文庫として出た第1摺を買って読みました。私の本は昭和55年9月発行となっているので40年以上前のこととなります。当時江戸川乱歩賞の受賞作品は文庫化されると必ず読んでいたのです。
当然内容はほとんど忘れてしまいましたので今回再読は全く新刊書を読むのとあまり変わらない感覚でした。
初読の当時は戦争の理不尽さを書いた作品なんだといった程度の感想でした。
今回再読してみると作者が目指していた人間を描いた推理小説といったお話であり、私の好きな内容でした。
確かにトリックはちょっと奇想天外というより無茶ぶり風ですが、若いわたしより今の私の好みに合う小説でした。


No.818 6点 偽りの春 神倉駅前交番狩野雷太の推理
降田天
(2023/08/12 07:38登録)
探偵(この場合は警察官だが)が男で相棒も男なのですが、作者が女性二人の作品出ることは今まで読んだ作者の作品中本作品が一番感じるところでした。
探偵狩野の視線が一見理論的であるが、極めて感情的要素が入った理論で、そういった方面から迫って解決を図るところはいかにも女性の作者らしいと感じたのです(だから悪いといっているのではありません。むしろ視点が私と違っていて新鮮だという意味です)。
こういった作風は嫌いではないのですが、どうしても推理の理論がご都合主義的になったりしがちで、すっきり解決といった感じがやや薄れてしまいました。
いかにも次作ができそうなので次作に期待しましょう。


No.817 7点 六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成
(2023/08/11 07:31登録)
なかなか面白い。
有能な主人公たちの若く素敵な感じがまず提示され、その後実は--といった暴きの話となる。これだとちょっと嫌味な小説となりそうだが、その後みんなそんなに悪いやつではないことがわかってくる。
このあたりはなかなかのもので小説を読む手が離せない。
最終的にもいい感じで終わるので読後感もよい。
作者自身が非常に理屈っぽい性格と述べているように、話は「精緻を極める」というとよい方向にとるか、「くどくどとめんどくさい」と感じるかは読み手の感性によるものでしょう。
きっちりした本格物が好きな方はきっと素晴らしいと思われることでしょう。
私はちょっとめんどくさかったかな。
でもよかったですよ。


No.816 7点 清里高原殺人別荘
梶龍雄
(2023/08/06 08:18登録)
梶氏の作品はこの発掘コレクション読むまでは江戸川乱歩賞受賞直後に読んだ「透明な季節」のみでした。
「リア王」を読んでびっくり。即発掘コレクションを購入しました。
本作品は騙されたことに関しては最高に騙されました。
こんな切り口があるんだ。
作者は本格推理と人間を描きたいと述べられていたそうですが、この作品をさらっと読めば人間が描かれていて素晴らしいのです。
でももう少し冷静になると、とんでもない人なのであり、とてもハッピーエンドとはならないに決まっていることはすぐわかります。
でもハッピーエンド風の終わり方。
作者の求めるぎりぎりの選択だったのでしょう。


No.815 6点 龍神池の小さな死体
梶龍雄
(2023/08/05 07:13登録)
途中まではとても素晴らしい内容で、完全に作者に翻弄され、でもどうなるかと読み進むといった本格物を読む楽しさを味わえました。
物語の最後に真相が明らかにされるのですが、作者の見事なミスディレクションに引っかかり、全然犯人が見えていませんでした。
こういったところはとても素晴らしいのですが、解説の三津田信三氏が書かれていたように最後のどんでん返し的終わりは好みがわかれると思います。たぶん三津田氏も好みでなかったのでしょうが、私もこれはちょっと残念です。せっかくいい感じだったのがかなりそがれてしまいました。

以下ちょっとネタバレです。
それともう一つこれも解説で書かれていたことですが、このお話は決定的になり立たないところがあると感じました。重要な登場人物の一人がこのトリックに必ず気付いているはずなのです。それが全く述べられていません。ここが何とか解決できるような話となっていれば。
素晴らしい本格小説なのに残念です。
でも立派な本格物であることは間違いありません。


No.814 7点 世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
(2023/07/20 18:41登録)
途中まではかなり面白い。表題の小説とはいったいどんなものだろうと興味がかきたたれます。
主人公もお話の中で翻弄され、この先どんな展開となるか全く読めない。
勿論だんだん話の目鼻がついてきて、結構などんでん返しとなります。
なるほどね。こんなお話であったのかとある意味納得できます。
皆さんの評価も高いのはうなずけますが、私の評価は多少低めです。
これっていくらでも結論が変えられそう。
私が作家だったら(才能がないので全く無理ですが)なんとおりかの結論を出しておいて、さらに読者を混乱させて---、なんて考えてしまいました。


No.813 8点 リア王密室に死す
梶龍雄
(2023/07/14 20:37登録)
こんな小説好きです。
梶氏は江戸川乱歩賞を取った透明な季節をリアルタイムで読んでから、全く忘れておりました。今回何十年ぶりかで氏の作品を読み、旧制高校時代の学生たちの生活が生き生きと描かれているのに感動しました。
私は世代が違いますが、この流れをくむ学校で青春を過ごしたため余計に心に響いたのかもしれません。
密室の謎もなかなかのものでした。
本格推理の中に人間を生き生きと描きたいという作者の姿勢は素晴らしい。ほかの作品も読んでいこう。


No.812 7点 サーカスから来た執達吏
夕木春央
(2023/07/10 19:50登録)
方舟を読んで作者のことを知り、本作品を購入。
なかなかしっかりした本格推理小説です。
探偵役のユリ子もキャラが立っています。
ある意味とんでもないお話なのですが、本格推理小説はもともととんでもないお話なのでその点ではまあ良いでしょう。
殺人事件も宝物の消失もあり、いずれもなかなか一筋縄ではいかないのですが、最終的には鮮やかに解決となります。
その方法についてはちょっと無理があるのですが、この程度ならぎりぎりよしとしたいですね。
方舟と比べるとちょっと落ちる。期待が強かった分多少評価が落ちてしまいました。
こちらを先に読んだらもうちょっと評価が上がったかもしれない。

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